6月第2週、中国と米国の長い商業的ダンスが目覚ましい節目を迎えた。電子商取引大手アリババ集団の創業者、ジャック・マー(馬雲)氏がニューヨーク・エコノミック・クラブで講演し、その場を利用して、アリババがあまりに急成長を遂げているため「今年、我々(アリババ)はウォルマートより大きくなる可能性がある」と明かしたのだ。
米国人の聴衆は、予想に反し、恐怖でたじろぐことはなかった。むしろ、マー氏のスピーチを感動的だと喝采した。なぜか。マー氏はアリババに抱く壮大な野望を説明しながら、世界貿易がいかに、米国人を含むすべての人に輝かしい未来を開き得るかという驚くほどカリスマ的な夢も描いたからだ。
「今から10年後、(中国には)中産階級の人が5億人いる」と同氏は述べた。「(彼らは)米国(製品)に飢えている――我々は、米国の小さな企業が中国へ行き、モノを売るのを手助けする」
PRとしては、スピーチは見事だった。結局のところ、マー氏はできる限り多くの人を説得して、売買のために彼のプラットフォームを利用してもらいたがっており、数年内に、アリババが中国国外から得る売上高の比率を現在の2%から40%へと引き上げることを期待しているからだ。
たとえ企業のPR戦術のように見えたとしても、このスピーチを一蹴してはならない。米議会下院は、バラク・オバマ大統領に環太平洋経済連携協定(TPP)などの通商協定を遂行する権限を与える貿易促進権限(TPA、通称ファストトラック)法案を承認すべきか否かについて採決を行う用意を進めている。マー氏のスピーチで最も際立ったことは、それが貿易の未来について、強烈に、かつ臆面もなく楽観的だったことだ。
■マー氏講演の3つのポイント
マー氏は、貿易に関するワシントンの論調の多くが、いかに受け身で否定的な傾向にあるかを浮き彫りにした。別の言い方をするなら、もしオバマ氏が――TPPや別の案件に関して――今後数カ月間で貿易を受け入れるメリットについて有権者を説得したいのであれば、マー氏がやったことを参考にするのも悪くないだろう。
少なくとも3つ、留意すべきポイントがある。一つは、貿易という考えを米国の聴衆に売り込むためには、世界の中産階級について語る必要があるということだ。コンサルティング会社のアーンスト・アンド・ヤングの試算によれば、新興国市場には5億人以上の中産階級の消費者がおり、その数は今後20年でさらに30億人増える見込みだという。シンクタンクのブルッキングス研究所は、世界の中産階級の消費者に占める米国人の割合が2050年に6%になり、現在の18%から低下すると見ている。
また、新興国市場は過去20年間に(工業生産の源として欧米諸国と競争することで)供給ショックをもたらしたが、今度は(潜在的に米国製品を買うことで)需要ショックを提供する可能性がある。
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