衆院憲法審査会で安全保障関連法案を「違憲」と指摘した、憲法学者の長谷部恭男早大教授と小林節慶大名誉教授が15日、都内で会見し、政府が法案を撤回しないなら「(有権者が)選挙で(政権を)倒すべきだ」と述べ、「倒閣論」に言及した。法案の撤回もあらためて要求。政権との対立姿勢は、さながら「憲法学者の乱」の様相だ。

 長谷部氏と小林氏は、都内の日本外国特派員協会と日本記者クラブで会見。「憲法を無視した政治を行おうとする以上、独裁の始まりだ」(小林氏)と安倍政権を強く批判し、法案の撤回をあらためて求めた。

 撤回を目指す手段として、異例の「倒閣論」にも言及した。法案成立の場合、違憲訴訟が起きても最高裁判決まで時間がかかるとの指摘に、長谷部氏は「裁判所に頼りすぎるのも良くない。次の国政選挙で新しい政府を成立させ、1度成立した法案は撤回すべき」と主張。小林氏も「狂ってしまった政治は次の選挙で倒せばいい」「民主党がだらしないのは事実だが、次は連立でも、政権交代すればいい」と提案した。

 また「最高裁判決が出るまで、だいたい4年。(来年の)参院選で自民党が沈めば(首相が目指す)憲法改正はできない。その次の(衆議院)選挙で、自民党政権を倒せばいい。4年後の最高裁判決を待つより、よほど早い」とも述べた。

 弁護士資格を持つ高村正彦・自民党副総裁が「憲法の番人は最高裁。憲法学者ではない」と指摘したことで、有識者の間には、自民党への「学者軽視」(野党関係者)批判が広がる。長谷部氏は「『安全保障の知識を熟知していない』と批判を受けた。今の与党議員は、都合が良いことを言えば『専門家』、悪いことを言えば『素人』と侮蔑の言葉を投げつける」。小林氏は「首相が丁寧に説明した実感はない。質問と関係ないことをとうとうと話し、議論に応じているふりをして応じていない。天下国家をつかさどる人々の器ではない」と切り捨てた。

 小林氏は「憲法を政治家が無視しようとした時、待てと言うために学者がいる」「憲法違反がまかり通ると、憲法に従って政治を行うルールがなくなり、北朝鮮のような国になる。絶対に阻止しなければ」と訴えた。長谷部氏も「今の法案は日本の安全を危うくする。日本の安全を守りたいなら、ぜひ学者の意見を聞いてほしい」と主張した。

 ◆4日の衆院憲法審査会VTR 長谷部氏は自民党推薦、小林氏は民主党推薦の参考人として出席。法案を違憲とする理由を、長谷部氏は「従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかず、法的な安定性を大きく揺るがす。どこまで武力行使が許されるかが不明確」と指摘。小林氏は「憲法9条は、海外で軍事活動する法的資格を与えていない。集団的自衛権は、仲間の国を助けるために海外に戦争に行くこと。後方支援は日本の特殊概念で、戦場に後ろから参戦するだけの話」と述べた。維新推薦の学者も含め、3人全員が「違憲」と指摘した。