安保関連法案:長谷部と小林両氏、政府・与党を厳しく批判
毎日新聞 2015年06月15日 21時22分(最終更新 06月15日 23時52分)
◇憲法審で「違憲」表明に続き日本記者クラブで記者会見
衆院憲法審査会で安全保障関連法案を「違憲」と表明した長谷部恭男早稲田大大学院教授と小林節慶応大名誉教授が15日、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見した。長谷部氏は、1959年の最高裁砂川事件判決が「集団的自衛権を排除していない」と政府・与党が主張していることを「法律学の基本原則と衝突する考え方」と厳しく批判。「数多くの重大といえる欠陥を含む法案を直ちに撤回すべきだ」と訴えた。
長谷部氏は、砂川判決で問われたのは「日米安全保障条約の合憲性であり、日本が集団的自衛権を行使するか否かは全く争点になっていない」と強調。集団的自衛権の行使を限定的に容認した昨年7月の閣議決定について「個別的自衛権のみ憲法上認められるという従来の政府見解の論拠に基づき、集団的自衛権行使も限定的に認められるかのようにみせかけようとするもの」と批判した。
小林氏も安保関連法案について「法的には憲法9条に違反する海外派兵法だ」と主張した。
自民党の高村正彦副総裁が「安全保障政策のような高度に政治的な問題については、国会と内閣に委ねると最高裁は言っている」と主張していることに対して、長谷部氏は「最高裁が違憲と言わないからといって、政治が違憲の法律を作ってよいことにはならない」と反論。小林氏も「判決文の引用が珍妙だ」と指摘した。
憲法審査会での長谷部氏らの発言が注目されたため、与党からは「憲法学者は安全保障の専門的知識がない」などと沈静化を図る声が相次いでいる。これに対し、長谷部氏は自身がかつて国会で特定秘密保護法に賛成意見を述べたことを紹介し、「自民党は、安全保障に不可欠な(秘密保護)法案の参考人として、私のような安全保障の素人を呼んだことになる。明らかな人選ミスだ」と皮肉を交えて切り返した。
小林氏も「今の自民党は意見が違うと怒る人が多い」と述べ、「首相は丁寧に説明するというが、丁寧な説明をされた実感はない」と強調した。【高橋克哉、田中裕之】