サムスンは、グループ約70社が複雑に株式を持ち合う支配構造がある。在鎔氏への世襲を進めるにあたり、グループの再編を進めようとしていたところを狙われたというわけだ。
サムスンなど多くの韓国財閥では、株式の持ち合いを通じて創業家が事実上支配している。フィナンシャル・タイムズはコラムで、こうした構造は「長く続き過ぎで、もはや時代遅れ」と指摘。「韓国ではガバナンス(企業統治)の悪用が投資家の収益を損ねている」「少数投資家はエリオットの行動を歓迎すべきだ」と、サムスン側を手厳しく批判した。
昨年5月に心臓発作で倒れた李健煕氏の後を継ぐ形で在鎔氏が2つの財団の理事長に就任するなど、ここまで順調に進めてきた世襲プランに突如吹いた逆風。本業でもスマートフォンの不振で減益基調が続くなど課題は多い。
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は「ごく一部のファミリーが財閥の全権を握り、財閥が韓国経済を牛耳っている構造が問題の背景にある。財閥の寡占を解体するしか打開策はないだろう」と指摘した。「3代目」への世襲はうまくいくのか。