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【戦後70年】
特攻隊員の鮮烈遺書全文 「母様と共に御奉公だよ」…母の写真を背に出撃
元特攻隊員の粕井(かすい)貫次さん(91)=奈良市=が11日、大阪市都島区の太閤園で行った講演で紹介した、特攻で戦死した親友・富澤幸光(ゆきみつ)海軍中尉=当時(23)=の遺書の全文は次の通り。
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絶筆 靖国神社で待ってゐます
富澤幸光海軍中尉 二十三歳
昭和二十年一月六日比島にて戦死
お父上様、お母上様、益々御達者でお暮しのことと存じます。幸光は闘魂いよゝ元気旺盛でまた出撃します。お正月も来ました。幸光は靖国で二十四歳を迎へる事にしました。靖国神社の餅は大きいですからね。同封の写真は○○で猛訓練時、下中尉に写して戴いたのです。幸光を見て下さい。この拳を見て下さい。
父様、母様は日本一の父様母様であることを信じます。お正月になったら軍服の前に沢山御馳走をあげて下さい。雑煮餅が一番好きです。ストーブを囲んで幸光の想ひ出話をするのも間近でせう。靖国神社ではまた甲板士官でもして大いに張切る心算です。母上様、幸光の戦死の報を知っても決して泣いてはなりません。靖国で待つてゐます。きつと来て下さるでせうね。本日恩賜のお酒を戴き感激の極みです。敵がすぐ前に来ました。私がやらなければ父様母様が死んでしまふ。否日本国が大変な事になる。幸光は誰にも負けずきつとやります。
ニツコリ笑つた顔の写真は父様とそつくりですね。母上様の写真は幸光の背中に背負つてゐます。母様も幸光と共に御奉公だよ。何時でも側にゐるよ、と云つて下さつてゐます。母さん心強い限りです。(中略)幸光は立派に大戦果をあげます。