▼朝日新聞が、植民地だった朝鮮から「従軍慰安婦狩り」をしたとの吉田清治氏の証言は虚偽だったとして、その証言内容を報じた1980年代から90年代の一連の記事を取り消すと発表した。
【朝日】 1982/9/2朝刊(大阪版)22面「朝鮮の女性 私も連行 元動員指揮者が証言 暴行加え無理やり 37年ぶり危機感で沈黙破る」、1983/11/10朝刊3面「ひと 吉田清治さん」、1990/6/19朝刊(大阪版)26面「朝鮮人強制連行の名簿、知事の命令で焼却 元動員部長が証言」、1991/5/22朝刊(大阪版)5面「従軍慰安婦 加害者側の証言(女たちの太平洋戦争)」、1991/10/10朝刊(大阪版)5面「従軍慰安婦 加害者側から再び証言(女たちの太平洋戦争)」、1992/1/23夕刊1面「窓 論説委員室から 従軍慰安婦」、1992/3/3夕刊1面「窓 論説委員室から 歴史のために」、1992/5/24朝刊30面「慰安婦問題 今こそ自ら謝りたい 連行の証言者、7月訪韓」、1992/8/13朝刊26面「元慰安婦に謝罪 ソウルで吉田さん」など
《注意報1》2014/8/5 18:30
《訂正》2014/8/5 22:30
《注意報1》2014/8/5 18:30
朝日新聞は8月5日付朝刊で、日本の植民地だった朝鮮で慰安婦にするため女性を暴力を使って無理やり連れ出したとの吉田清治氏の証言は虚偽だったとして、その証言内容を報じた1982年9月2日付記事など一連の記事を取り消すとした検証記事を掲載した。検証記事は電子版「朝日新聞デジタル」にも無料で全文公開された。
朝日新聞は82年9月2日付大阪本社版朝刊で、戦時中、「山口県労務法国会下関支部」の動員部長だったという吉田清治氏が9月1日夜、大阪市内で催された市民集会で「悲惨な『従軍慰安婦狩り』の実態を証言した」と詳報。1943(昭和18)年に済州島で200人の若い朝鮮人助成を「狩り出した」時の状況が再現された、などと伝えた。
朝日新聞の検証記事によると、同紙は1980年代から1990年代にかけて、吉田氏について16回記事を掲載。日本報道検証機構の調べでは、1982年9月2日付記事は東京本社版には掲載されていなかったが、1983年11月に「ひと」欄で吉田氏を取り上げたほか、1991年には編集委員によるインタビュー記事を2回掲載。1992年には、秦郁彦拓殖大学教授(当時)が済州島での“慰安婦狩り”の証言は極めて疑わしいとする調査結果を発表し、産経新聞が同年4月30日付朝刊で大きく報道したが、その後も朝日新聞は吉田氏が「謝罪の旅」と称して訪韓したことなどを取り上げていた(同じころ、読売新聞や毎日新聞も、吉田氏を取り上げた記事を掲載していたが、読売新聞は2007年3月27日付記事で、吉田証言は信憑性が否定されたと指摘した)。
しかし、朝日新聞は1997年3月31日付朝刊に「従軍慰安婦 消せない事実」という特集を掲載した際、吉田証言を疑問視する声があり、「氏の著述を裏付ける証言は出ておらず、真偽は確認できない」と指摘。吉田氏が取材に対し「関係者の証言などデータの提出を拒んでいる」と伝えた。同紙はそれ以後、吉田氏の証言を取り上げていなかったとしている。そして、同紙は今年4月~5月に済州島の住民を再取材するなどして検証した結果、「吉田氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽」と判断。8月5日付朝刊で、吉田証言を報じた一連の記事の取り消しを発表した。この誤報について、編集担当の杉浦信之氏が1面の署名記事で「問題の全体像がわからない段階で起きた誤りですが、裏付け取材が不十分だった点は反省します」と表明した。
一方で、同紙は検証記事で、「強制連行」は使う人によって定義に幅があり、1993年以降はこの言葉をなるべく使わないようにしていたと説明。吉田証言については虚偽と断定したものの、元慰安婦の証言などを踏まえ「問題の本質は、軍の関与がなければ成立しなかった慰安所で女性が自由を奪われ、尊厳が傷つけられたことにある」「これまで慰安婦問題を報じてきた朝日新聞の問題意識は、今も変わっていない」とも主張。8月6日付朝刊にも再び慰安婦問題特集を掲載すると予告している。
■<特集>慰安婦問題を考える (朝日新聞デジタル 2014/8/5)
■慰安婦問題の本質 直視を (朝日新聞デジタル 2014/8/5)
■強制連行 自由を奪われた強制性あった (朝日新聞デジタル 2014/8/5)
■「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断 (朝日新聞デジタル 2014/8/5)
■読者のみなさまへ
吉田氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした。済州島を再取材しましたが、証言を裏付ける話は得られませんでした。研究者への取材でも証言の核心部分についての矛盾がいくつも明らかになりました。
(*) 本文中、編集担当の「杉浦信行」氏は「杉浦信之」氏の誤りでしたので、お詫びして訂正いたします。(2014/8/5 22:30)