6月8日の毎日新聞の、経済面のある記事を目にして、筆者は驚くと同時に心から悲しくなった。
ラフロイグ10年カスクストレングスが、「第20回インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2015」で金賞を受賞したのだという。
それも何と、サントリーのウイスキーとして、である。
ラフロイグは独特なピート香とヨード香で知られた世界的に名高いスコッチで、チャールズ皇太子の御用達のウイスキーとしても有名である。
このラフロイグを、筆者も大好きだった。
筆者の最も好きなウイスキーはラガヴーリンだが、それと同じくらいアードベッグとタリスカー、それにラフロイグが好きだ。
そのラフロイグが、何とあのサントリーの持ち物になっていようとは。
RPGに例えれば、愛するヒロインが悪の大魔王に拉致され、陵辱されかけているのを座して見ていなければならないような気持ちである。
サントリーが去年、アメリカの酒類メーカーのビーム社を買収した事は知っていた。そして愛すべきバーボンのメーカーズマークもそのビーム社の傘下の一つであることを知って、大変残念に思っていた。
ただ筆者は買収されたのはバーボンのメーカーで、スコッチには関係のない事と思っていた。
例の新聞で、ラフロイグがサントリーのウイスキーとしてISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)で金賞を取ったと報道されるまで、筆者は迂闊にもラフロイグもビーム社傘下の一つとしてサントリーに買収されていたことを知らずにいた。
大好きだったラフロイグが、よりにもよってサントリーの魔の手に堕ちていたと今更ながら知り、アイラ島のスコッチを愛する一人として悲しくて悲しくてならない。
ボウモアがサントリーのものになってしまった事ですら悲しかったのに、ラフロイグまでサントリーに汚されてしまうとは。
無論、経済の原理からすればカネを出して株を買い占めれば誰でもその会社を己がモノに出来る。
だからいくらスコットランドが誇る銘酒のメーカーであろうが、カネを出して買収するのはサントリーの自由であるし、誰に文句を付けられる筋合いも無いのであろう。
しかし、だ。
例えば「安かろう、悪かろう」のイミテーション商品ばかり作って儲けて大きくなったアジアのある企業が、その儲けたカネで日本の伝統ある優良メーカーを買収して自分の会社の製品として売り出したら、日本人として悲しく腹立たしくならないだろうか。
サントリーのラフロイグ買収とは、ちょうどそんな感じである。
ウイスキーの元になるウシュク・ベーハー(ゲール語で生命の水)を作ったのはアイルランドだが、それを樽に貯蔵し、今の味と香のウイスキーを造り上げたのはスコットランドだ。
だからスコットランドのウイスキー造りに対するこだわりはすごい。
スコッチは元々、単式蒸留を二度(または三度)繰り返して造るモルトウイスキーだけだった。それが19世紀の初めに連続蒸留機が開発され、大量のウイスキーが造れるようになったのだが、そのグレーンウイスキーを“ウイスキー”と認めるかどうかですら、激しい論争が行われたという。
で、本来のモルトウイスキーにそのグレーンウイスキーをブレンドした、今では一般的になっているブレンデッド・ウイスキーが誕生したのだが。
その「大麦麦芽で糖化させた穀物の糖化液を蒸留した」ウイスキーも、樽で最低3年以上、保税倉庫で貯蔵しなければならない事になっている。それは単なる業界の慣習などではなく、法律でそう決められているのだ。
ちなみにその保税倉庫の鍵を管理するのは、ウイスキーを造った蒸留所でも、蒸留所を所有する会社でもなく、英国政府の役人なのである。だからスコッチはその貯蔵年数を誤魔化す事は全く出来ないし、それをしたら法律違反で処罰される。
さらに言えば、スコッチとはスコットランドの水を使い、スコットランドで蒸留とブレンド、そして瓶詰めまでして初めて“スコッチ”と呼べるのである。
