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【社会】

安保法案 各界反対 学問の名において抗議 平和の舞台守る

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 学者が、演劇人が「戦争立法」に反対の声を上げた−。異分野の学者有志でつくる会と、演劇人の団体が15日、東京都内でそれぞれ記者会見し、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする、安全保障関連法案の廃案を求める声明を出した。(安藤恭子、鈴木久美子)

 学者の会の名は「安全保障関連法案に反対する学者の会」。呼び掛け人にノーベル物理学賞の益川敏英・京大名誉教授ら六十一人が名を連ねた。文系から理系まで専門領域を超えて賛同人も集め、一週間で計二千七百三十九人の学者・研究者が賛同した。

 会見には法学や経済学を専門とする学者十人が出席=写真。呼び掛け人の佐藤学・学習院大教授(教育学)が、かつての大学の戦争協力を反省する立場から「二度と若者を戦地に送らない。学問と良識の名において、違憲な法案に抗議する」と声明を読み上げた。

 山口二郎・法政大教授(政治学)は「権力の暴走に対し、今批判を加えなくては、学問の存在理由はない」と学者の役割を指摘。教育史を専門とする堀尾輝久・東大名誉教授は「今の日本は、昭和のファシズムに向かう時期と重なる」と危機感を示した。海部宣男・国立天文台名誉教授(天文学)は「科学は、その力の大きさゆえ、平和と民主主義の実現に役立たなくてはならない。憲法の尊い精神を科学者として支持したい」と訴えた。

 市民の賛同者もこの日までに約千八百人に達し、学者と合わせ約四千五百人の署名とともに、廃案を求めて声明文を各政党に送るという。

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◆32劇団・4団体…「新劇人会議」 半世紀ぶり会見

 三十二劇団、四団体が賛同する「安保体制打破 新劇人会議」の会見には俳優座などの七人が参加。劇団民芸の田口精一さん(85)=写真(右)=は「今、法案を自身の生活にひきつけて(反対の)行動に出る若い人は少ないように思う。二度と戦争をする日本にしないよう現実から目をそらさないでと伝えたい」と訴えた。

 青年劇場の福山啓子さん(59)は「父親が自衛官の高校生が『お父さんが死ぬかもしれない』と言っていた。どんな思いで国会審議を見ているのか、胸が痛い」と強調した。

 劇団風の子の羽生田(はしょうだ)正明さん(68)は「日々子どもたちの前で公演しているが、この法案が通ると、それも無駄になる気持ちだ。安倍政権の即時退陣を求めたい」とアピールし、日本舞台芸術家組合の鈴木龍男さん(62)は「第二次大戦中は演劇人も強い抵抗ができず、結果的に戦争協力がうまれた。戦後はその反省の下に始まった。民主主義を破壊するものに強く抵抗したい」と言葉に力を込めた。

 会議は一九六〇年、日米安保闘争のさなか「独立、平和、民主主義の基礎の上に築かれる芸術」を実現しようと演劇人で発足。現在会員は約三百人。憲法九条の保持などを訴え、特定秘密保護法案にも反対の声明を出したが、記者会見をするのは発足時以来ほぼ五十年ぶり。「非常に危機感が強い」と事務局は話す。

 会議の声明は、法案を「『戦争参加』を可能にする立法だ」と位置付け、即時廃案を求めている。

 

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