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【芸能・社会】

上海国際映画祭に健さん トリビュート上映会が盛況

2015年6月15日 紙面から

会場前で高倉健さんのパネルを手にした降旗康男監督=上海市で

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 【上海=高橋謙太】昨年11月に亡くなった俳優高倉健さんの主演映画「鉄道員(ぽっぽや)」が14日、中国・上海で開催中の「第18回上海国際映画祭」で特別上映された。高倉さんに哀悼の意を表する「高倉健トリビュート上映会」のオープニングを飾る作品として、SFC上海影城で上映。中国では日本人俳優作品の初の特集上映企画となり、同作の降旗康男監督(80)も舞台あいさつに立った。

 生前、高倉さんは自身が日中友好の懸け橋となることを切望していた。例えば高倉さんの主演サスペンスアクション映画「君よ憤怒の河を渉れ」(佐藤純彌監督)は、中国では1978年に「追捕」のタイトルで公開されている。文化大革命後に初めて公開された外国映画となり、繰り返し全国で上映されて10億人が見たとまでいわれる。

 以後、中国には、99年の上海国際映画祭で上映した「鉄道員」も含め、主演作8作が上陸。高倉さんは中国でも「良き友人」と称され、愛されている。

 今回、映画祭側が高倉さんをしのんで上映をオファー。日本映画製作者連盟(映連)がその意向を受け、「鉄道員」「君よ−」など5作品の上映を決めた。降旗監督とともに現地入りした映連の岡田裕介会長(66)は、「亡くなられた早い時期に、こういう意義のあることができて良かった」と上映を喜んだ。

 SFC上海影城は中国最大規模の劇場で、この日のチケット約1000枚は完売した。通訳を通しての舞台あいさつで、降旗監督は「健さん、いま、日本にはない大きな映画館の座席が満員になってます、と私の記憶の中にいる健さんに報告したところです」と目を潤ませ、感激の面持ち。

 「『鉄道員』はぶきっちょな男の物語。健さんの肉体は失われましたが、健さんのイメージ、精神が(作品に)共鳴していただいた方々の中にずっと残っていると信じています。時々抱きしめてあげてください」と観客に呼び掛け、大きな拍手を浴びた。

 高倉さんの遺作となった「あなたへ」(2012年公開)など、主演作20本の監督を務めた降旗監督は「真っ白で、しばらくその状態が続いていた」と、高倉さんが亡くなった悲痛な心境を吐露した。

 高倉さんは降旗監督の新作映画「風に吹かれて(仮題)」の撮影に意欲を見せていた。最後に会ったのは昨年5月末。「うちに(ブランデーの)カルバドスを持ってきて元気そうだった。帰る時、車から手を振っていた。亡くなったから、持ってきてくれるお酒がなくなった」と寂しそうだった。

 上映後、現地の20代女性は「見ている間、ずっと泣いてました」と泣きながら話した。中国ではエンドロールの間に観客が帰ることが多いが、この日はエンドロールの終了まで多くの観客が座ったまま。拍手が鳴りやまなかった。

 

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