発達障害特性の一つとして「想像力の欠如」があります。
この特性は、日常生活や社会生活の様々な場面で、本人の困り事を増やす原因になりがちです。
長女は、5歳10カ月に受けた発達検査から、左右等の認識力が3〜4歳程度と劣っていることがわかっており、「見えないもののイメージをすることが苦手。つまり、想像力が乏しく、曖昧なものに対する認識が弱い」ことがわかっています。
さらに、長女は、自分に見えている情報(人の表情等)から、想像力を働かせることも困難があるようです。
全裸をお友達に見せてふざけるの巻
先日、担当保育士から、次のような報告を受けました。
保育園では、給食が終わった子から、お昼寝に備えて、パジャマへ着替えます。その際、長女が全裸のまま、お友達の前でふざけてまわるという行為を連日行っているとのことでした。
長女は、年長で来年には1年生です。
体格も、体重は18キロを越え、幼児体型から脱却しつつあり、去年までは温泉へ行くと、夫と男風呂へ行くこともありましたが、年長になってから男風呂へ入らせることはやめました。
にも関わらず、長女が、お友達(クラスの大半は男児)の前で、自分の裸を見せることについて、全くためらいがなく、恥ずかしさを持たないという現実を突きつけられた訳です。
プライベートゾーン
私は長女に「プライベートゾーン」という概念を伝える方法で、長女に人前で裸になっていはいけない理由を伝えることにしました。
まず、長女に水着を着た男女の絵を描かせ、この絵を利用して話を進めました。
長女は視覚認知が強く、長女自身で描いた絵を説明に利用したほうが記憶に強く残ると思ったからです。
まず、長女に、実際に体を動かしたり、さわったりさせて、体のいろいろな部分に気づいてもらったうえで、次の説明をしました。
- 体のどの部分も大切な働きをしていること。
- 上記の絵を示し、水着に隠れている部分は「プライベートゾーン」であること。
- 「プライベートゾーン」は、柔らかくて傷つきやすいところであり、将来赤ちゃんが産まれるのに関係のある部分なので、特に大切にしなければならないこと。
- 自分の体を大切にするためには、やたらに人に見せたり、さわらせたりしてはいけないこと。
- 自分の体と同じように友達の体も大切にするべきであり、見せろと言ったり、たたいたり、けったりしてはいけないこと。
長女は、既に担当保育士からも人前で真っ裸になってはいけないことについて、説明を受けていたせいか、神妙に話を聞いていました。
しかし、長女に「プライベートゾーン」の大切することについて一度でインプットさせることは難しいことから、今後も経験を通して、繰り返し伝えていくつもりです。
長女には、経験や体験を積み重ねていくごとに、それを記憶にインプットする支援をし、データ化された記憶から、長女が適切な対応・行動を予測し、実践できるよう導く必要があります。
なお、上記「プライベートゾーン」に関する指導は、次の資料を参考にしました。
「男女共同参画啓発教材 小学生 ( 低学年 ) 対象 活用手引書 だいじなわたし」
http://www.pref.saga.lg.jp/web/var/rev0/0107/1946/2012822155156.pdf
想像力の欠如から、他人の気持ちがわからない
長女が、保育園で真っ裸でふざけ回った件について、長女が通う療育機関の心理士に相談したところ、次のように言われました。
長女が恥ずかしいという気持ちを持つためには「他人の気持ち」を想像する力が必要であるところ、長女は「想像力の欠如」という特性持ち。
「人に自分をどうみられるか、どう思われるか」ということを想像はできない。
また、長女は自身の行動に関わる自身の気持ちも理解できていないだろう。
そのため、現段階では、人前で裸になる行為について「恥ずかしい行為はしてはならない」という説明は通じないため、「この行為は人前でしてはいけないルールになっている」と繰り返し説明する必要がある。
確かに、他人の気持ちがわかり、自分を客観視できなければ、自分の行いについて「恥ずかしい」という気持ちは生まれにくいでしょう。
今回の場合、長女は周囲のお友達から、裸であることについて騒がれたそうですが、これが「恥ずかしい行い」をしていることに由来していることが長女には想像できなかったのでしょう。
ところで、子どもの場合、メタ認知(人間が自己を認識する場合において,自己の思考そのものや行動そのものを対象として把握し認識すること)は一般に10歳前後からつくと言われていますが、
「想像力の欠如」という特性がある場合に、、メタ認知は自然と発達しないのではないか?という疑問が生まれました。
これまでは、メタ認知がつけば、人より遅れている社会性の獲得が、ある程度追いつくかもしれないと考えていましたが、長女の場合、メタ認知の獲得が定型者のように自然に発達せず、経験等を記憶にインプットする作業を行い、そこから予測ができるようになる程度にデータを蓄積するという課程を経なければメタ認知はつきにくいのかもしれません。
ミラーニューロン
「ミラーニューロン」→猿で発見された、他者の行動を見たときにも自分が行動しているかのような反応を示す脳神経細胞。
京都大学の研究によると、脳の下前頭回という部位には、他者の運動と自分の運動を結び付ける「ミラーニューロン」があるといわれており、実験の結果、自閉症スペクトラム障害の人は、他者の動的表情を見たとき、自動的に共鳴応答するミラーニューロンがうまく機能していないことが示唆されたそうです。
そのため、自閉症スペクトラム障害の人は相手の表情を見て行うコミュニケーションに問題が生じやすいそうです。
自閉症スペクトラム障害でミラーニューロン回路の不全 — 京都大学
ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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このニューロンの回路の不全=他人の気持ちがわからない
ということも考えられそうです。
長女は、何度も同じことを繰り返し尋ねたり、話したりすることが多く、内容によってはこちらも返答に疲れてきます。
それを、長女へ伝えるのですが、なかなかやめてくれず、多少イライラしてくるのですが、全く長女は気にしません。
長女なりの考えや発達障害の特性に由来することもあるでしょう。
しかし、ニューロンの回路の不全により、相手の表情を見て行うコミュニケーションが苦手とするのであれば、長女がこちらの苛立ちに全く気づいていないこともあり得ます。
これについては、まだ知識が不十分なため、今後勉強します。
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長女の「想像力の欠如」からくる問題は、これから、どんどん増えていくでしょう。
けれども、長女の特性を考えれば、今、長女は体験・経験のデータを記憶にどんどんインプットし、データ化された記憶から、適切な対応・行動を予測し、実践できるように鍛錬する時期なのです。
問題が起きてもそれを、長女の記憶にデータ化し今後に生かすことが重要です。
それを忘れず、長女を支えなければなりません。がんばろう。