社説:18歳選挙権 若者こそ政治に参加を

毎日新聞 2015年06月17日 02時30分

 とりわけ教育現場は有権者として必要な意識を育む「主権者教育」への対応を急ぐべきだ。政府は投票や選挙運動などの基本的な仕組みや注意点について説明した教材を今秋、全高校生に配布する。混乱を来さぬよう、準備に万全を期してほしい。

 エネルギー、安全保障など実際の政治テーマを教育現場で取り上げ、若者同士が論じることで政治や選挙への関心を高めていくようなプロセスが欠かせない。政治的中立の名の下に具体的な政策の議論を遠ざけるようなことがあってはならない。

 ◇民主主義を学ぶ契機に

 自分と異なる意見も尊重し、議論を通じて考えを深めることは民主主義のルールを学ぶことでもある。これまでこうした教育が乏しかった。新聞などメディアも大いに活用してもらいたい。教育現場で政治を論じあうことを許容する社会的な合意づくりが何よりも重要になる。

 政党も問われている。人口減少や超高齢化が進む中で、従来以上に若い世代に目を向けた政策の立案やアピールが求められる。

 経済協力開発機構(OECD)調査によると、国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合で日本は比較可能な31カ国中、5年連続で最下位に沈む。一方で社会保障をめぐる議論は高齢者向けの施策に偏りがちだとして「シルバー民主主義」とやゆする声すらある。世代間対立をあおるような議論には賛成できない。だが、財政再建や子育て支援など若い世代を意識した施策がともすれば後回しになり、若者の政治離れを加速してきた側面は否定できまい。

 18歳選挙権の実現に伴い、民法の定める成人年齢の引き下げをめぐる議論も今後、本格化が予想される。「18歳成人」も各国の大勢であり、選挙権年齢といずれ一致させていくのが自然だろう。

 各種世論調査をみる限り「18歳成人」へ広範な理解が得られているとは言い難い。それだけに、親の同意がなくても結婚や契約ができる年齢など、実態に即した議論を深めるべきだ。被選挙権年齢の引き下げも今後の論点となるだろう。

 若者の政治参加が進んでいけば、政治のあり方を変える大きな力となる。高校生を含めた18、19歳の若者が政党や候補者を吟味し、1票を投じる意味は決して小さくない。その一歩を大事にしたい。

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