ある意味、スコッチにはスコットランド人の文化と民族の誇りも込められていると言っても過言ではないと思う。
だからそのスコッチの蒸留所を「東洋の日本の会社などが買収してはならない」、などと言うつもりはない。
ただどこの国の企業であれ、スコットランド人の誇るスコッチの蒸留所を買収するならば、それなりの資格が(法的にでなく道義的に)必要だと思うのだ。
少なくともウイスキーとスコッチに対する深い知識を持ち、スコットランドの文化も尊重して「より良い製品を真面目に造ろう」という真摯な姿勢が必要だと筆者は考える。
もしもそれが日本の企業ならば、スコッチ造りをよく学び、自国でも真面目なウイスキー造りをしているメーカーでなければと、筆者は思う。
で、サントリーはどうか。
去年の秋から今年の春まで放送されていた『マッサン』でも描かれていたように、サントリーとはそもそもがイミテーション商品ばかり作って儲けてきた会社だ。
サントリーをまず有名にした“赤玉ポートワイン”だが、ポートワインの定義は次の通りである。
「ポルトガル政府によって、ポルト港から積み出される最高品質のワイン。醸造中の良質ワインにブランデーを添加し発酵を止め、糖分を残したもので、甘美な味わいがある」
すなわちポルトガル産の、特定の製法で造られ特定の港から出荷された由緒あるワインのみ名乗ることが出来るものなのである。
その“ポートワイン”を、サントリー(当時は壽屋)は堂々と日本で作って売り、大儲けしていたのである。
それでもポルトガルと同じ製法で、本場ポルトガルの製品に劣らぬものを作って売っていたのならまだ良い。
しかしサントリーが売っていた“赤玉ポートワイン”なる代物の正体は、甘味果実酒とアルコールと糖液と香料とクエン酸と食塩を混ぜ、さらに水で薄めて作った、本来のポートワインとは似ても似つかぬ、模造品と呼ぶにも値しない偽物だったのである。
そしてこんな偽物を売って、サントリーは成長したのである。
このような行為を防ぐ為に、1891年にスペインのマドリッドで「商品の原産地虚偽表示の防止に関する一八九一年四月のマドリッド協定」、通称“マドリッド協定”が結ばれた。
現行のものは1934年にロンドンで改定したものだが、それには我が日本も加わっている。
この協定は加盟国の全商品に適用され、コニャック、シャンパン、ポートワイン、スコッチウイスキー、アイリッシュウイスキー、アルマニャック、カルバドスなどもその中に含まれている。
ご存知だろうか。コニャックはフランスのコニャック地方で伝統的な製法で造られるブランデーのみが名乗れる名前であり、他の地方や他の国、増してや日本などでは逆立ちしても造れないのである。
同様にシャンパンも、フランスのシャンパーニュ地方で伝統的な製法(瓶内発酵法)で造られるもののみが名乗れるのであって、それ以外の地方や国で作る発泡ワインは、決してシャンパンと名乗ってはならないのだ。
だから日本で、それも人工的に炭酸を充填させて作ったものを“シャンパン”と名付けるなど「もってのほかの行為」なのだ。それで他の地方や国で造られる発泡ワインは、どんな高級なものでもスパークリング・ワインと呼ばれている。
そしてポートワインもまた、ポルトガルで前にも書いた製法で造られ、ポルト港から出荷されたもの以外はそう名乗ってはならないと、日本も加盟している国際法で決められているのだ。
にもかかわらずサントリーは、全体の何分の一かのワインに糖液やら香料やらアルコールやら水やらを混ぜ込んだ、もはやワインですらない甘味果実酒を“赤玉ポートワイン”として売り続けたのである。
それで1973年にポルトガル政府から「サントリーは名前を勝手に盗用している」と厳重な抗議を受けて、ようやくその名前を“赤玉ポートワイン”から“赤玉スイートワイン”に改める始末だ。
例の赤玉スイートワインは今もまだ売られていて、『マッサン』効果で「話の中に出て来るあの“太陽ワイン”のモデルなのか」という事で注目もされているようだが。
