【コラム】観客をしかる俳優

 舞台『観客冒涜(ぼうとく)』などのように演技ではなく、実際に舞台上の俳優が観客をしかる状況が発生したらどうなるのだろうか。そんなことが少し前、首都圏の舞台で実際に起こった。舞台公演を終えた有名俳優A氏がカーテンコールの時、せきを切ったように客席に向かって、それまで我慢していた言葉を発した。「皆さんは良い公演を見にいらっしゃったんですよね? でも、今日のようなことをしていたら、そういう公演はできません。どうか携帯電話の電源は切ってください」。頻繁に鳴り響く携帯電話の着信音・マナーモードの振動・届いたメールやメッセージを見ようとして光るスマートフォンの明かり、ひどい場合はかかってきた電話に出て話す声…。これらはすべての公演の敵だ。ある中堅俳優は「上演中、落ち着きなく着信音が鳴り響いて通話が終われば、芝居の4大要素のうち残るのは舞台だけで、戯曲・俳優・観客はすべて台無しになる」と訴えた。

 最近、舞台界で最も大きな問題になっているのは「クァンク」だ。「クァンク」というのは「観客クリティカル(critical)」を省略した新語で、「ほかの観客の鑑賞を妨害する行為」のことだ。携帯電話の音だけでなく、音を立てて物を食べたり、きついにおいを漂わせたり、隣の人としゃべり続けたり、帽子を脱がずに視界の邪魔になったりというのが「クァンク」だ。公演鑑賞経験の少ない中高年層や若い学生たちに特に多い。自宅でテレビを見るような態度でいすに座って腕を掛け、ボリボリ体をかきむしったり、いびきをかいて居眠りする客も目に付く。

 国民の文化水準が徐々に高くなろうとしている過程では、まだ他人への思いやりが十分成熟していないこともあるので理解できる。だが、「クァンク」は、本人が気付いていない状況でも起こる。今年初め、あるミュージカルを鑑賞した。それから数日後、さまざまな状況から見てその日に記者の後ろの席に座っていたと推定される観客が書いた文章をインターネット上で発見した。「前に座った男性の頭が大きくて鑑賞の邪魔だった。どうして目の前であんなにじっとしているんだろう」というものだった。それ以来、客席に座った時に姿勢をできるだけ低くする習慣が付いた。

 「クァンク」はチケット代を払って入場する会場内だけの話だろうか。脇道に入ると散らばっているタバコの吸い殻、ベンチや塀の上に設置されたオブジェのような紙コップ、週末の午後になると街のあちこちに山のように積まれているゴミは、大都市という巨大な空間を税金を払って利用しているほかの大勢の市民にとって「クァンク」以外の何者でもない。

 さらに大きな問題は、他人の被害に気が付かなかったという言い訳が通じるはずもない「大型クァンク」だ。自分の政治的・宗教的信念を途方もなく高い音量で訴え、時には車道を占拠して交通を妨げる行為だ。集会やデモが頻繁に行われるソウル市中区の車の平均速度は時速21.1キロメートルと、ソウル市内の平均より4.6キロメートルも遅いという統計もある。他人の交通を妨害しなければ集会やデモの自由が成立しないのだろうか。朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が先日、「ソウルの良い所は、そうした(座り込みができるような)無限の自由を享受することではないか」と言ったが、それが「クァンクの無限の自由」を意味することでないと願うばかりだ。マナーは劇場の外でも守られなければならない。

文化部=兪碩在(ユ・ソクチェ)次長
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • ▲文化部=兪碩在(ユ・ソクチェ)次長

right

関連ニュース