裾花本谷は、毎日裾花川が長野市内で犀川に合流していることろを見ている私にとって、是非行ってみたいところであった。それを実現してきた。しかし楽しいというか、ハードというか、強敵の谷であった。しかしその分、美しさは素晴らしい。・・・が、残念なことに写真をとる余裕があまり無かった。ゴルジェの突破に労力を使って写真どころでは無いのである。・・・一不動のコルに抜ける予定であったが、九頭龍山方面に行ってしまい最後の最後でまたしても難儀した。
裾花本谷出合(奥裾花自然園近く)〜小清水沢出合〜下部ゴルジェ〜幕営地〜上部ゴルジェ〜一不動沢出合〜(失敗して九頭龍山付近の1860m地点)〜一不動〜戸隠牧場

裾花本谷遡行記録
23日、24日はこの夏初めての天気に恵まれる土日の様である。太田さんと塚田で、犀川水系の支流、裾花川の本谷を遡行してみた。
23日、午前4時30分に遡行の最終下山地点である戸隠牧場駐車場に集合する。ここで塚田の車をデポして入渓点である鬼無里村の奥裾花自然園手前の濁川との出合付近の林道に太田車で行く。6時前、到着すると早速アブの大群が車を襲ってきた。このアブの中を行くのかと思うと気が重くなる。どうも最近の天気で遅れていたアブの発生が一気に進んだ様である。どうして車に寄ってくるのかは不明である。朝食をとって出発準備のため、車を降りるがアブ達はあまり寄り付かない。不思議だが良かった良かったと胸をなでおろした。6時30分入渓する。林道から木曾殿アブキまでは踏み後がある。この道を行くと、ちょうど濁沢との合流地点に吊橋がかかってる。濁沢は言葉どおり濁り、裾花本谷は澄み切っている。左岸の踏み跡ですぐに大きな岩の張り出しをもった木曾殿アブキに着く。ここから沢に入り、遡行開始となる。平凡な河原の流れを何度も渡渉をしながら進む。途中何箇所かに朽ちた吊橋の残骸が残っている。以前登山道でもあった名残の様である。左岸から一の沢、トクノ沢が合流する。水量は大したことの無い沢であった。さらに行くと右岸から小清水谷が合流する。ここまで出合から1時間程度である。

さらに平凡な河原を行くと、だんだん谷幅は狭まり、西岳沢が左岸より合流するといよいよ下部ゴルジェの様相となってくる。・・・しかし、F1〜F4までの記憶が全く無い。大したことは無かったのであろうと思われる。F4を過ぎると谷は一気に狭まり、最狭部になる。(写真は最狭部手前で偵察する太田さん)ここは流れの速い淵が20m程度続き、この先は10m程度岩の刻まれた溝に一気に流れが通る激流スラロームとなっている。ここで初めてザイルを出す。先ずは塚田が淵の右岸を泳ぐつもりで水に入るが意外に足が立つ。右岸をへつりながら進み、激流スラローム部分も右岸の岩棚をうまく使い進む。最後の抜ける部分は流れを跨いで越えることができた。淵の入り口から出口まで30mを越える。塚田のザックをザイルで引き上げをするものの激流スラロームの最後の段差部分でどうしても上げることができない。
激流の水圧のためザックは中まで濡れ濡れになってしまった。太田さんは一応ザイルをつけここを越えてきた。結果的にみればそんな大したことは無かった。
すこし行くと右岸から滝となって地獄沢が出会い、本谷は出合部分で連瀑となっていかにも手ごわい感じである。ここは塚田が左岸を地獄谷の流れに向かいへつり、白濁する流れの向こうにある岩棚に乗り上げようとするが、流れに戻されてしまう
(写真は流れに逆らいなんとか取り付こうとする塚田)。何度もチャレンジするがどうしても流されてしまう。地獄谷の滝の下をくぐって向こうに行けるかも、と思いつつもちょっと危険すぎる。
検討の結果、太田さんが右岸の釜の縁から側壁に登り、微妙なバランスで地獄谷の流れ込み向こうの岩棚に達した。塚田はザイルで引いてもらい流れの中から岩棚に這い登ることができた。さらに連瀑の谷を越えるため、ザイルで確保しながら太田さんが右岸側壁を越える。ここは落ちると7m程度下の白濁した流れの中となってしまう。塚田がザイル確保してもらいここを越える。足場はまあまあ良い方であるが、片傾斜のぬるぬる岩や土砂がのっている部分があり、慎重に通過しなくてはなせらない。(写真は側壁通過中の塚田)
後ろを振り返ると本谷の激流の向こうに地獄谷の激流が見えて、すごいところに来てしまった、と言う感じである。(写真は地獄谷出合を本谷上流より) ゴルジェのど真ん中という感じである。地獄谷出合は連瀑帯なのでカメラにも露がついてしまう。
この先にゴルジェの中と言えども日が差し込む場所があり、しばし休憩した。太田さんは生態調査のため、竿を出すものの当りは無かった。岩魚はまだ見かけていない。十分休憩をとった後、出発すると最難関と思っていたF9オーバハングの滝に出合う。十分観察するが、なるほどハングしている右岸からしか越えられそうもない。ここは岩登りに長けている大田さんに任せる。釜の右岸の傾斜のあまり無い側壁をたどり、滝の右岸直下の岩棚にでる。・・・しかしその側壁にはなんとヘビがいて、先に進めない状況。太田さんのバンドがそのヘビのため一本失うことになってしまった。いよいよハングの乗り越えである。ここはハーケンが一本打ってある。太田さんが空身で登り、ハーケンのテープを持ち、滝の水流の向こう側にある岩角を右手に掴み、滝上に這い上がることができた。(写真はF9ハング滝をどないして登るか検討中の太田さん)
続いて塚田だが、太田さんと違い身長が足りない。何度かトライするもののダメである。上からアブミを出してもらいアプミを掴んでて強引にハングを這い上がった。這い上がった瞬間にアブミが下の岩棚に落ちてしまった、、、、再度太田さんが下降して回収し、また同じルートで登り返した。しかし、時間(1時間)と筋肉を大量に使ってしまった。ほんと疲れた滝越えとなった。(F9を滝上から見下ろす)