しかしその正体は、ポルトガルの銘酒の名を盗用した、香料や糖液やアルコールなど妙なモノを混ぜ込んだワインの何すら値しない模造酒なのである。
さらに、サントリーと言えば肝心のウイスキーの方も酷い。
某巨大掲示板のウイスキー関係のスレッドを見ていると、スピリッツやブレンド用アルコールと称するモノを混ぜた製品については、模造ウイスキーとして激しく非難されているが。
しかしネットで“模造ウイスキー”または“アル添ウイスキー”を叩く彼らは、「スピリッツやブレンド用アルコールと表示されるのは、最も安価な廃蜜糖(サトウキビの搾り滓)から作られたアルコールを使ったものだけ」であって、「穀物から作られた樽貯蔵ナシのアルコール」は“グレーン”として表示されている事を殆ど知っていない。
このブログには度々書いているが、原材料に「モルト、グレーン」とありながらアルコールを混ぜているウイスキーも現にあるのだよ。
そしてサントリーは1980年代の終わり頃までずっと、その穀物から作った樽貯蔵ナシの“グレーンアルコール”なるものを、あの“角瓶”や“ホワイト”などに使い続けていた。
それだけではない。サントリーは“角瓶”や“ホワイト”には例のグレーンアルコール(くどいが樽貯蔵ナシ!)の他にリキュールやカラメルも加え、さらに“オールド”や“リザーブ”には甘味果実酒まで加えて作っていたのである。
スコットランドとアイルランド、それにアメリカとカナダに日本まで加えて、我が国では「ウイスキーの世界五大産地」と称しているが。
だがその中で最低何年樽貯蔵すべきという義務もない上に、アルコールや香料等を混ぜたものまで“ウイスキー”として売っても良いのは我が国だけだ。
これで「ウイスキーの世界五大産地」の一角を自称するとは笑わせる。
そしてアルコールやリキュールや甘味果実酒などを最も積極的に混ぜたまがい物を“ウイスキー”と称して、恥ずかしげも無く大々的に売っていたメーカーこそ、ボウモアやジム・ビームやメーカーズマークのみならず、英国皇太子御用達のラフロイグまで傘下に収めた我らがサントリーなのだ。
今年の2月21日に、サントリーは全国紙で角瓶の全面広告を打ったが。
そしてそこには、太く大きな字でこう書かれている。
夢と情熱が生んだ「日本のウイスキー」
「日本人の味覚に合う日本のウイスキーをつくりたい」
愛されて77年、国内ウイスキーNo.1
その角瓶が発売された、1937年当時の製品の写真を紹介しよう。何とラベルに、Liqueur Whiskyと堂々と書いてあるだろう。
サントリーの創業者鳥井信治郎氏は、この角瓶の味をみて「この味や!」と言ったそうだが。
その旧特級酒で、愛されて77年でかつ国内でNo.1の「日本人の味覚に合う日本のウイスキー」は、誕生した時からずっと例の「リキュールやらアルコールやらカラメルやらを混ぜた模造ウイスキー」だったのである。
確かに現在の角瓶にはあの“Liqueur Whisky”の文字は無いし、原材料表示もモルトとグレーンだけになっている。
しかし角瓶だけでなくリザーブにもオールドにもホワイトにも1980年代までずっと、リキュールやら甘味果実酒やらカラメルやらが混ぜ込まれていたのは、まぎれもない事実だ。
その事実は、日本消費者連盟によって詳しく暴かれている。
そして角瓶はかつての特級ウイスキーでありながら、樽貯蔵ナシのグレーン(穀物)アルコールで希釈された、いわゆる“アル添”の模造ウイスキーであったのだ。
サントリーはこんな模造ウイスキーを、半世紀の長きに渡って我らに売り続けて来たのである。
しかもその角瓶が「日本人の味覚に合う日本のウイスキー」として日本人にも受け入れられ、過去販売数量で国内No.1だというのだから、日本人自身の味覚も「どうかしている」と言わざるを得ない。
さらに言えば、その角瓶を始めとするサントリーの各種のウイスキーにリキュールや甘味果実酒等が混ぜ込まれていた時代に、日本消費者連盟は国産ウイスキーを製造していた各社に、製品にリキュール等を使用しているかどうか公開質問状を出した。
