――このたびNGT48の発足まで発表され、いまだ巨大化し続けるAKB48グループ。同時に、卒業していくメンバーも続々と増えている。果たして、同グループは本当に「夢への通過点」だったのか──? 共に19歳、埼玉県出身の2人に、その本音を聞いた。
(写真/黒瀬康之)
──今回、女優・グラビアアイドルの特集ということで、卒業生たちが続々と両者への道へと進んでいるAKB48グループについて、お2人にお話を伺っていきたいのですが……そもそもAKBグループのメンバーは、グラビアアイドルを押しのけて、グラビア仕事をじゃんじゃんやってますよね。特に金子さんは、「出口陽セレクション8」【編註:元SKE48のメンバー・出口陽が選抜した非公式ユニットで、「週刊プレイボーイ」(集英社)にて水着グラビアを飾った】もあって、グループ在籍時からグラビアのイメージが強いですが、そのあたりの垣根って、意識してましたか?
金子 栞(以下、金子) いやー、選抜に入るとグラビア仕事が多かったんですけど、仕事がきたからやってる、みたいな感じで……水着に対しても乗り気じゃなかったんですよね、若い頃は。でも、陽さんが私のおっぱいを気に入ってくれて、それぐらいからグラビアも楽しくなったというか。
──今も十分若いと思いますが……金子さんは、SKE48を卒業してから初めてのグラビア写真集として「デジタル週プレ写真集」シリーズから発売された、『脱、アイドル。』(集英社)も話題になりましたよね。「表紙の手ブラがエロすぎ!」「ついに脱いだか!」などと、ファンは大騒ぎでしたけど。
金子 あれ、手ブラじゃないですよ! よく見るとわかりますけど、下にピンク色の水着着てるんです!
──え! みんなだまされてるじゃないですか……!
金子 いやいや、私もネットで読んでびっくりしたんですから。
──最近、AKBグループを辞めた子たちに、週刊誌などから「うちで脱ぎませんか?」という声がかかっている、という話を耳にするもので、金子さんも脱がされたのかと(笑)。
金子 (マネージャーに)え? そんなオファー来た? 来てないよね? 来てないみたいです!
──でも、結構きわどいカットも多かったですよね? 抵抗はなかったです?
金子 抵抗はありましたけど、あれで一皮むけたんですよね。同じグラビアでも、かっこいい感じだったり、何か自分らしさも出しつつ、スタイルよく見られたいなって思えるようになって。
──グラビア自体に抵抗はなくなった、ということですね。ちなみに森川さんのほうに、脱ぐというオファーは……?
森川彩香(以下、森川) いや、私にもないです(笑)。それに、やりたくないことはやらないので、もしあっても断りますよぉ。
──森川さんはまだグループを辞められたばかりですが、今後、グラビアにも挑戦されるんですよね?
森川 はい。ただ、私はグラビア自体に抵抗はないですけど、親に見られるのがすごく嫌で。子どもが活躍している姿を見るのが大好きなので、お父さんにもすでに「グラビアが出たら買うから教えてね」って言われていて、複雑です(笑)。
──AKBグループ結成当時のコンセプトは「夢への通過点」だったわけですが、お2人とも、加入当時から卒業後のことは考えていたんですか?
森川 入った時は中学3年生でしたし、まったく考えてなかったですね。でも、活動していくうちに、アニメが大好きなので、声優になりたいなって思うようになって。そのうち、ファンの方から「モデルやりなよ」って言われて、そっちにも興味を持つようになり……今は、グラビアもやっていきたいです。
金子 私は、おばが勝手にSKEのオーディションに応募して、トントン拍子に決まってしまって……むしろ、最初は断ろうと思ってたくらいなんですよ。踊るのも好きじゃなかったし、埼玉出身なのに名古屋だったし(笑)。だから将来のこととか、考えてませんでした。その当時から、基本的には流れに身を任せているんですけど、今はファッションが好きだからそういう仕事もしたいし、バラエティ番組でしゃべるのも好き。むしろグラビアは好きじゃなかったけど、「似合うよ」ってメンバーに言われてからは、「似合うなら、自分に当てはまるのをやればいいや」って思ってやってます。
──柔軟ですね……。そもそも、グラビアアイドルにはどんなイメージを?
金子 バラエティ番組にいっぱい出てるイメージでした。
森川 12年の総選挙で圏外だった子たちのグラビアをメディアに掲載してもらえる、という企画があったんですけど、私はその時の撮影が楽しかったので、もともと興味のあるお仕事でした。
──じゃあ、お2人とも、グラビアの仕事は「バラエティ」「撮られる」という、それぞれ興味のあったキーワードにつながってるんですね。それにしても、最初から次を考えながら活動している、AKBグループを本当に「夢への通過点」と考えてるメンバーって、多いんですか?
