こだわりの部屋は、まず家具から。例えば芸術品とも言われる名作、建築の巨匠たちがデザインした家具を、お部屋に一つ置いてみることを想像してみましょう。デザインの都合で量産の難しいものが多く、高価ではありますが、その存在感は抜群です。一点あるだけで、部屋の印象のみならず、生活スタイルまで変化しそう。
今回は、20世紀初頭に活躍した建築家たちがデザインした家具の中から厳選したものをご紹介します。
なぜ建築家たちは家具をデザインするのか?
ヤコブセンが建物だけでなく、家具や照明などすべてを手がけた、コペンハーベンの「ラディソンSASロイヤルホテル」
photo by fhwrdh
建築家が、なぜ家具までデザインしてしまうのか。彼らがそれぞれ「家具はどうあるべきか」を建築家の視点で考えたからだと言えるでしょう。モダニズムの時代の建築家たちが生み出した家具には、後世の模範となることから文化的価値もあります。
中でもアルネ・ヤコブセンは、建築環境全体を設計することを目指し、家具だけにとどまらず、カトラリーから照明、ファブリックまでデザインを行っています。上の「ラディソンSASロイヤルホテル」や「オーフス市庁舎」がその代表作です。
デザインだけじゃない、巨匠たちがこだわったものとは?
モダニズム建築の巨匠たちは「新しい素材」にこだわったと言います。例えば、コルビュジエは最先端の金属やアルミニウムの素材の加工技術を家具に応用し、芸術作品ではないより機能的な家具を作ることに成功しました。1964年に世界で初めてプラスチックのみで作られた椅子を手がけたのもドイツの建築家ヘルムート・ベッツナーでした。
それでは、当時の最新の素材と技術を駆使して作られた家具10選をご紹介したいと思います。
LC4 シェーズロング(ル・コルビュジエ)
出典:www.fondationlecorbusier.fr
1929年のサロン・ドートンヌで発表された、コルビュジエの代表作シェーズロング。コルビュジエ自身が「休養のための機械」と呼ひ、発明品とも評されています。しかし実際のデザイナーは、コルビュジェ事務所の当時新人だったシャルロット・ペリアンで、コルビュジエ事務所で進めていたチャーチ邸のためにデザインされた家具と言われています。今でも変わらぬモダンさと美しい独創性を備えたチェアです。
オフィシャルサイト:www.fondationlecorbusier.fr
バルセロナコーヒーテーブル(ミース・ファン・デル・ローエ)
ドイツ出身の20世紀モダニズム建築を代表する建築家 ミース・ファン・デル・ローエが、チェコのブルーノにあるチュゲンダート邸のためにデザインしたテーブル。脚部は古代ローマ時代の力の象徴である「ハサミ」をモチーフにしています。天板にはグリーンを帯びた厚さ約12mmのガラスが用いられており、シンプルながら美しいテーブルです。
オフィシャルサイト:www.miessociety.org
ビベンダムチェア(アイリーン・グレイ)
芸術一家に生まれたアイリーン・グレイが生み出した、ビベンダムチェア。女性の視点で新たな物創りを目指した彼女は、日本で漆工芸を習得するなど、とても研究熱心なことで知られています。コルビュジエとは対照的な美しい曲線、柔らかでふっくらと丸みを帯びた肌触り、どれをとっても女性らしい多面性を見事に表現しているチェアです。
オフィシャルサイト:www.eileengray.co.uk
アルコランプ(アッキーレ&ピエル・ジャコモ・カスティリオーニ)
出典:www.facebook.com/pages/Studio-Museo-Achille-Castiglioni/208392335887429
建築家、デザイナーとして、家具・照明など幅広い分野で活躍したカスティリオーニ兄弟が、1962年に発表した代表的なプロダクト「アルコランプ」。大理石をベースにして、ステンレスのアームが美しいアーチ(アルコ)を描いています。独特な素材の組み合わせがそれぞれの魅力を最大限に活かしています。
オフィシャルサイト:www.achillecastiglioni.it
