厳しい表情で戦局を見つめるハリルホジッチ監督
「19回も決定機を作った」と、ハリルホジッチ監督は何度も強調した。公式記録のシュート数も23対3。たしかに一方的な試合だった。しかし、日本代表はその決定機の山を一つもモノにできなかったのである。
シンガポールのGKのイズマン・マフブドは素晴らしいセービングを連発した。もし、あのレベルのプレーをコンスタントに発揮することができるのなら、イズマンは世界のどんなビッグクラブでもやっていけるだろう。しかも、シュートがクロスバーに嫌われるような不運もあった。
「相手のGKが当たりまくり、運が味方しない時には、どんなに攻めても点が入らない」。
僕も半世紀もサッカーを見続けてきた人間だ。そんなことは十分に承知している。
だが、そのことに言及するのは、やれる限りの努力と工夫をし尽くした時だけだ。日本代表はたしかに良く攻めた。だが、守りを固めている相手からゴールを奪うために十分に工夫ができていたのかといえば、答えは「ノン」であろう。
会場が埼玉スタジアムだったせいもあって、僕は後半の途中から、まるで2年くらい前の浦和レッズの試合を見ているような感覚になっていた。 ワントップにツーシャドー、そして両サイドアタッカー、さらにはセンターバックまで攻め上がる攻撃サッカーが、浦和の（というか、ペトロヴィッチ監督の）売り物である。
だが、2年くらい前までは、ワントップにツーシャドー、そして両サイドの合計5人の選手が攻め上がり、前線に横並びになったまま膠着してしまう場面がよくあった。5人が並んだまま動きもなくなり、当然DFもマークに付くから、ゴール前に密集が出来て、「攻めあぐね」の状態が続く。そして、カウンターを食らってあっさりと失点する。浦和は、そういうボール・ポゼッションで上回る試合が苦手だった。
今の浦和は、前に行く選手と、行かない選手が整理されており、前線にスペースを確保して次々に違う選手が顔を出す流動性を手に入れた。しかも、無理に人数をかけて攻めないから、カウンターに対しての備えもできる。それが、昨年からの安定感につながっている。
シンガポールの守備に手を焼く日本代表を見ていて、その「2年前の浦和」を思い出したのだ。
開始直後の日本代表の攻めは悪くなかった。柴崎岳あたりからスイッチのパスが出て、それを前線の選手が裏に飛び出して受けたり、ワンタッチではたいて他の選手を走らせたりして形を作っていた。先日のイラク戦と同様、ゲームの入り方は良かった。違いは、イラク戦は足が止まる前に2点が入ったこと。そして、シンガポール戦では点が入る前に足が止まってしまったことだ。
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