韓国は、セウォル号の沈没と繰り返される大型事故、そして今回は中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの拡散を目の当たりにしたことで、日々の安全がわれわれの生活の質の向上にどれほど大きな影響を及ぼすかということを再び理解するようになった。こうした事故に遭遇する恐れがあるし、伝染病に感染する恐れがあるといった不安を抱くだけで、生活の質は大きく低下する。生活上の安全や公共秩序、美しい環境のように目に見えず市場で売ったり買ったりすることもできないが、われわれの生活の質に大きな影響を及ぼすこうした「財貨」を、経済学では公共財という。公共財の最大の特徴は、公共財が提供する効用の価値を全ての国民が共有できるという点だ。効率的な消防や防災、緊急救助システムや防疫システムが稼働していれば、ほとんどの国民はこうしたサービスの恵沢を目で確認しないにしても、良質の公共サービスが生活の中に存在するという事実だけで、国民の生活の質は向上する。よく整備された社会基盤施設と大衆交通網、生活上のサービス施設、公教育システム、美しい環境も、全国民が共同で恩恵を受けることができる公共財だ。
緊急救助サービスと同じく国民が生活の中で経験するかもしれない失業、災害、疾病など各種の脅威や不安材料についても安全網を構築すれば、その恩恵は一部の国民だけが受けることになるが、全国民の生活の質は大きく向上するだろう。こうした生活上の安全や基盤施設といった公共財こそが、少ない費用で老若男女、貧富貴賎の差別なしにすべての国民に恵沢が行く届く普遍的な福祉商品となる。
一人当たりの国民所得がわれわれよりもはるかに高い先進国の個人消費水準を見ると、われわれよりも低いか、むしろ慎ましいといった印象を受ける。それは、先進国の国民総所得のうち、かなりの部分がこうした良質の公共財を購入するのに充てられているためだ。その結果、先進国の個人消費水準に比べて実質的生活水準や満足度は、われわれよりもはるかに高いのだ。しかし、こうした公共財は分かち合い式の福祉とは区別されなければならない。