コンセプトとはなにか

 

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企画において、コンセプトはゲームのすべてを支配すると言っても
いいくらい、重要なものです。


 コンセプトの内容次第で、ゲームは面白くなり、また、面白く
なくなります。

 私はだいたいコンセプトを聞いただけで、そのゲームがどんな感じに
なるのか、売れるのか、面白くなる可能性があるのか、プランナーが
どういう姿勢で企画を立てたのか、どういう思想を持ってコンセプトを
立てたのか、が、想像できます。

 

 いや、その人の主観的な部分はわかりませんけど、客観的にゲームが
どういう方向性に行こうとしているのかはだいたい想像どおりになります。

 で、よくあるのが「まったり」しているか「無難な」方向性で
いこうとするコンセプトで、私はそういうときに、プランナーの人が
ゲームデザインのツボを押さえた上で、それをやろうとしているのか? を
探ります。

 よくプランナーになりたての人には、そういうツッコミをしています。


 世界観がまったりしていても、ゲームで実現しようとしているものが
人の感情を大きく揺さぶるものであるならば、そこには「ギャップ」が
あるので、面白くなり、ヒットする可能性があると踏みます。


 しかしたいていの場合はわかってないわけです。

 見切り発車で、ゲームを作り出そうとしている。

 またはコンセプトが妥協の産物だったりする。


 コンセプトというものがわかってないので、こういうことが起こる。


 では、コンセプトとはいったいなんなのでしょう?


 これを考えるとき、まずゲームをプランニングするときにおいて
大事なのは、いったいなんなのか? ということを考えるんです。


 ゲームで大事なのは、面白さ。


 これに異論はないと思います。

 ゲームの存在意義は、その面白さに依存しますから。

 より深く、広く、人々を面白さにのめりこませ、熱狂させたゲームは、
人々にまさにあがめられるほど、大きな価値を持ちます。

 逆に面白くなければ、そのゲームは存在しないも同じになる。

 

 ゲームで大事なのは「面白さ」だということはわかった。

 

 次に必要なのは、どういう面白さを実現するのか?

 

 ということを考えることです。


 まさにこれが、コンセプトを決める上で重要な質問になります。


 どういう面白さを実現するのかによって、ゲームの面白さは
全然変わってきますよね。

 ゲームデザインにおいて、実現する面白さは1つに絞ります。

 「テイクワン」という考え方です。

 あれもこれも...とゲームにいろんな面白さを詰めようとすると、
ゲーム開発は時間も人員も限られていますから、1つ1つの
要素が非常に薄いものになってしまう。

 結果、中途半端なものができあがる。


 だから、あえて1つの面白さを追求することに絞るわけです。


 そうすることで、その1つに決めた面白さを、カルピスの原液の
ごとく、煮詰めて作る水あめのごとく、濃くしていくわけです。


 その1つの面白さ、つまりゲームの軸、開発のすべての場合に
優先するものを、コンセプトとして、決めるわけなんですね。


 例えば、スリラー(恐怖)系のゲームを作るとしましょう。

 そうした場合、すべての絵、すべての音、すべてのゲームシステムは、
恐怖に向かうように、作られるんです。

 すべての要素が、実現するべき「恐怖」に向かうんです。

 

 コンセプトとは、常に追求するべき、1つの面白さである。

 

 ゲームのしくみ的に言えば、

 

コンセプトとは、常に追求するべき、1つの感情である。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ということになります。


 で、これで終わりではないですよ。


 面白さ、要するに実現するべき感情について、考えなければいけない
ものがある。


 まずは、「ターゲット」。

 どんな年齢層へ向けるものか、男か、女か、学生か、社会人か、
老人か、おばちゃんか、セレブか、ゲームをあまりやらない人か、
ゲームオタクか、お金持ちか、貧乏か、どんな生活を送っている人か、
どんな趣味を持っている人か、どんな性格か。


 よくあるのが「全年齢層に」というターゲッティングの仕方です。

 こういうターゲットにすると非常にブレが大きくなるし、無難になって
いくんですね。

 サザ○さんみたいな、超無難な作品になってしまう。

 なんの個性もないし、刺激もないわけです。

 あのゲームに貼ってあるシールに影響されて、その通りのゲームを
作ってはだめだということです(笑)。

 

ターゲッティングとは、究極的には「ひとり」に対して行なうものです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 例えば、あなたの友達のひとりを思い浮かべてください。


 その人にやらせるゲームを考えるんです。

 その人はどういうゲームをやれば、驚いたり、泣いたり、緊張したり
するか。

 その人がどういう趣向を持っているか、ファンタジーが好きなのか、
それともまったくゲームをやらない人か、それによって、全然ゲームの
作り方が違ってきますよね?