それに対し、ニッカは「弊社製造販売にかかるウイスキーに甘味果実酒やリキュールは一切添加されておりません」と答えた。
当然である。ニッカは創業者の竹鶴政孝氏自身が、添加香料などの研究を一切禁じている。
そしてキリンや他のメーカーも皆「使っていない」と回答した中、サントリーの返事だけは大きく異なっていた。
「まことに残念ながらお答えはさし控えさせていただきます。尚、ウイスキー等のブレンド内容については、世界各国どの企業も固有の『ノウ・ハウ』としており明らかにしておりません。以上」
それ以外のメーカーはすべて「使っていない」と答えているにもかかわらず、サントリーのみは回答を拒否し、その理由として現在では「モルト、グレーン、ブレンド用アルコール」などと当たり前に明記されている原材料表示が、驚くなかれ「世界各国どの企業も明らかにしていない固有のノウ・ハウ」だと言ってのけたのである。
ただモルト原酒をアルコールで希釈していただけでなく、他のメーカーは使用していないリキュールや甘味果実酒を香り付けに混ぜた模造ウイスキーを半世紀も売り続けたり。
あるいは本物とは似ても似つかぬ甘味果実酒に香料や糖液やアルコールや食塩やクエン酸を混ぜて水でうすめたものに、ポルトガルの銘酒ポートワインの名を勝手に盗用して“赤玉ポートワイン”と名付け、ポルトガル政府から厳重な抗議が来るまで六十年以上も売り続けたり。
とにかくサントリーの過去の商法には、恥ずかしくいかがわしい汚点が多すぎる。
筆者はジョニーウォーカーの黒でウイスキーの味と香りを知った人間だが、幸か不幸か、例の“Liqueur Whisky”と堂々と名乗っていた時代の角瓶も飲んだ事がある。
……あまりに不味すぎて、そして熟成していないアルコールの刺激があまりに強すぎて、グラス一杯すら飲み切ることが出来ずに残してしまった。
今は“山崎”や“白州”や“響”などの高品質なウイスキーもあるものの、かつてのサントリーのウイスキーは本当に酷かった。何しろ酒に級別があった頃の特級ウイスキーすら、樽熟成していないグレーンアルコールや、リキュールや甘味果実酒やカラメルが混ぜ込まれた模造ウイスキーだったのだから。
そしてラベルから“Liqueur Whisky”の文字が無くなった今でも、角瓶には華やかな香りと同時に若いアルコールのツンとする刺激を感じて、旨いとはどうしても思えない。
過去の戦争の問題と同列に語るべきではないかも知れないが、たとえある企業に恥ずべき過去があったとしても、その企業が問題を直視し総括をして正直に非を詫び、これからは真っ当な商品を造る決意を表明してそれを実行すれば、過去の過ち(もしくは黒歴史)は許されても良いと筆者は考える。
ではサントリーは、リキュールや甘味果実酒等を混ぜた模造ウイスキーや、ポルトガルの銘酒ボートワインの名前を勝手にパクった本物とは似ても似つかぬ合成ワインを、何十年もの長きに渡って作り続けて大きくなった過去を、きちんと反省しているだろうか。
で、前にも触れた今年の2月21日(ちょうど『マッサン』の人気が盛り上がっていた頃)に全国紙に載せられた、サントリーの全面広告を見てみよう。
サントリーでまずウイスキー造りをしたのは、後にニッカを創業する竹鶴政孝氏だが、彼の造る本場のスコットランド流のウイスキーは、当時の日本人には「煙臭い」と受け入れられなかった。
そして竹鶴政孝氏がサントリーを去った後に角瓶を作るまでの事を、例の広告でサントリーはこう書いている。
再び、「日本人の味覚に合うジャパニーズウイスキー」に取り組む日々が始まる。鳥井は時代に先んじて、研究所を設立して学者の意見を聞きながら、改良を重ねた。
あくまで国産の本格ウイスキーにこだわり、困難に挑み続けた鳥井。その努力が報われるのは、1937年に発売された「角瓶」の大ヒット。山崎蒸留所の着工から14年を経て、最初の成功だった。ここから、西欧の模倣でない日本ならではのウイスキーが発展していく。
