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 さびた銃弾、炭化した乾パン、そして人骨――。土の中から、70年前に時を止めた人やモノが次々と出てくる。

 沖縄県糸満市。登山家の野口健さん(41)は今月、幹線道路の脇にあるガマ(自然洞窟)を訪れた。那覇市の国吉勇さん(76)の案内で、記者もガマに入った。一歩ごとに空気が冷え、30度の外気が10メートルほどで20度に下がった。

 「ここは1・5メートルくらい下が元の地盤だね」。腹ばいにならないと通れない横穴を前に国吉さんは説明した。雨で流れ込んだ土砂が堆積(たいせき)しているのだ。

 土砂をスコップや熊手で掘り返す。顔に汗がにじむ。やがて、70年前に焼かれて黒ずんだ土が現れた。土の中から3~4センチほどの破片が見つかり、野口さんは「これ頭蓋骨(ずがいこつ)かな」とつぶやいた。

 戦後70年。何が野口さんを、沖縄戦の犠牲者の遺骨収集に突き動かすのか。背景に、太平洋戦争で戦友たちを南方に置き去りにしたと悔やみ続けた亡き祖父の思いがあった。