在外被爆者:医療費認めず、賠償請求も棄却…広島地裁判決
毎日新聞 2015年06月17日 20時40分
国外に住んでいることを理由に、被爆者援護法に基づく医療費支給の申請を却下したのは違法として、在米の被爆者13人が広島県と国を相手取り、県の却下処分の取り消しと慰謝料などを求めた訴訟の判決が17日、広島地裁であった。梅本圭一郎裁判長(小西洋裁判長代読)は「援護法は医療内容と費用が適正であることを前提に支給を認めている。国外で医療を受けた場合は、適正性を担保することができず、同法は適用されない」などとして、請求をいずれも棄却した。原告は控訴する方針。【植田憲尚、石川将来】
原告は広島市で被爆し、米国に移住した70〜80代の男女で、1人は死亡している。
援護法は被爆者の医療費について自己負担分の全額支給を規定。訴訟で、原告側は援護法が定める被爆者は国内だけに限定しておらず、海外在住の被爆者を同法の対象外とすることは差別的な扱いに当たるとして、違法性を主張していた。
梅本裁判長は、国内の医療機関に対しては調査権限などがあるため、適正性が保たれていると指摘。在外被爆者の国外での受診については「調査権限などの規定を適用できず、各国で公的医療保障を受けた部分を(自己負担分を支給するために)控除する規定も存在しない」として、却下処分は適法と判断した。
在外被爆者が起こした同様の訴訟では、2013年10月に大阪地裁判決が医療費支給を認め、14年6月の大阪高裁判決も「在外被爆者を支給対象から外すという援護法の解釈は合理的ではない」として1審判決を支持。一方、同年3月の長崎地裁判決は「援護法は国内の医療機関で医療を受けることが前提」などとして訴えを退けており、判断が分かれていた。
厚生労働省のコメント 在外被爆者医療費の助成については2014年度から国内被爆者と同水準の支給が可能となるよう見直しを行っており、着実に実施していく。