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【社説】

「安保」党首討論 「違憲」拭えぬ首相答弁

 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障法制が再び主要な議題となった党首討論。法案には「憲法違反」との指摘が相次いでいるが、安倍晋三首相の答弁は、違憲性を払拭(ふっしょく)するには至らなかった。

 今国会二回目、四週間ぶりに開かれた党首討論。安倍内閣が提出した安保法制関連法案を、国権の最高機関たる国会の場で三人の憲法学者がそろって「違憲」と断じた後、首相が国会の場で議論に応じるのは初めてだ。

 安保法案は、政府が自らこれまで認めてこなかった集団的自衛権の行使に道を開き、外国軍の武力の行使と一体化する恐れがある後方支援に踏み込む内容だ。

 この法案が外国での武力の行使を禁じてきた憲法の枠内に収まるのか、それとも憲法違反なのか。党首同士の討論にふさわしい大きなテーマではある。

 しかし、残念ながら議論が深まったとは言い難い。むしろ、法案が違憲であるとの指摘に対して、首相が説得力のある反論をできなかったと言うべきだろう。

 岡田克也民主党代表は、どんな状況になれば集団的自衛権を行使する存立危機事態に当たるのかとただしたが、首相は「(武力の行使の新)三要件に当てはまるかがすべて。その時々に適切に判断する」「いちいちすべてを述べるリーダーは海外にはいない」などと詳細な説明を避けた。

 そもそも違憲と指摘される集団的自衛権の行使だ。行使の基準を明確にせず、政府の判断に委ねろというのでは国民は納得すまい。

 首相が「法案は憲法の範囲内。正当性、合法性には確信を持っている」といくら強調しても、説得力を欠く。「とても憲法に合致しているとは言えない」と、岡田氏が指摘するのも当然だろう。

 志位和夫共産党委員長は、後方支援は外国軍の武力の行使と一体化し、憲法違反と指摘した。

 首相は、後方支援は戦闘現場でない「安全な場所を選んで支援する」として武力の行使とは一体化しないと強調したが、後方支援は戦闘と一体化し、攻撃対象になり得るという戦場の現実を無視した合憲論は意味を成さない。

 安倍内閣は維新の党に安保法案成立への協力を期待するが、松野頼久代表は「独自案を党でまとめてしっかり示す」と述べる一方、与党との修正協議に「応じるつもりは全くない」と断言した。

 その言葉を違(たが)えず、違憲と指摘される安保法案の成立に手を貸すことがあってはならない。

 

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