[派遣法案採決へ] 審議は尽くされたのか
( 6/18 付 )

 自民、公明、維新3党の国対委員長はあすの衆院厚生労働委員会で、労働者派遣法改正案を採決する日程に合意した。採決されれば、賛成多数で可決される見込みだ。

 法案をめぐる与野党の評価は相反したままである。派遣労働者の待遇改善が本当に実現するかも不透明だ。審議が尽くされたと言えるだろうか。

 改正案は秘書など一部業務を除いて、最長3年となっている企業の派遣労働者受け入れ期間の制限をすべて撤廃することなどを盛り込んでいる。

 政府は雇用安定措置や教育訓練の義務づけなどを理由に、派遣労働者を支援すると主張する。

 一方、民主党などは雇い止めで失業者が続出する恐れや、不安定な雇用の拡大につながると批判した。

 双方の溝は埋まらず、当事者の派遣労働者からも反対の声も相次ぐ。だが、採決することになったのは、維新が柔軟路線に転じたからだ。

 もともと維新は民主などとともに、対案として議員立法の「同一労働同一賃金推進法案」を共同提出していた。

 この法案は、派遣労働者と派遣先の正社員の賃金格差の是正を目指すことが柱だ。同じ仕事なら賃金を同水準にする均等待遇の実現を図るとしている。

 しかし、維新は与党と独自に修正協議を行い、修正案を成立させる代わりに、派遣法案の採決に応じることで合意した。

 問題なのは、修正が均等待遇にこだわらず、バランスの取れた待遇でもいいとする内容になったことだ。

 待遇格差是正のための対応で「1年以内に講じる」とした法制上の措置もあいまいになった。

 法案の根幹にかかわる事実上の骨抜きに他ならない。

 維新がなぜ与党にすり寄ったのか、理解に苦しむ。

 与党との修正協議を主導した「大阪系」の議員は維新の最高顧問の橋下徹大阪市長に近く、自民出身者も少なくない。橋本氏は安倍晋三首相と会談したことが伝えられたばかりである。

 露呈したのは一枚岩でない維新の党内事情だ。自民にとっては野党分断に成功した形だ。

 審議中の安全保障関連法案の採決に向けても、維新の懐柔を狙っているという。

 労働者派遣法改正案は雇用のあり方にかかわる重要法案だ。政局絡みの展開は好ましくない。

 論戦の舞台は参院に移ることになる。丁寧な審議を求めたい。


 
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