在米被爆者訴訟:医療費認めず、賠償請求棄却 広島地裁
毎日新聞 2015年06月17日 13時19分
国外に住んでいることを理由に、被爆者援護法に基づく医療費支給の申請を却下したのは違法として、在米の被爆者13人が広島県と国を相手取り、県の却下処分の取り消しと慰謝料など1人110万円の国家賠償を求めた訴訟の判決が17日、広島地裁であった。梅本圭一郎裁判長(小西洋裁判長代読)は請求をいずれも棄却した。
被爆者の医療費について、国は援護法に基づき国内での自己負担分を全額支給しているが、海外は対象外とし、同法の枠外で上限を設けて助成をしている。訴訟で、原告は国内の被爆者との差別的な扱いは違法で、精神的被害を受けたと主張。国などは医療保険制度が海外では日本と異なることなどを理由に却下処分は適法と反論していた。
韓国在住の被爆者が起こした同様の訴訟では、2013年10月に大阪地裁判決が医療費支給を認め、14年6月の大阪高裁判決も「在外被爆者を支給対象から外すという援護法の解釈は合理的ではない」として1審判決を支持。一方、同年3月の長崎地裁判決は「援護法は国内の医療機関で医療を受けることが前提」などとして訴えを退けており、司法判断が分かれていた。
原告は広島市で被爆し、米国に移住した70〜80代の男女で、うち1人は既に死亡している。【植田憲尚、石川将来】