流行する中東呼吸器症候群（ＭＥＲＳ（マーズ））コロナウイルスのせいか、ソウル市内がいつもより静かになった気がする。世間を騒がせる出来事があると必ず起きる大規模集会やデモも、さすがに今回はない。中国人観光客が大挙して訪れるソウル中心部の免税店の一帯からは、中国人の姿がめっきり減った。

　大勢が集まる所が敬遠されている社会現象なのだが、一方で首をかしげざるを得ないこともある。地下鉄車内では、予防のために筆者はマスクを着けるようにしている。ところが、車内で“マスク派”は少数派だ。

　平日の昼間、車内で数えてみたところ、６０人余りの乗客のうち、マスク姿は筆者を含め７人だった。偶然かもしれないが、マスク派だけが車内の一カ所に固まっている光景も見た。マスクをして軽くせき払いしただけで、マスクをしない多数派からにらまれたこともある。

　こちらは“万が一”に備えているのだ。マスクを着けない「丸腰」に偉そうにされては腑（ふ）に落ちない。むしろ、こちらが「マスクしなよ」と言いたいところだ。韓国だから、日本人だからという問題ではなく、マスク派の韓国人からも同じような体験談や意見を聞く。気分のいい話題ではないが、感染が早く沈静化することを願う。（名村隆寛）