
著者:神尾丈治
出版社:一迅社文庫
彼女たちのどうでもいい秘密
主人公は、平凡な高校生・音無武士。学校からの帰り道に、誰かにつけられていることに気がつき、公園へ。振り向き様にスマホのライトで照らし、犯人を突き止めようとしたところ、そこにはクラスメイトの完璧美少女・新井凛だった。しかも、凛は恐怖のあまりお漏らしをしてしまう…本来、ストーキングをしていた凛のほうが悪いはずだけど、こういったことが起こった際不利になるのは、男のほうで、武士もなぜか彼女に脅されることに…秘密をばらさないことを担保するため、なぜか生徒会長を務める凛の片腕としてこき使われることになってしまいます。なんだかんだで、美少女に頼られることにまんざらでもない武士。しかし、今まで接点のなかった二人がよく一緒にいることを周りが疑いだします。それが原因で、凛の秘密がバレてしまうかもしれない。そこで凛が提案したのは「少しの事実をまぜて嘘をつく」ということ。つまり、凛がトイレに入っているところに、武士が誤って扉を開けてしまい、彼女の放尿シーンを目撃したと…これって、武士の人生が終わりそうですが、凛にもダメージが大きいような気がします。
さらに、オシャレでかつ年上彼氏がいていろんなことをしているという噂の長篠あかねにも目をつけられることになり…実際には、彼氏などいないにも関わらず、その場のノリで彼氏がいることにされ、さらにそれがエスカレートしていってしまったため、秘密がバレたら人生終わりということで、武士を「ニセ彼氏」に仕立て上げ「年上」ということだけが嘘だったということにしたいとのこと。可愛い女の子からの頼みということで、武士も協力することになるのですが、なぜか凛がちょっかいを出してきます。
最初はフェイクだったはずの美少女二人との関わり。それが、いつの間にかどんどん現実に変わっていくというラブコメ。二人の女の子の思わせぶりな言動に、モヤモヤさせられる武士が面白いですね。
さらにこの作品にスパイスを与えているのは、武士の妹。元々かわいらしい声だったのが、風邪をこじらせた時に低めの声になり、それを武士に笑われたという理由で、武士の前でほとんど口をきかない彼女。でも兄妹仲が悪いわけではなく、二人の間ではモールス信号やらハンドサインなどで会話が成り立ち、ある意味普通の兄妹より仲がいいようです。この妹が、妙にハイスペックで面白い。
この作品は続編があるのかなあ? この作者さん、かなり遅筆ですからねえ。
★★★☆
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