そろばん勘定だけが先走れば、特に地方の患者に医療サービスが届きにくくならないか。ごり押しは慎むべきだ。
医療費適正化を議論する政府の専門調査会が報告書を発表した。10年後の望ましい病院ベッド数を119万床として、15万床の削減を目指すとしている。
3万床ほどある鹿児島県は全国最多、約1万床を減らす。削減率35%も全国1位だった。
医療費は年々膨張しており、40兆円の大台突破は時間の問題だ。加えて、10年後の2025年度には団塊の世代が、みな後期高齢者の仲間入りをする。
国の借金や将来世代の負担を考えれば、膨らむ一方の医療費に危機感が募るのは分かる。無駄をなくす努力は重要だ。
問題は、医療費抑制ありきが本末転倒の事態を生むとも限らないことである。
鹿児島の75歳以上の高齢者は10年後30万人近くなり、10年比で4万人以上増えるとされる。だが、政府は逆に3割超のベッド削減を迫る。果たして安心できる医療を提供できるのだろうか。
全国の医療機関に支払われた医療費は外来と調剤が5割を少し超え、入院の4割と続く。ベッド削減効果は確かに大きいが、過剰診療や「薬漬け」も見過ごせない課題のはずだ。
どうしてベッドの削減なのか。高齢者人口の急増を考えればむしろ増やすか、少なくとも現状維持ではいけないのか。納得いく説明が必要である。
全国で15万床、1割を超えるベッドを減らす根拠そのものも分かりにくい。
延べ3億人を超す患者の診療データを活用し、将来の人口動態の変化も踏まえたとして、政府は今回の都道府県別の詳細な推計結果を、「地域医療構想」に反映させる考えだ。
「推計」にすぎない数字が、目標として地方に押しつけられる。一方的にすぎるだろう。
ベッド数削減で容易に予想されるのが、入院できなくなった患者の受け皿だ。政府は介護施設や在宅医療を強化すれば、30万人程度は対応できるとはじく。
政府推計によれば、10年後の介護職員不足もちょうど30万人だ。鹿児島県も約1500人不足と推計している。
ホームヘルパーや看護師による「24時間地域巡回型サービス」が普及しない一因も、スタッフを確保できないからだった。
ベッド削減の大前提は受け皿の充実だ。医療費適正化のしわ寄せを高齢患者に強いてはならない。
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