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【政治】

アーミテージ報告なぞる日米 対中脅威論 欧州と距離 南シナ海 対応提言

アーミテージ元国務副長官

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 【ミュンヘン(ドイツ南部)=高山晶一】先進七カ国(G7)首脳会議で八日に採択された首脳宣言では、中国を念頭に、東シナ海と南シナ海での力による「現状変更の試み」への反対が盛り込まれた。安倍晋三首相の訴えが反映された形だが、一連の会談では中国の脅威に対し、同盟強化を進める日米両国の強い姿勢が際立った。

 日中関係は、安倍首相と習近平国家主席の会談実現などを受け、全般的に改善の途上にあるが、安全保障面では、日米両国と中国の利害対立はなお深刻だ。

 サミット直前の五月末にシンガポールであったアジア安全保障会議では、カーター米国防長官が岩礁埋め立て問題で会議にも参加していた中国を名指しして批判。中谷元・防衛相との日米防衛相会談では「力を背景にした現状変更の試みに反対する」と足並みをそろえた。

 こうした方向性は、米国側の意向に日本側が沿っているともいえる。米国のアーミテージ元国務副長官ら知日派グループが三年前に公表した「アーミテージ・リポート」(二〇一二年版)では、すでに南シナ海問題が取り上げられ、日米が「対策を講じるべきだ」と提言されていた。リポートは日本による集団的自衛権の行使容認も求め、安倍政権はその実現に向け、現在安全保障法案の成立を目指していることからも、その影響力が大きいことがうかがえる。

 サミットはこうした日米の中国への懸念を共有する場と位置付けられ、首相は今回、アジア・太平洋地域から遠い欧州の指導者に「中国の脅威」を理解してもらうことを狙った。

 共同宣言に盛り込まれた「現状変更を試みるいかなる一方的行動にも強く反対」するという文言は、外交政策を討議した七日の首脳会合で、首相が訴えた表現とほぼ同じだ。

 ただ、日本政府は安倍首相の主張に「多くの国が賛同した」と説明するが、中国の脅威に具体的に言及した欧州の首脳はいない。対中外交では経済関係を重視する欧州側の意識が劇的に変わったとは言えない。

 

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