3・11で露になったこの国の弱さと闇。あんなに悔やんで反省したのに、4年かけても何も変えられないどころか、忘れかけてさえいた。そんな日本人を正気に戻したのは、やはり地震だった。
久々のパニックで気付いた
あの日と同じ、よく晴れた午後だった。
つくば駅を14時少し前に出たつくばエクスプレスが、荒川を渡って北千住駅に滑り込もうとしたとき、乗客の携帯電話とスマホが一斉に鳴った。ギュイイ、ギュイイと小刻みに抉るようなバイブレーション。当然、電話やメールの着信ではない。
「緊急地震速報が発令されましたため、車両を一時停止いたします」
アナウンスで、にわかに車内が騒然となる。茨城県の筑波研究学園都市と都心の秋葉原を結ぶつくばエクスプレスには、外国人の乗客も多い。しかし、周囲の携帯がなぜ一斉に鳴ったのか、なぜ電車が緊急停止したのか彼らに分かるはずもない。パニックに陥って口々に「オーマイゴッド」「ホワイ?」「ホワッツハプニン?」と繰り返し、不安げな目で辺りの日本人乗客に詰め寄るのだった。
同じ頃、都内に住む酒井マリさん(仮名・28歳)は、ベッドごと下から突き上げるような揺れに飛び起きた。「地震だ—」と思う間もなく、揺れが横方向に切り替わる。電灯の紐が振れ、ガタガタと窓ガラスが鳴る。
銀座の飲食店に勤める酒井さんが起き出すのは、たいてい15時前だ。とっさに点けたテレビには「ミヤネ屋」が映し出された。しかし、どうも様子がおかしい。司会の宮根誠司は、何事もなかったかのように殺人事件の解説を続けている。
酒井さんは揺れる部屋に立ち、画面の中の揺れないスタジオを見ながら「こんなに揺れてるのに、どうして地震のことやってないのよ!」と一人激怒した。「ミヤネ屋」が大阪のよみうりテレビ制作だということに思いが至らないほど、彼女は動転していたのである。
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