このF9を越えると、小さな倒木のかかった滝があり、ここで下部ゴルジェから抜け出し、明るい広々とした沢になる。しばらく時計を見る余裕が無かったが11時30分を過ぎていた。のんびり行くと左岸より小さな沢が2つ入り込む。本院岳とマイナーピークからの沢である。ここを過ぎしばらく行くと、右岸に快適な天幕場があった。焚き火の跡もあり、裾花本谷でもっとも快適な天幕場の様なので、少々早いがここで今日は幕営することとした。しかし、結構ここを利用する人が多いようで、焚き火の材料が乏しいのが難点である。濡れた荷物を出して乾かすことにする。焚き火の材料も少し上流から集めてきて一晩はもちそうな量が確保できた。行水したりしてのんびりと過ごした。夜は焚き火を囲み、至福の時を過ごした。

翌朝は4時起床、天気も昨日に続き良い。6時30分出発する。ジャブジャブと行くと左岸より30m程度の美しい滝となってキレット沢が合流する。ちょっと素晴らしすぎる景色で、しばし感動してしまう。太田さんが釜に期待をこめて偵察に入っていく。落ち口は直径10m程度の円形の釜ができている。(キレット沢の美しい滝を観察する太田さん)

塚田もひょっとしたら、と思うものの、残念。しかしここは美しいところである。なごり惜しいが先をいそぐ。なお、ここは直登は無理。右岸を高巻くのが良いようである。(こちにもキレット沢の美しい滝を観察する塚田)
沢はだんだん滑が現れてくる。幅も徐々に狭まり、上部ゴルジェの様相となってくる。両脇が断崖絶壁となり、一段と沢幅が狭まるとF1奥魚止の滝である。大きな釜をもった滝である。
ここは滝の中段に棚がある。まずはこの棚に這い上がることとする。朝一番の泳ぎは辛いが、塚田が先行で釜の水に浸る。釜の右岸の岩をひろいながら泳ぎ、滝の中段の棚に先ずは這い登る作戦でいく。塚田が空身で朝の流れの中に入る。冷たい。が、足がつく。なんだ泳ぎではなくても良いではないか、、、結局へつって行き、棚に登る。ザックをザイルで回収し、太田さんが来る。ここからは太田さんが先。
(上部ゴルジェF1の滝)
太田さんが右岸のホールドをうまく掴み、少々右移動して滝上にでる。結構登り易い様である。一応ザイル確保してもらい塚田が次に這い上がる。途中右のホールドをとるため少しだけ右移動したいのだが、足場も適当なホールトも無く、少しだけやっかいであった。上部ゴルジェではこの滝が一番やっかいなので後は以外に気が楽である。(ザイルには助けてもらいました。F1滝上の塚田)
次から次と滝が現れるが、右から左からと越えていく。途中ザイルを使った部分もあったが下部ゴルジェのF9や上部ゴルジェのF1ほども悪く無いので安心である。上部ゴルジェの中で左岸から九頭龍沢が入り込む。この左岸台地もテント適地と言うことだったが、そんなに適地とは思えなかった。流れは徐々に細くなっていく。(写真はF1の滝上の太田さん)
滑滝っぽい滝を越えるとどうやら上部ゴルジェも終わった様で、左右は樹林帯となっていく。しばらく行くと、本谷は流木だらけになり、流木の中に流れがある感じである。そうこうしていると谷は開け、一不動沢との出合となる。ここにもテント場がいくつかある。ちょうど大きな枯れ立ち木に目印がついていた。正面には縦走路がある稜線が見えている。ここで大休止をとって最後の登りとなる、一不動ルートの概要を確認しておく。(写真は上部ゴルジェの中の気軽な滝、適当に登る)
さぁ谷とも分かれて登りである。最初は小沢を進め、適当なところから右へ右へと入っていく。途中踏み跡を見つけて行くが、、、どうやらこれがミスだったようである。踏み跡は笹ヤブに中に消えて行き、我々は適当に進むことになってしまった。結果、一不動よりかなり右手に入り込んでしまい、大変な苦労の末、九頭龍山の北の1860m地点の縦走路にスリキズを作りながら出た。参った。最後の詰めが失敗である。
一不動で休憩し、戸隠牧場でビールで乾杯し、鬼無里で温泉に入り、今回の山行を終了した。
しかし、裾花本谷遡行は素晴らしい思い出となること間違えなしの花○の谷であった。
(写真は戸隠縦走路からの高妻山)

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裾花本谷


歩行:超ハード        メンバー:太田、塚田
場所:北信         記 録 日:2003年8月23,24日