……何ともはや、広告用の宣伝文とは言うものの、突っ込み所満載の酷い文章に呆れかえるばかりだ。
結局、サントリーによれば竹鶴政孝氏が手がけたウイスキーは「西欧の模倣」であり、複数のリキュールやカラメルを原酒に混ぜることが「改良」で、そうして出来た“リキュール・ウイスキー”なる模造ウイスキーが「日本ならではの本格ウイスキー」だというのだ。
そしてその本物のウイスキーとは程遠い模造ウイスキーが「日本人の味覚」にも合って大ヒットしてしまったというのだから、筆者は当時の日本人の味覚をひどく情けなく思う。
例えばヒトラーや安倍晋三氏が政権を取り我が物顔で振る舞えたのも、彼らを支持して一票を投じた国民が居たからであって。
それと同様に、アル添でかつリキュール入りの模造ウイスキーを「日本人の味覚に合う日本の本格ウイスキー」と称して売り出すサントリーも悪質だが、その角瓶を喜んで飲み国内No.1の座に押し上げた日本の国民の方がもっと悪いのかも知れない。
あの角瓶は最初からリキュール入りの模造ウイスキーだったが国民はそれを支持し、サントリーはその後も1980年代に至っても角瓶にアルコールとリキュールとカラメルを入れ続けたが、それでも国民は角瓶を買い続けた。
と言うより、オールドやリザーブなども含めてサントリーのウイスキーはリキュールや甘味果実酒やカラメルを混ぜ込んだ模造ウイスキーばかりだったが、それでも国民は他のメーカーが造る真の本格ウイスキー(モルトウイスキーとグレーンウイスキーのみで造られたもの)よりも、サントリーが作る偽本格ウイスキーの方を選んだ。
そして今もまだ、国民は大々的に繰り返されるサントリーのCMに洗脳され、「ウイスキーと言えばハイボール」と思い込んであの角瓶を飲み続けている。
我らが日本人の味覚がそんなものだから、アル添でリキュール入りの模造ウイスキーを「日本人の味覚に合う本格ウイスキー」と称して何十年も売り続けてきた事に対する反省は、サントリーには欠片も無い。
2015年2月21日の新聞広告の文章を一読するだけでも、その事がよくわかる。
その2月21日の新聞全面広告では、例の赤玉ボートワインの件についても触れられている。
その部分をまた、そのまま抜粋して原文通りに紹介してみよう。
最初の試練は1899年、20歳にして独立し鳥井商店を開業したとき。スペイン産など海外のポートワインを大量に仕入れたものの、当時の日本人にとって“本場の味”は酸味が強すぎ、ほとんど売れなかったという。
そこで改良に改良を重ね、1907年に世に出したのが「赤玉ポートワイン」だ。苦労のかいがあり、寿屋(現・サントリー)黎明期の大ヒット商品となった。
……サントリーってのは、酒類メーカーのくせにとんでもなく無知なのか、簡単にわかる嘘で国民を騙せると思っているらしい。
あのね、このブログでも繰り返し書いているように、ポートワインってのは「ポルトガルのポルト港から出荷される最高品質のワイン」なの。
そのポートワインが「スペイン産など」とは、聞いて呆れるよ。
サントリーの広告では「海外のポートワイン」とあるけれど、ポートワインはポルトガル産以外にはあり得ない、っての。例のマドリッド協定によって、その事はきちんと守られていマスから。
それにね、サントリーは輸入したポートワインについて「当時の日本人にとって“本場の味”は酸味が強すぎ」と書いているけれど、前にも書いた通りポートワインとは「醸造中の良質ワインにブランデーを添加し発酵を止め、糖分を残したもので、甘美な味わいがある」のだ。
試しに広辞苑や百科事典でポートワインについて引いてみるがいい、「通常は甘口」とか「ポルトガル産の甘いブドウ酒」などと書いてある筈だ。
その発酵途中に糖分が残された甘いポートワインが「当時の日本人には酸味が強すぎた」とか、サントリーの広告を信じるならば当時の日本人の味覚って本当に「どうかしてる」よねwww。きっと砂糖水を飲んでも「酸っぱい!」とか言ったのでは?