金子 うーん、SKEは「卒業したら普通に戻りたい」っていう子も多かったですよ。卒業してから新たに芸能界でやっていくなら、若いほうがいいでしょうからね。辞めたら婚活だな、という子もいました。もちろん中には、桑原みずきさんみたいに、SKEのときからずっと「やりたい」って言ってた舞台女優として活動してる人もいますし、グラビア志望だった(佐藤)聖羅ちゃんも、「もっと脱ぎたい」って言ってたのが、今ではグラビアメインで……2人とも希望がかなって、本当に生き生きしてますよね。
──ちなみに、その佐藤聖羅さんが、先日出演したバラエティ番組の中で、過去に枕営業未遂があったことを告白して話題になりました。お2人には、そんな危機はなかったんですか?
金子 私はまったくないですね。たぶん、まだ若かったからじゃないですか?
森川 私も、自分はなかったです。
──これから枕営業を持ちかけられたりもするんじゃないかと思いますが……そこへの不安や危機感とかあります?
金子 ないです。嫌だったら断りますよ。「私、帰りま~す」って。
森川 うんうん。
「もう引き留めない」卒業し放題の理由
──あれだけ大所帯になると上下関係とかポジション争いとか厳しそうですが、お2人はなんだか、ふわふわっと乗り超えてきた感じですね。とはいえ周りは、結構ギスギスしてたんじゃないですか?
森川 AKBは上下関係とか、そんなに厳しくなかったんです。研究生時代は先輩たちが休演の時のアンダー【編註:正規メンバーが休演する際、研究生が務める代役のこと】をしていたので、1期生とかに会うことはなかったんですけど、チームに正式加入してからは、皆さん普通に話しかけてくれて、ウエルカムな感じでしたから。
金子 SKEは上下関係はないけど、負けず嫌いが多かったので……ポジション争いとかは結構ありました。どこのポジションに入るか、いつもメラメラしているメンバーもいて。同期で早くから選抜に入っていた子に対して、悔しがっている子とかも多かったですしね。あと、「私、これだけのポジションの振り付けを覚えたので、公演に出させてください!」と言いに来る研究生とかも。
森川 ええ……。AKBの研究生は、そういうことはなかったですね。常に「あなたはここやって」って、次から次へと指示されるので、覚えることが多くて、どこのポジションがいいとか言ってる場合じゃないって感じでしたから。そもそも私、ギスギスとか、メラメラしてるのが苦手なので、AKBでよかったなと思いました(笑)。SKEって、正直ガッと来る人が多いですもんね。
金子 たぶん、名古屋の人って気が強いんですよね。SKEは、AKBに負けたくないって子が多くて。でも、それで頑張ったから、人気があるから、握手券とかグッズが売れてるから選抜されるっていうワケでもないんですよね……。最初は運営スタッフさんの“推し”で選抜されて、前に出る機会が増えればファンが増えるのも当たり前。「(運営に)推されたもん勝ちだよね」なんて言ってるメンバーもいましたから。
森川 AKBも、推されてる、推されてないっていうのはありましたね。
──その「推される・推されない」っていうのも、卒業を意識するきっかけになりました?
森川 そういうわけではないんですけど、卒業は、去年の10月くらいから考え始めてて、「楽しいけど、ずっとここにいても何も変わらないんじゃないかな」って思ったんです。それならひとりで、どこまでやれるか挑戦してみたくて。
金子 私は入った時から、グループをずっと続けるつもりじゃなかったんですよ。実家が埼玉なんで、いつか東京に戻らなきゃなって思ってたし。で、13年の『AKB48 32ndシングル選抜総選挙』で63位にランクインした時、「ああ、来年は出ないかな」って思ったんです。それから1年間仕事も充実してたので、「節目に辞めたほうがすっきり、新しい気持ちでできるかな」って思って、高校を卒業した去年の春に辞めました。
──辞めるときに止められたりはしなかったんですか?
金子 実はその前からずっと、「辞めたい」とは言ってたんですよ。そのたびにスタッフさんから「今は頑張ろう」って説得されたりしてて。それでも最後は私の意志が強かったので、「もう何を言われても辞めます!」みたいな、押し切る感じでしたね。
森川 え……私はあんまり止められなかったけど……(笑)。
──数年前までは誰が辞める、辞めないって大ごとだった気がしますけど、今は大量に辞めていってますよね? やっぱり、引き留められなくなったからなんですか?
金子 確かに、引き留めなくなりましたよね。SKEなんて辞め放題になってますし(笑)。大きい組織にいたほうが仕事は安定するし、安心ではあるけど、今はもう、辞めるメンバーの主張を尊重しようっていう雰囲気です。
──単純に、スタッフの手が回らなくなってることも原因なのかと思うのですが。
森川 確かに、マネージャーは少なかったです。前日の夜に翌日の仕事の予定がメールで来るんですけど、それが夜中の1時とかだったりしましたから。
──今、別の事務所で個人の活動をスタートされて、お仕事の量や内容、収入などに変化はありました?
