持ち家が得か、賃貸が得か―― この難題に、ひとつの答えを出そう

2015年06月18日(木) 山崎 元
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ちなみに、不動産投資の利回りよりもローン金利の方が低いなら儲かっていると考えるのは、リスク付きの利回りである不動産投資のリターンと、リスク無しで返さなければならないローンの利回りを、リスクが異なるにも関わらず直接比較する誤りを犯している。(筆者は、この金融論的な誤りを某マネー本にちなんで「欲張り父さんの錯誤」と呼ぶことにしている)。

また、低金利で借りていて、将来金利が上昇すると、負債側では儲かっているような気になるかも知れないが、不動産価格は金利上昇によって下落するので、トータルでは儲かっていないことが起こり得る。

家は余るし、人手は不足する

今後インフレが起こった場合、家賃が上昇するし、不動産価格も上昇するかも知れないので、不動産投資が良いインフレヘッジになるという意見についてはどうか。

もちろん、固定利回りの長期債よりも、不動産や株式の方がインフレに強いことはいうまでもない。だが、賃貸派からいうなら、インフレになる場合、賃金も上昇するはずだから家賃が払えないということはあるまい。長期的には、人手は不足しており、家は余るのだから、賃金、家賃が共に上がるとしても、賃金の上昇率がより大きいと考えるべきだろう。そして、もちろん、デフレよりもマイルドなインフレの方が、職を得ることが容易だ。 

不動産価格の決定原理を考えると、家賃上昇率と金利の上昇率のバランスが問題になる。家賃に上昇期待が生じ、しかし金融緩和で金利が抑えられているインフレの初期はこのバランスが両方とも不動産価格にプラスに働くので不動産価格が上昇しやすい。これは、アベノミクス導入以降、最近までの不動産価格上昇の背景でもある。

一方、インフレ率が上昇してこれを抑える段階に入ると、金利の上昇が家賃の上昇率を上回る事態が起こる公算が大きい。この場合、不動産の理論価格は下落することになる。インフレの場合に、不動産が常に有利な運用資産ではない。

ちなみに、政府の中長期経済財政見通しによると、住宅ローンに影響が大きい長期金利は、経済再生が上手く行くケースでは2017年に2.3%、2018年には3.0%、潜在成長率付近で推移するベースラインケースでも2018年には2.0%に達すると予想されている。 

現在の金融緩和、円安、さらに今後に控える東京五輪などは、いずれも不動産価格を上昇させる要因となるが、機敏に売り抜けられる不動産のプロ以外の普通の人は、その後の変化のことも考えておくべきだろう。

まして、自己資産の何倍もの不動産物件をローン付きで買わない方がリスク面で身軽だろうし、東京圏でも手軽な価格の立地や、東京以外の地域の不動産は沖氏の著書でも値下がりが指摘されているのだから、全国津々浦々の「普通の人」は、「不動産は持つのが普通だ」と思わない方がいいのではないだろうか。
 


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