ポルトガル産でしかない甘いポートワインを「スペイン産など」と言ったり、「酸味が強すぎ」と言ったり、本当に見え透いた嘘をつくよね、サントリーって。
鳥井信治郎氏が仕入れたのは、実際のところはポートワインではなく、ただのスペイン産の赤ワインだったんでしょ。で、ワインを飲み慣れていない当時の日本人には、本場の赤ワインの渋味が口に合わなくて、それで香料や糖液を入れて「甘く飲みやすく」したんでしょ。
で、その本場のワインを甘くして香料を入れてアル添にして水で薄める行為を「改良に改良を重ね」と称して恥じないあたりも、ウイスキーの原酒にリキュールや甘味果実酒等を混ぜる行為を「国産の本格ウイスキーにこだわり改良を重ねた」と言い張っているのと共通しているね。
ええ、その広告では赤玉ポートワインの存在自体がマドリッド協定に長年違反し続けていて、ポルトガル政府に「名称を勝手に盗用している」と厳重な抗議を受けて現在の赤玉スイートワインに改名した件については、全く触れてないデスよ。
その事実を隠す為に、鳥井信治郎氏が仕入れたワインをどうあっても“ポートワイン”にしておきたかったのだろうね。
だからポルトガル産の甘いポートワインが「スペイン産など」だったり、「当時の日本人には酸味が強すぎた」ことになっていたりするわけだ。
苦しいね、サントリーの宣伝担当者の言い繕いと誤魔化しは。
サントリーが、筆者も愛するラフロイグを傘下に収めたのは去年の事だが。
今年に入ってからの例の新聞広告を見ても、筆者には自社の“過去”に対する反省の姿勢が、サントリーからまるで感じられないのだ。
昔の製品はどうあれ、今のサントリーは山崎や白州や響などの世界に誇れる製品も出している。それだけに世界で認められる立派な酒類メーカーとして胸を張るには、過去の汚点を黒歴史として覆い隠すのではなく、反省すべき所はきちんと反省している姿を消費者にも見せるべきだ。そうでなければ、アンチ・サントリーは世の中から減らないし、サントリーは熱心な(そして口うるさい)ウイスキー・ファン達の信頼を得られないと筆者は考える。
繰り返すが、過去の戦争もきちんと謝罪と反省の姿勢を示さなければ決して許される事は無いのだ。
そして一消費者で大のウイスキー好きの筆者の見る限り、サントリーにはその自社に不都合な過去ときちんと向き合う姿勢が無く、だから筆者はサントリーにラフロイグを所有する(法的にではなく道義的な)資格は無いと思うし、筆者の愛するラフロイグをカネで己がモノにしたサントリーを許さない。
現在、今年の九月に迫っているニッカの値上げに備えて、ニッカ製品の買い溜めに走っている筆者であるが。
これからは急ぎ市内の酒店を回り、容器の裏に「輸入業者サントリー酒類」の名の入っていない、以前からの在庫のラフロイグも買い集めねばならないと思っている。
ラフロイグは本当に本当に大好きなのだが。
サントリーのものになってから造られたラフロイグは、今後一切飲まないつもりでいる。