法曹養成の柱である法科大学院の数を絞り込む法曹養成改革の見直し案を、政府が固めた。

 改革案は、法科大学院をピーク時の74校から減らして「少数精鋭」とし、修了者の7割は司法試験に受かるよう立て直すというもの。合格者数目標は「少なくても1500人程度」としている。合格率の不振が続く法科大学院は生き残れなくなる行政措置も検討するという。

 確かに、法科大学院の入学志願者は、初年度の04年の約7万2千人から、今年度約1万人に落ち込んでいる。

 金も時間もかかる法科大学院に行っても司法試験に合格するとは限らず、受かっても就職が難しいなど、将来の見通しにくさが敬遠される理由のようだ。

 法曹への社会のニーズを踏まえて合格者数を見直すことは理解できる。修了すれば司法試験を受けられる独占的な地位を考えると、法科大学院には一定の合格実績が期待されて当然だ。

 だが、法を通して公と私のあり方や大学の自治を学ぶ場が、閉校や補助金削減といった政府の圧力に常にさらされているのは好ましいことではない。加えて、合格実績ばかりを重視すれば、法科大学院の受験予備校化が避けられまい。

 そもそも法科大学院の創設は、超難関の司法試験の突破から始まる法曹養成から決別し、法律以外を学んだり、他職を経験したりした人たちを迎え、時代とともに多様になる要請に応えることだったはずだ。

 この点は、いまだ実現したとはいえない。ねらいとは逆に、法学既習者コースの入学者数が未習者コースの倍となり、主流となっている。

 すでに別の得意分野がある人をしっかり法曹に育て上げる。社会人が通える夜間・休日に指導する。こうした実践を複眼的に評価してほしい。

 この10年余進んだ改革は、「質量ともに豊かな法曹」を旗印に、司法試験を法科大学院修了後に受ける原則に改めたうえで、合格者を増やした。

 多い年で2千人以上が合格し、法曹が増えるなか、地方で「弁護士過疎」といわれた状況が改まり、費用がなくても法律相談に駆け込める拠点が各地にできる成果があった。

 それでも特殊詐欺などに巻き込まれる人、ストーカー・DV被害に悩む人は絶えない。助けがいる人に無料相談などの情報が届きにくい現実もある。

 法律家の保護でなく、市民が使える法律サービスが十分かどうかの観点から、今後の法曹人口を柔軟に考えていくべきだ。