[PR]

 ぎりぎりで「強制撤去」は避けられた。大阪・梅田の大阪駅前地下道の工事で、老舗の立ち食い串カツ店「松葉」など計5店舗が大阪市から退去を命じられた問題。これまで抵抗してきた5店すべてが、自主退去することを決めた。何があったのか。

 5店舗は地下道東側の松葉、チケットショップの2店舗と、地下道西側の飲食店街「ぶらり横丁」内にある焼き鳥店など3店舗。

 大阪市は阪神百貨店の建て替えにあわせて、地下道の幅を8メートルから15メートルに広げると決定。2年前から地下道にあった約20店舗に退去を求めてきた。しかし5店舗は営業を続けた。市は8日、設備の撤去を命じる「除却命令書」を交付。11日には行政代執行法に基づき、12日までに退去を迫る「戒告書」を出した。

 松葉は、除却命令の執行停止を大阪地裁に申し立てた。しかし地裁は12日、申し立てを却下。松葉とチケットショップが申し立てた戒告の執行停止の申し立ても15日付で却下された。

 地裁は「(大阪市の対応は)地下道の交通混雑の解消や耐震補強を目的とし、公益上の必要を欠くものであるとは認めがたい。行政目的の達成を一時的に犠牲にしてもなお救済しなければならないとはいえない」などと判断した。

 橋下徹大阪市長も16日、ツイッターで「問題点は全て確認。リーガルチェックも確認。手続きを進めていくことを了承した」と投稿し、早期に強制撤去を進める考えを明らかにした。

 これらの動きを受けて両店は営業の継続を断念。残る3店舗もこの日深夜、弁護士との話し合いを経て、営業継続を断念した。5店舗とも近日中に、店舗内の片付けを終える予定だ。

■揺れた店側

 店側は最後まで揺れた。

 13日から休業していた松葉はこの日の夜、閉店を決めた。大阪市内で記者会見した代理人の弁護士は、退去命令の執行停止申し立てが却下されたことから「致し方ない」と語った。

 松葉の通路向かいにあるチケット店「オアシス」も夕方にシャッターを下ろし、夜には事務用品や商品を次々と運び出した。代理人の弁護士は「市といたずらに争うのは本意ではない。廃業する」と話した。