うつ病:楽しい記憶で改善 理研、マウスで確認

毎日新聞 2015年06月18日 10時54分(最終更新 06月18日 14時57分)

うつ状態を改善する実験
うつ状態を改善する実験

 楽しい体験の記憶を呼び覚ますことでマウスのうつ状態が改善されたと、1987年にノーベル医学生理学賞を受賞した利根川進・理化学研究所脳科学総合研究センター長らの研究チームが18日付の英科学誌ネイチャーに発表した。利根川さんは「すぐに人への応用ができるわけではないが、うつ病の新しい治療法開発に役立つ可能性がある」と話す。

 研究チームはまず、雄のマウスを雌と一緒に過ごさせて楽しい体験をさせ、その際に働く脳の神経細胞群を特定した。その後、雄の体をラップで包んで40分間ほど動けなくするストレスを10日間与えると、本来なら好むはずの砂糖水に興味を示さなくなるなど、うつ状態になった。

 これまでの研究で、特定の神経細胞群に青い光を当てると、記憶がよみがえることが分かっている。うつ状態のマウスの頭に光ファイバーを差し入れ、楽しい体験をした時に働いた神経細胞群に光を照射したところ、光が当たっている間は元通りの行動に戻った。

 研究チームは「うつ状態の間は楽しい記憶を楽しいものとして思い起こせなくなっている可能性がある。人工的な刺激で楽しい記憶が呼び覚まされ、症状の改善につながったことを示唆している」と分析している。【藤野基文】

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