 ターゲットをひとりに絞ると、それが非常に明確になる。


 「ひとりに絞ったら、そのほかの人がやらないのではないか?」という
危惧を抱く人もいると思います。


 そういう人は、例えば「朝まで生テレビ」を想像してみてください。

 参加者のひとりが、もうひとりの参会者に対して熱い議論をしています。

 その内容を聞いて、「なるほど!」「そうだ!」と、納得する場面が
ありますよね。


 要するに、1対1で話している2人を見ている人の中にも、ちゃんと
納得する人が大勢いるということなんです。


 ターゲットが曖昧で、「みなさん」などと大勢の人に対して話し掛ける
ように話しても「私に言ってるんじゃないのね」と、注目しないんですね。


 それに対して、特定の個人に語りかけるように話したほうが、
「私が言われているとしたら...?」と考えるので、伝わるんです。

 人は感情移入する生き物ですから。


 だからより多くの人に強烈に伝わるんですね。

 

 これがターゲッティングというものなんです。

 

 よく、ゲームとは開発者とプレイヤーの対話なのだ、という
言葉を聞きますが、そういうことなんですね。


 ターゲッティングのときに氣をつけたいのは、「ゲーム開発者のの視点」
を持っていない人をターゲットにする、ということです。

 開発者はいろいろなことを知りすぎていますから、批評家の視点に
なりやすいというのと、実際のプレイヤーのように「なにも前提知識がない」
状態のプレイがなかなかできないんです。


 宮本茂氏も言ってますが、ゲームを作る時は常に「プレイヤーの視点」で
ないといけないんですね。

 

 「ターゲット」の次は、「パーソナリティ」。

 パーソナリティとは、個人、個性という意味です。

 これはターゲットにも繋がるんですが、伝える側がどんな個人であるのか?
誰が語る、どんな世界であるのか、ということですね。

 伝える人によって、世界というのは一変します。

 人によって物事を見るフォーカスが違うからです。


 どんな人が語る、どんな世界が、受け手を魅了するのか。

 例えば、「エイリアン」や「ブラックレイン」の映画監督の
リドリー・スコットが映し出す映像というのは、薄暗く、雨が降り、
じめじめしていて、どこか鬱屈とした空気が流れています。

 その中で、激しい戦闘が行なわれたりするので、どこか悲壮感を感じる
場面が多くなる。


 これが「ロボコップ」「スターシップ・トルーパーズ」の映画監督の
ポール・バーホーベンだとどうか。

 どこか世の中を皮肉った感じの出来事が起こり、残酷な出来事も、
性的なシーンもごちゃまぜにして描写するので、刺激的でありながらも
なぜかユーモラスな世界観が展開します。


 このように、伝え手によって世界観の表現はガラッと変わるわけですね。


 ゲーム製作の場合は、特に個人製作の場合はプランナーの世界観が
表現されますから、いかに魅力的な世界観をあなたが持っているか、
ということに依ります。

 これは日頃の勉強の成果が出ますし、最も「作品」としての色合いが
濃く出るところです。


 パーソナリティは別に、難しく考える必要はないです。

 「あなた」を出すだけでいい。

 それがオリジナリティになる。


 例えばあなたが好きな映画作品、ゲーム、小説、スポーツ、趣味、
そういった趣向は、他の人とはまず同じことはないんです。

 その組み合わせかたも、ほかの人とまったく違う。


 ただ、突き詰め始めると「自分を表現する」ということは、
芸術の世界に入っていくので、底がなくなりますけども。


 どのような世界観を表現したいのか? それを日頃からストックして
いきましょう。

 そしてそれを足したりかけたりして遊んでみて、魅力的な
世界観を考えてみてください。

 

 「パーソナリティ」の次は、「メッセージ」。

 ゲームにはメッセージのないものも多く、なくても楽しいゲームは
できあがります。

 しかし、ゲームが「表現物」であることには変わりないので、
そこからなにがしかのメッセージが自動的ににじみ出てくるんです。

 開発者が開発中に抱いていた気持ちがにじみ出るんですね。


 特にゲームは音楽と映像を伴うので、そこから感じるものは、
非常に強烈です。


 いい例としては、「ドラクエ」がそうですね。

 プランナーの堀井ゆうじ氏の温かい世界観が、登場人物の
セリフの中ににじみ出ています。

 「ドラクエ」はシリーズを重ねるごとに、だんだんとエンディングに
こめられたメッセージ性が強くなり、プレイヤーが最終的に
たどり着いた先のメッセージに、大きな感慨を受けるようになって
います。

 これは大きな意味で「教育」であるとともに、ゲームに「深み」を
与えるよそになっています。


 先ほど、ゲームは開発者とプレイヤーの対話なのだ、と言いましたが、
それも結局最終的になにを伝えたいのか? というところに行き着きます。


 そこで、意図的にメッセージを設定しておくと、

 

「このゲームは最後に私になにを伝えたいのだろうか?」

 

という伏線を感じさせることになり、深みが増すんですね。

 「オウガバトル」や「タクティクスオウガ」などは、その深みを
持った最たる例で、ゲーム全体に散りばめられた哲学的なメッセージが、
プレイヤーをグイグイとゲームに引き込んでいました。


 コンセプトにメッセージを加えなくともゲームは作れます。

 が、メッセージがあったほうが、より完成度の高い、社会に影響を
与えるだけの力を持った、力強く、重厚なゲームに仕上がります。


 ぜひ、あなたの「思い」をメッセージとして、ゲームに加えて
みてください。


 現役のゲームデザイナーのあなたは、ディレクターには内緒で
自分の中でメッセージを設定して、ゲーム製作を進めてみてくださいね(笑)。


 まとめましょう。


・コンセプトとは、常に追求するべき、1つの感情である。

・ターゲットをひとりに絞る

・パーソナリティを明確にする

・メッセージを設定してゲームに深みを与える


 あなたのゲームを作る前に、決めてみてください。

 ゲームがグッとよくなるはずです。

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