アントニーチェア(ジャン・プルーヴェ)
建築生産の工業化に大きな役割を果たしたフランスの建築家兼デザイナーのジャン・プルーヴェは、実は建築家の資格は持っていなかったとも言われています。この「アントニーチェア」は、1954年にパリ近郊アントニー大学都市のキャンパスのためにデザインされました。L字型のスチールフレームから座面を少し浮かせることでクッション性を確保するなど、機能的にも優れたチェアです。優雅なフォルムが特徴で、コレクターが魅了され続けている逸品。
オフィシャルサイト:www.vitra.com/fr-fr/product/standard
コーヒーテーブル(イサム・ノグチ)
彫刻家で、インテリアデザイン、建築の分野でも活躍したミッドセンチュリーを代表する日系アメリカ人、イサム・ノグチの代表作「コーヒーテーブル」。なめらかなフォルムのガラスを支える脚部のデザインが美しく、シンプルな傑作です。「妹への誕生日プレゼントだった」「原型はNY美術館初代会長の自邸のために作られた」など、その由来にさまざまな説があるプロダクト。見ていて飽きない普遍的な美しさを持っています。
オフィシャルサイト:www.noguchi.org
LTR ミニテーブル(チャールズ&レイ・イームズ)
日本の影響を強く受けたイームズ夫妻が自宅で使うためにデザインした小さなテーブル。夫妻が自邸にイサム・ノグチや山口淑子を招いたホームパーティで、すき焼きをふるまった時に使用したエピソードが有名です。 日本の「お膳」の大きさを意識したミニマルなサイズ感。コーヒーテーブルとしても、パソコンデスクとしても便利に使えるサイズです。
オフィシャルサイト:www.eamesoffice.com
サイドボード(フィン・ユール)
建築家でありながら、家具・テーブルウェア・照明・旅客機の内装デザインなどで幅広く活躍したフィン・ユール。このサイドボードの特徴は、収納部分の大きさに対してスリムな脚部、まるで宙に浮いているような美しいデザインです。引き戸や内部の引き出しのビビッドな色使いがフィン・ユールらしい特徴です。
オフィシャルサイト:www.finnjuhl.com
ボールクロック(ジョージ・ネルソン)
出典:www.georgenelsonfoundation.org
ミッドセンチュリーを代表するデザイナー、ジョージ・ネルソン。名門イェール大学卒業後、建築事務所を設立するとともに、建築雑誌の編集長も務めました。当時無名だったイームズ夫妻の才能を見出したことでも有名です。50年代にデザインした「ボールクロック」は、発表と同時に大成功。その遊び心あふれる形や色使いは、今なお新鮮で、私たちを魅了し続けています。
オフィシャルサイト:www.georgenelsonfoundation.org
パントン・チェア(ヴェルナー・パントン)
photo by lartnouveauenfrance
20世紀の名建築のひとつに数えられる「カードボードハウス」を設計した建築家、ヴェルナー・パントン。彼の代表作はプラスチック一体成型で作られた「パントン・チェア」。独特のフォルム、美しいカーブを持つこのチェアは、純粋に椅子として機能するのみならず、オブジェとしても魅力的です。構想から商品化まで10年もの歳月が費やされたのだとか。スタッキングもできる実用的な製品です。
オフィシャルサイト:www.vernerpanton.com
名作が持つ普遍的な美しさに魅了される。
いかがでしたか? 曲線や直線の美しさだけでなく、機能性をも併せ持つ逸品が揃いました。建築家の目線から作り出された家具は、シンプルなデザインのものが多く、和室・洋室を問わず日本の家にもフィットします。当時のオリジナルを入手するのは難しいかもしれませんが、質の高いリプロダクト商品・ジェネリック家具であれば比較的安価に購入することが可能です。一つでも気に入ったものが見つかったら、「その家具が似合うお部屋」を目指して、長い目でインテリアを揃えていくのも良いかもしれませんね。