金子 安定しているという意味では、お給料はSKEのほうがよかったですね。今はどんな仕事をするにも自分次第だし、不安定ではあるので。ただ、その分、自分のペースでやれていて。焦りもないし、不満はないですね。
森川 私はまだこれからなので、わかんないですけど……今までより自分のやりたいことができているので、今後が楽しみです。
グラビアは若いうちだけ 将来はママタレも視野に
──ところで、すでに卒業して活動しているメンバーで、今後の目標にしてる人っています?
金子 特にいないかな。
森川 いないですね。
金子 誰かみたいになりたいとかなくて。「基本、自分」みたいなところもあるんで、自分らしくやっていければいいなって。
──逆にこうはなりたくないな~という人は?
金子 ああ……最近話題になった元メンバーみたいな方向性は、私は違うかな、と思いますね(笑)。
──それって、『MUTE……
金子 ああ、そこは使えなくなっちゃうんで、コメント控えます(笑)!
──お2人は、グラビアの次のステップとかって、考えてます?
森川 モデルになりたかったので、できるならモデルさんをやりたいな、とは思いますけど、グラビアをただのステップアップの手段とは考えてないですね。楽しいからやりつつ、いろんな活動をしたいなって。
──やれるうちは、ずっとやりたいと?
金子 いや、若いうちだけ!
森川 うん、25歳とかそれくらいまでだよね。
金子 私は23歳かな。若くて体を見せられるうちに、いっぱいやっておきたいなと思います。だから、AKBグループの中で20代後半までやってる子を見ると、大丈夫かな~って思っちゃうんですけど。それに私、20代でママタレになりたいんですよ! ブログで「大切なお知らせ」とか出して、ファンの人たちに結婚報告したり、出産報告したりしたい(笑)。
──すでに、ママタレ構想まで! では最後に、お2人にとってAKB、SKEは、「夢への通過点」になりましたか?
森川 なっているとは思いますね。活動の幅も広がりましたし。
金子 うん、これからもっと、SKEを踏み台にしたいと思ってます!
(文/高橋ダイスケ)
金子 栞(かねこ・しおり)
1995年、埼玉県生まれ。10年に行われたSKE48第4期生オーディションに合格し、同年に新設されたチームEの初期メンバーに選抜。木本花音と共にセンターポジションを務めた。14年4月末の個別握手会をもってグループを卒業。現在はグラビア活動をはじめ、『ザキ山小屋』(ABC)などバラエティ番組にも出演中。
森川彩香(もりかわ・あやか)
1996年、埼玉県生まれ。10年に行われたAKB48第11期研究生オーディションに合格し、研究生となる。12年のさいたまスーパーアリーナ全国握手会イベントにて正規メンバーに昇格し、同年の東京ドームコンサートにて発表された組閣によって、チームAに配属された。今年5月末をもってグループを卒業した。
ひっそりと事務所解雇も……苦悩するAKB卒業生たち
今年3月末、自身のブログで事務所退社を発表した平嶋夏海。「夢への通過点」として発足したAKB48グループだったが、その卒業生たちが目の当たりにしている現実はとても厳しい。
記憶に新しいところでは、今年、プロダクション尾木に所属していた元AKB・松原夏海が3月いっぱいで契約終了したことを発表。これまでにも、元AKB・SDNの佐藤由加理や元AKB・米沢瑠美が共にアーティストハウス・ピラミッドとの契約を解除(現在、佐藤は芸映プロダクション所属、米沢は城田理加に改名して『MUTEKI』からAVデビュー)されたほか、現役メンバーでも、田名部生来が4月末にムーサとの契約終了を発表するなど、AKSへの“出戻り”も始まっている。
そもそもAKBグループといえば、AKBに所属しながらそれぞれが芸能事務所との契約を結んでいく、というのがひとつのイベントにもなっていた。元AKBの前田敦子、大島優子、さらに現HKTの指原莉乃らを有する太田プロダクションや、渡辺麻友、高橋みなみ、小嶋陽菜ら主力の現役メンバーを抱えるプロダクション尾木など、数年前までは、多くのメンバーと契約を結ぶ大手の事務所も少なくなかったのだ。しかしここ1~2年は、そうした事務所契約の話題が持ち上がらなくなっている。それどころか、冒頭で述べたように、グループ卒業後は契約を解除する事務所も少なくないのだ。そうした状況もあってか、AKSに所属したまま卒業したメンバーには、「ゆっくり活動は続けたいなと思うんですが……事務所がなかなか決まらない」と、その後の活動に苦悩する者も後を絶たない。
最近では、グループ在籍時からグラビアが過激化しているためか、MUTEKIなどのAVメーカーや男性週刊誌など、卒業後、または事務所解雇後にヌードを持ちかけるところも増えている。まだまだ増加する“卒業生”を次に目にする時、彼女たちが本当に望んだ活動を行ってほしいものだ。