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世界的な関心を集める「第4次産業革命」と、そのカギを握るAI(人工知能)

2015年06月18日(木) 小林 雅一
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「インダストリー4.0」のデモを行う独シーメンス社の工場 〔PHOTO〕Siemens-Pressebilder

製造業を「インターネット」と「AI(人工知能)」で自動化する動きが、欧米で勢いを増している。長年の伝統と品質に支えられた「モノづくり」を産業の生命線とする日本では、これに対する関心と警戒感が高まっている。

インダストリー4.0とは何か?

日本と並ぶモノづくり大国ドイツでは今、「インダストリー4.0」と呼ばれる産業改革プロジェクトが産官学の共同で進められている。これは工場の生産設備や物流の現場などをインターネットで結び、AIで自動管理することにより、製造業の生産性や効率性、柔軟性などを飛躍的に高めようとする試みだ。

ドイツ政府はインダストリー4.0を文字通り「第4次産業革命」と位置付けている。第1次産業革命は、18世紀の英国から世界に広がった繊維工場などへの「蒸気機関」の導入、第2次は20世紀に入ってからの米国を中心とする「モーターやベルト・コンベヤーなど電気技術」、第3次は20世紀後半の日本を中心とする「エレクトロニクス(ミクロ世界を解明する量子物理学に基づき、電子を自在に操作する技術)」、そして第4次産業革命は、これから始まる(願わくばドイツを中心とする)「インターネットやAI」の製造業への導入というわけだ。

もともと2011年に政府主導で始まったインダストリー4.0だが、そこには電機・電子メーカーのシーメンスや自動車のフォルクスワーゲンなどドイツを代表する企業、さらには一流大学や研究機関などが数多く参加している。このうちシーメンスは、ドイツ南部の小都市アンベルクに以前からある工場を試験的に改造し、ここで外部からの見学者や報道関係者らに向けて、「インダストリー4.0とは具体的にどういうものであるか」をデモしている。

たとえば製造ラインを流れる半製品が「自分にどんな部品が足りないか」を製造装置に知らせると、装置がその部品を見つけてきて、この半製品に組み込む。あるいは半製品が「自分はこれからどういう工程で、どのような作られ方をしなければならないか」を製造装置に知らせると、装置がその指示通りに最終製品を完成させる。これによって従来のような規格化製品だけではなく、ある種のカスタム・メイド商品も大量生産できるようになるという。

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