天皇、皇后両陛下は17日、宮城県蔵王町に入り、南太平洋の激戦地・パラオからの引き揚げ者が開拓した「北原尾(きたはらお)」地区を訪れた。当時を忘れないよう「北のパラオ」との思いが込められた集落で、入植者の労をねぎらい、体調を気遣った。

 北原尾では、終戦翌年の1946年3月から入植者が雑木だらけの高冷地を切り開き、酪農業を定着させたという。4月に戦後70年の節目にパラオで慰霊した両陛下は、集落のことを知っていて、入植者の戦中からの苦労をしのび、訪問を強く望んだという。

 両陛下は「開魂」と刻まれた石碑の前で、3人の出迎えを受けた。14歳でパラオから帰国した吉田智さん(82)に、天皇陛下は「体を壊されないで」と気遣った。皇后さまは、5~14歳をパラオで過ごした佐崎美加子さん(83)に「大変な日々を過ごされたんですね」と語りかけた。

 パラオ生まれの工藤静雄さん(73)は写真パネルを使い、両陛下に入植後の経緯を説明した。粗末な小屋の写真を見た天皇陛下が「ガラスがないからずいぶん寒かったでしょう」と尋ねると、工藤さんは「竹で囲って寒さをしのぎました」と答えた。(伊藤和也、桑原紀彦)