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クラウドコンピューティングにおけるサーバの利用率と環境

数週間前に同僚のジェームズ・ハミルトンが書いたブログ記事グリーンピース、再生可能エネルギーとデータセンタを読んだ後、データセンタの電力消費について書かれたグリーンピースのレポートを読みました。このレポートは、省エネルギーについて特集しているのではありませんが重要な評価基準として並外れた環境レポートだと思いました。

データセンタによる気候影響の分析はリソースの利用率とエネルギー効率に加え、電力源の比率を考慮に入れるべきです。CO2 排出量は次の3つの要素で決まります。「動作しているサーバ台数」、「各サーバの動作に必要な電力」、「各サーバが使用する電力源の炭素強度 (電力消費量当たりの CO2 排出量)」です。電力源の比率と同様に、企業のデータセンタで CO2 排出量を削減するためにはより少ないサーバ台数をよりよい電力効率で使用することも重要です。複数の数値が影響している事は興味深く、3 つの要素がコンピュータ処理全体による CO2 排出量にどのように影響しているか確認しようと思いました。

計算内容も紹介しますが、先に結果をお伝えすると以下の通りです。:

平均すると、AWS のお客様が使用するサーバ台数は 77% 少なく、消費電力は 84% 少なく、28% 多くクリーンな電力源比率を使っています。そのため、CO2排出力は独自のデータセンタを運用するより、全体で 88% 削減されています。

これらの数字の詳細を見て行きたいと思います。クラウドコンピューティングにより得られる効率や省エネルギーについて理解を深めて頂ければと思います。


クラウドのユーザが利用するサーバ台数は 77% 少ない

あるワークロードに対応するために必要なサーバの使用率とサーバ台数についてまず見て行きましょう。オンプレミスのデータセンタは一般的にかなりサーバの使用率が低いです。なぜなら企業はサーバのキャパシティを使い果たさないようにしなければならないからです。十分なキャパシティがないと、アプリケーションが停止したり、販売が完了しなかったり、お客がサービスを受けれなかったり、重要なビジネス情報を追えられなくなったりします。負荷がピークな期間にも高品質なサービスを維持するには、サーバや関連する IT リソースが必須です。

ピークにあわせたキャパシティはめったにしか使われません。それため、サーバ使用率の平均は多くの場合 20% を下回ります。対照的に、大規模なクラウドインフラの事業者はより多くの顧客やアプリケーションを抱えているので、全体で高い使用率で動作させつつピークに対応できます。加えて、EC2 スポットインスタンスなど、クラウドのスケールやダイナミックな性質から生み出されたイノベーションは高い使用率を実現し、さらに効率改善につながっていきます。

NRDC による 2014年 データセンタ効率アセスメントは、クラウドのサーバ使用率は 65% で、オンプレミスにおける使用率は 12% から 18% だと述べています。これは私が数年来見てきた評価と一致します。ですので、典型的な大規模クラウドプロバイダのサーバ使用率は約 65% に対しオンプレミスでは 15% だとすると、企業がクラウドに移行するとその企業のアプリケーションに対応するには 23% のサーバ台数だけがあればよいという事になります。つまり、一般的にオンプレミスで使用使用していたサーバ台数の 25% 以下しかプロビジョニングしない事を意味しています。これ単独でも具体的な効果ですが、同様に大幅なエネルギー効率の違いもあるのです!

クラウドのユーザが消費する電力は 84% 少ない

インフラストラクチャの効率の一般的な指標は電力使用効率 (PUE) です。これは、データセンタ全体に送られる合計電力 (総消費電力)をデータセンタ内のサーバやストレージ、ネットワークに届けられる電力(限界出力)で割ったものです。総消費電力と限界出力の違いは、データセンタ内の配電でのロスや空調、それほどではないが照明、その他の電力消費です。PUE は値が低いほうが良いです。

