ガブリンチョ
日本全国の小学校が全て同じではないと思うが 私の街の小学校の特別支援級は 知的障害児学級と位置づけて 社会福祉的な知的障害者ではなくても(愛の手帳の有無は関係なし) 小学校の中で 教育委員会さんとのやりとりで自分の子供が知的障害ありと認める書類にサインすれば移籍できる。 養護学校の知的障害学級は愛の手帳が入学の要件である。
クラスメイトの個人情報は守られ 他所の子の事情は知らない。 でも娘にかみついたお友達が ダウン症であるのは顔を見れば明らかだった。 でも保護者会で初めて顔を合わせた親に 「多動?」 「自閉症?」 「ダウン症?」 など突っ込んだ話なんてできない。 私も娘は心臓病であると説明したが 病名等は言わない。 ワーファリン服用の注意点は 担任にはもちろん 保護者達には青あざができやすい体質と説明した。 私にとってよその子の障害が未知の世界であるように 相手にとって一回顔を合わせた相手の話をどれだけ覚えているかなんて・・・ お互い様である。
娘が入院中 何人ものダウン症児に会った。 症候群というのはいろんな病気の詰め合わせで ダウン症児で心臓障害を併せ持つ子も多い。 そして無脾症の娘もいろんな障害を伴っていた。 成長発達が遅く悩んだ時にダウン症の育児 = 歩き出したの2歳とかそういう部分を参考にした。 だから私の認識としても ダウン症 = ゆっくり発達する子どもというイメージだった。
支援級に娘を入れて思ったのは 支援が必要な子の集まりであると言うことの意味を知る もっと大変な子が多かったというのが現状である。 私自身も3月になってから 心臓障害で障害者手帳を持つ娘を 本来なら養護に入れるべき子だったと言われ混乱した。 錯乱した。 動揺した。 だから現実を調べ矛盾を感じた。
娘からの聞き取り調査を連絡帳に示し 相手をボコした=暴力を振るったことにショックを受け電話できなかったことも記載し 見事に歯型の青あざが残ったことを記した。 病院から帰宅した頃 最初は相手が言った言葉 娘が押したから噛んだと事実調査したのかしてないのか不明だが 相手の言い分を記載し噛んだことに いけないことだと指導したと記載されていた。 この時担任は2年生の男の子を 別室で見ていてその場にいなかったことを主張した。 でも誰もいなかったわけではない。 介助員の先生が見ていたそうだ。
掃除の時間だったのか 机を一緒に並べていたら 娘が相手の気に障る言葉を吐いたから噛んだみたいだという主張に変わった。 相手に噛みつく・ひっかく・靴をなげる等の問題は 今始まったことではなく この子の個別指導計画に入っているので注意してみていた上での事故だと言っていた。
「噛まれた跡が青あざになったことを伝えたので お母さんから電話がいくと思います」 と言って電話が切れた。 ちょっと消化不良気味だった。
相手の母親は今にも泣き出しそうな 申し訳なさそうな声で謝罪していた。 私は娘が服用している薬の関係で ちょっと押されただけでも青あざになりやすい体質だと説明した。
「手加減なしで噛まれたと娘は言っていましたが その間なぐりつづけたと言っていて・・・ 叩かれた場所に青あざや傷等は大丈夫だったでしょうか。」
「家の子が悪いので 叩かれて当然のことをしました」 と娘を責める発言はしなかった。
「学校の先生から電話があり・・・ 先に娘が 早くして とか言ったのが原因らしいとのことです。 本人は否定してますが・・・ もしそのような言葉を吐いたのならお詫びします。 娘も普通学級にいた時に体育の授業など 早く走れないのに早くと言われストレスを感じていたはずなのに どの様な状況でどんな気持ちでそのような言葉を吐いたのか見当がつかなくて困っています。」
娘は そんな言葉言ってないという。 でも言った言わないは 子供だから忘れちゃうし それを見ていた大人(介助員)が 娘が先に何かしたといわれれば 娘にも非があることになる。 ・・・というか 噛まれたこともショックだったけど 殴っちゃった時点で何も言えない。
「家の子は 言葉が遅くて他のお友達のように言葉が出ないから噛む・つねる・足を踏んでしまうなどの行動をとってしまうのです。」
「私も心臓病棟でダウン症のお子さんを見てました。 娘も成長発達が遅くて支援級に移動したのですが・・・ もしかしたらダウン症のお友達はもっとゆっくりなのかもしれませんね。 私も 娘には早く出来ない子には早くと言わないよう親として指導したいと思っています。 他に出来る事はありませんか・・・?」
彼女は何も言わなかった。 他のお友達とも何度も同様なトラブルを起こし 親も謝罪の電話に疲れ果てているようだった。 ただ・・・ 障害は違えど 母親同士協力出来る事は何か情報交換したいと思った。
小学校の担任は 各自児童のハンディを理解している。 それは個人情報守秘義務のベールに隠される。 翌日の連絡帳のコメントに お母さん同志話し合えてよかったと思いますと コメントが書かれていた。
こういう事故が起こってから お互いの情報交換をして 分かり合えれば担任として問題解決と思っているのだろうか。 青あざのできやすい娘が支援級に移動する上での懸念事項として私は言える場所には言った。 でも相手の障害を理解できたら 噛まれたことも納得出来ましたね・・・といわんばかりの対応 ← こう考えてしまうのは母親の被害妄想かもしれませんが・・・ は 見守る役目の担任に対して不満がつのる。
言葉の発達が遅れる障害の子だから 噛むのは仕方ない事なのだろうか。 成長発達が遅い子を 年齢だけが基準で同じ土台に乗せる事に無理はないのだろうか。
噛まれた場所・押された場所で青あざが増えると その分血栓ができやすくなる確率が増える。 それはイコール 死ではないけど・・・ リスク説明として 脳障害や心停止 指先に飛べば切断もと言われてる親としては 恐怖をイメージしてしまう。 普通の子の子育てでは そんなこと考える方が心配性と笑うでしょうが・・・。 親バカですね。
後日 娘が登校すると先生が娘を呼び 皆の前で歯型の痕を見せたそうだ。 ガブちゃんは卵の様に丸くなって決して娘を見なかったそうだ。 先生がよれば逃げる 娘の腕を見せようとすれば かたくなに丸くなる。 きっと母親からこっぴどく叱られたのだろう。 そんな体験したら 息子は絶対学校に行かないと布団の中で丸くなるタイプである。 学校まで来て丸くなるのは 働く母親を彼女なりに理解して そして 申し訳ない気持ちで娘の顔が見れなかったのだろうと 思いやった。
「先生がね・・・ 私の腕を見せようと何度もガブちゃんの方へ腕を引っ張るんだけどね 教室の端から端まで移動するんだよ。 一日中丸くなってたの。 卵みたいで面白かったよ。」
娘は笑って話してくれた。 私は笑えなかった。