社説:18歳選挙権 若者こそ政治に参加を

毎日新聞 2015年06月17日 02時30分

 選挙で投票できる年齢を現在の20歳以上から18歳以上に引き下げる改正公職選挙法がきょう成立する。公布から1年を経て初の国政選挙となる来夏の参院選からすべての選挙に適用される。改正に伴い、高校生も3年生の一部は投票に参加できる。

 参政権の拡大は終戦直後に20歳以上の男女と決まって以来70年ぶりで、重要な原則の変更となる。単に有権者数が増えるだけの話ではない。若者が政治への関心を高めると同時に、将来を担う世代を重視した政策がこれまで以上に実現されていく契機とすべきだ。

 ◇重み増す教育の役割

 今月中旬、東京都立戸山(とやま)高校の2年A組は「18歳選挙権」をテーマとした自由討論を行った。同校は実際の選挙に近い形で投票を体験する模擬投票などに取り組んできた。

 高橋朝子(ともこ)教諭が「法案が成立すれば(現在)高2のみんなの中にも来年、参院選で投票できる人がいるんだよ」と説明し、議論が始まった。

 「政治に若い世代の声が取り入れやすくなる。期待したい」

 「逆に『投票しない若者が悪い』と言われかねないと思う」

 「親と暮らす高校生は大学生よりも投票に行くはずだ」

 「でも、親の意見に従ってしまうような気がする」

 次々と手を挙げ、生徒が述べる意見は「高校生にも選挙権」が実現する期待と不安を物語った。同時に実施したアンケートでは18歳で投票に行くかとの問いに27人が「YES」、8人が「NO」と回答した。

 今回の引き下げに伴い18、19歳の約240万人の有権者が増える。これは全体の2%程度にあたる。選挙権を18歳の若者に認める国や地域は9割超に達し、もはや国際標準だ。遅れたとはいえ実現を歓迎したい。

 もちろん、18歳選挙権を生かし、国民に定着させていくために取り組むべき課題も多い。

 ここ数年、国政、地方選挙で投票率の低下が目立つ。とりわけ若い世代の「選挙離れ」は深刻だ。戦後最低の投票率52.66%に落ち込んだ昨年末の衆院選の場合、総務省の抽出調査によると20歳代は32.58%と60歳代の68.28%の半分にも届かない。投票率の底割れを食い止める方策が問われている。

 そもそも今回の年齢引き下げは、憲法改正の手続きを定める国民投票法の改正が契機となった。改憲の是非を問う国民投票ができる年齢を確定させるにあたり、各党は18歳選挙権の2年以内の法整備で歩み寄ったいきさつがある。

 かつての普通選挙、女性参政権のように、権利拡大を求める声を踏まえて政治が動いた成果とは言い難い。このため、投票率の動向や、これを生かすための環境整備に十分、注意を払う必要がある。

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