Uptime Institute の年間レポートには平均的なデータセンタの PUE は 1.7 であるとの調査結果が載っています(データセンタの PUE はここ 4 年間あまり変わっていません)。大規模なクラウド事業者はスケールさせて、投資を実際に素早く回収できるため、徹底的に効率に投資できます。幾つかの超大規模事業者は PUE が 1.07 ぐらい低いと報告しています。Google は PUE が 1.12 という素晴らしい報告をしています。幾つかの比較的小規模なクラウド事業者は効率の改善にあまり投資していないかもしれませんので、AWS を含む幾つかの事業者はより効率的に運営しているかもしれませんが、より保守的な 1.2 をクラウド事業者平均の PUE として計算をします。

このデータによると、ご検討頂いているお客様がオンプレミスからクラウドに移行されると、平均的に PUE が 1.7 から 1.2 にさがることになります。これは、電源がオンされているサーバなどはオンプレミスのデータセンターに比べクラウドでは 29% 低い電力しか消費しない事を意味します。

それでは、これまで見てきた影響をかけ合わせます。77% 少ないサーバ台数が必要で (言い換えると、クラウドでは同じワークロードに 23% のサーバ台数しか必要ない)、サーバは 71% より効率的な環境で動作するので、最終的に 16% (23% x 71%) の電力のみがオンプレミスと比較して必要という結果になります。これは必要な電力合計が 84% 削減されるという事です。

この事を大きな視点で考えて見たいと思います。National Resources Defense Council (NRDC) は 2013 年における米国の全データセンタで消費された電力は 910 億 キロワット時 (kWh) と推測しています。これらのデータセンタ全てのワークロードがクラウドに移行したとしたら、760 億 kWh を年間で削減できるということになります。ニューヨーク州とケンタッキー州の住宅における年間の消費電力とおおよそ同等です。

クラウドのユーザの CO2 排出力は 88% 少ない

エネルギー消費の減少は CO2 排出力削減になるため、エネルギー効率の大きな改善は気候への影響を大幅に減らします。また、平均的な企業のデータセンタより典型的な大規模クラウド事業者の方がよりクリーンな電源比率となっている事を考慮すると、気候影響への改善はより大きいと考えられるのではないかと思います。

電原比率の気候影響を評価するのによく知られている方法は炭素強度 (電力消費 1kWh あたりに何グラムの CO2 を排出したか) です。International Energy Agency のレポート Key World Energy Statistics 2014 にあるデータによると、世界の電源は平均して 545 g/kWhです。

クラウドの場合を考えると、2015年 6月 における AWS の電源の炭素強度は平均で 393 g/kWh です。これを元に計算をすると、大規模クラウド事業者が使用している電源比率は世界平均と比較して CO2 排出力が 28% 少ないです。

必要エネルギー量の比率 (16%) と電源の炭素強度の比率 (72%) を組み合わせると、CO2 排出力は 12% だけという計算となります。これはお客様にとって典型的なオンプレミスのデータセンタと比較して AWS を使うことで、CO2 排出力を 88% 減らせた事になります。

電源比率と対比してエネルギー効率がどれだけ影響があるかと言うと。電源比率を調整すると、CO2 排出量がどう変わるか見てみましょう。決して起こらないことですが、もしクラウド事業者がオンプレミスのデータセンタより 6 倍 CO2 を排出する電源比率だったとしても、それでもまだ最終の CO2 量はオンプレミスのデータセンタと同じです。これまで見てきたとおり、それほどクラウドコンピューティングはオンプレミスのデータセンタよりエネルギー効率が良いということです!

100% に向けて

AWS は再生可能エネルギーの利用 100% という長期的な目標に向けて、引き続き取り組みを続けています。昨年、このゴールを実現するための重要なステップを数歩進めました。1 つは Pattern Development と協力してインドに 150 メガワットのアマゾン 風力発電所 (Flowler Ridge) を建設と運用を行うことです。

2015年5月、Webページ 持続可能エネルギーを更新し、現在 AWS のグローバルインフラストラクチャはおおよそ 25% 再生可能エネルギーを利用しており、2016年の終わりまでに 40% に到達しているとの予想を公表しました。実現のために今後 12-18 ヶ月の間に幾つか追加の開発計画があり、進捗状況は持続可能エネルギーのWebページに掲載してきます。

クラウドコンピューティングにおける環境面は驚いたことに既に強力で、方程式全体がさらに改善していくことを期待しています。

— Jeff (翻訳は辻が担当しました)

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