選挙権年齢を18歳以上にする改正公職選挙法がきのう成立した。来年の参院選から、18、19歳の約240万人が新たに有権者となる。

 政治参加の間口を広げ、若い世代の声を政治により反映させる。大きな意義のある改革であり、歓迎したい。

 ただ、若い有権者を増やすだけで政治が変わるわけではない。先の統一地方選で顕著だった低投票率や議員のなり手不足といった政治の停滞は、もはや見過ごせないレベルにある。選挙権を拡大しても、投票に行かない有権者を増やすだけに終わっては意味がない。

 18歳選挙権に向け、各地の教育現場では、模擬投票など「主権者教育」への取り組みが始まっている。学校で友人と政治や民主主義を考え、投票に行こうと声をかけ合う。10代での経験は政治参加の原点として年齢を重ねても生きるに違いない。

 一方、政治の側からも、若者に限らず有権者全般との間にある垣根を低くするためのアプローチが求められる。

 政治家の顔ぶれをみると、世襲が相変わらず目立ち、官僚や地方議員の出身者も多い。国会でも地方議会でも会社員や公務員が立候補するには職を辞したり、高額の供託金などを工面する必要があったりと、高いハードルがあるからだ。

 規制だらけの公選法も有権者から選挙を遠ざける一因だ。戸別訪問で政策を訴えることは禁じられ、選管主催の立会演説会は30年以上前に廃止された。

 1950年の公選法制定時には衆参両院選とも30日間だった選挙期間はどんどん短縮され、いまは衆院選12日間、参院選17日間だ。有権者が候補者の人柄や政策を吟味する時間はどんどん削られている。

 ネットによる選挙運動は認められたが、前回衆院選の当選者のうち「最も重視する情報発信手段」としてネットを挙げたのは2%にとどまる。街頭演説予定のお知らせといった使い方が目立ち、まだまだ十分に活用されていないのが実情だ。

 政治家本位でなく、有権者本位の選挙にする。そのために運営を工夫した立会演説会の復活や選挙期間の見直しなどを、積極的に検討すべきだ。

 そして何よりも、政治そのものが若い有権者をひきつける存在になる必要がある。

 選挙に勝てば何でも決められる。そんな「数の力」が政治の基本原理であるかのような国会が続いている。このままでは、若者の政治参加への意欲も育ちようがない。