ベ平連:40年ぶりに「旗」掲げて神戸をデモ行進
毎日新聞 2015年06月13日 15時00分
◇中心メンバー「黙ってられん」…「集団的自衛権」めぐり
1978年に解散した「ベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)こうべ」の中心メンバーが21日、政府の進める集団的自衛権行使の容認に反対し、約40年ぶりに「ベ平連」の旗を掲げて神戸・三宮をデモ行進する。「あの時立ち上がった僕らが黙ってるわけにいかない」。新組織の結成も視野に入れた活動を始める。
ベトナム戦争終結40周年を機に反戦運動を振り返ろうと、平和や人権活動に取り組む神戸学生青年センター館長の飛田雄一さん(65)が3月、中心メンバーだった神戸市西区の元労組役員、西信夫さん(67)に講演を依頼したのがきっかけ。西さんは「政治には諦めしかなく、もう関わるまいと思っていたが、昔のことを調べるうちに気持ちが変わった」と話した。
西さんによると、ベトナム戦争当時、日本は米軍を後方支援する兵たん基地となり、米軍管理下にあった神戸港(新港)第6突堤から米軍の艦船が戦地へ出港した。これに対しベ平連こうべは三宮でのデモや地下街でのフォーク集会を開いて反戦運動を展開。ベ平連運動の提唱者で、2007年に75歳で亡くなった作家の小田実(まこと)さんらと脱走米兵の支援をしたこともあったという。
「僕らの運動はベトナムの人たちへの罪悪感からだった。でも、これからは後方支援にとどまらない。何としても阻止しないと」。集団的自衛権の理屈でベトナム戦争が始められたこともあり、西さんが活動再開を呼び掛けると、元メンバーの飛田さんや野宿者支援のNPO「神戸の冬を支える会」の觜本(はしもと)郁さん(62)も「戦争につながる動きは認めない」と応じた。
当時の旗は行方知れずだったが、神戸大協力研究員(社会運動史)の黒川伊織さん(41)が、ベ平連こうべについて調べる中で昨年11月ごろ、元メンバー宅の物置でスーパーの袋に入っているのが見つかった。旗は竹ざおに付けてデモの先頭で掲げたり横断幕にしたりしたものだ。活動の象徴の旗と約40年ぶりに向き合ったメンバーは「この旗が再び日の目を見るなんて想定外だった。喜んでいる場合と違う」。
再結成の第一歩は21日午後3時、三宮の東遊園地から始まるデモ行進。兵庫県弁護士会が集団的自衛権行使容認と特定秘密保護法に反対して同2時に開く「兵庫大集会」後のパレードでベ平連の旗を掲げて参加する。西さんら元メンバーのほか黒川さんら約30人が一緒に歩く予定だ。【松本杏】
◇ベ平連
最終的な正式名称は「ベトナムに平和を!市民連合」。米国が北ベトナムを爆撃した1965年、作家の小田実、開高健、哲学者の鶴見俊輔の各氏らを中心に結成されたベトナム戦争に反対する市民運動グループ。街頭デモや米紙への反戦広告、脱走米兵の逃走支援などを行い、74年に解散した。会員制をとらない自由参加で、最盛期は全国に300以上の組織があった。「ベ平連こうべ」は神戸大の教授や学生を中心に65年、「ベトナムに平和を! 神戸行動委員会」として発足し、69年に改称して78年まで活動を続けた。