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<国旗国歌要請>文科相「適切判断」迫る 国立大学長は困惑

毎日新聞 6月16日(火)20時18分配信

 下村博文・文部科学相は16日、東京都内で開かれた国立大学86校の学長を集めた会議で、入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を要請した。さらに、文科省が8日に通知した文系学部の廃止などの組織改編を進める方針についても説明し、改めて改革を促した。補助金と権限を握る文科省からの相次ぐ求めに、出席した学長らの間には困惑が広がり、一部の教員からは「大学攻撃だ」と反対の声も上がっている。

 国旗・国歌については、安倍晋三首相が4月に国会で「税金で賄われているということに鑑みれば、教育基本法にのっとり正しく実施されるべきではないか」との認識を示していた。下村文科相は16日、「各大学の自主判断」としながらも「長年の慣行により国民の間に定着していることや、(1999年8月に)国旗・国歌法が施行されたことも踏まえ、適切な判断をお願いしたい」と要請した。

 会議後の学長らは厳しい表情。琉球大の大城肇学長は「学内で問題提起しようと思うが、かなり混乱すると思う。集団的自衛権の議論や基地問題ともリンクして、大学改革とは違う所に話が飛んでいきそうな気がする」。50年の創立以来、慣例で国歌斉唱や国旗掲揚はしていない。「個人的には棚上げにしておきたい」と複雑な心境をのぞかせた。

 滋賀大の佐和隆光学長は「納税者には(国立大としての)責任を果たすべきだと思うが、国の要請に従う必要はない」と強調した。国旗掲揚はしているが、国歌斉唱はしておらず、その方針を継続する考えを示した。

 文科省によると、今春の卒業式で国旗掲揚したのは74大学、国歌斉唱は14大学だったという。

 一方で、文科省は国立大学に組織・業務の見直しを迫っている。8日の大学への通知では、人文社会科学系や教員養成系の学部の廃止や他分野への転換を求めた。国立大は中期計画(16年度から6年間)を作り、大臣の認可を受けなければならない。下村文科相はこの日「これらの学問が重要ではないと考えているわけではないが、現状のままでいいのかという観点から徹底的な見直しを断行してほしい」と理解を求めた。

 複数の学長は「交付金をもらえないと困る。今後、人文社会科学系の学部の定員は減らさざるを得ない」と話した。【三木陽介、高木香奈】

最終更新:6月17日(水)5時27分

毎日新聞