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【経済】

日米TPP交渉 崩れた「最短シナリオ」

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 米議会下院がTPA(大統領貿易促進権限)法案を可決する一方、関連法案は否決したことで、TPA法案の成立は週明け以降に持ち越された。これにより環太平洋連携協定(TPP)交渉もさらに遅れることが必至に。日米両国は最短で六月末にTPPの大筋合意に向けた閣僚会合を開く青写真を描いていたが、会合は早くても七月以降になる見通しだ。日本の政府関係者は「先行きが読めない」と嘆いている。 (ワシントン・斉場保伸、吉田通夫)

 日本の交渉関係者によると、日米両国はTPA法案は米下院を通過後、上院と内容の微修正を経て十七日前後に成立する日程を「最短シナリオ」としてきた。その場合は首席交渉官会合を十日間程度開き、残った課題を円滑に決着できれば六月末にも閣僚会合の開催が可能となり、大筋合意に持ち込めるとみていた。

 しかしTPA法案は下院を通過するとしても、その時期は最短で十六日(日本時間)以降にずれ込む見込みとなった。甘利(あまり)明TPP担当相は十三日、報道陣に「最短のスケジュールは厳しくなった」と述べ、閣僚会合は七月以降になるとの見通しを示した。米議会の調整が難航すれば閣僚会合の日程はさらに遅れることになる。

 その米議会では下院共和党のリーダー、ベイナー下院議長が、否決された関連法案について再度採決するよう求める動議を提出。週明けから与野党間の調整が本格化する。米ホワイトハウスのアーネスト大統領報道官は十二日、「最も難しいと思っていたTPA法案が通った」と安どの表情をみせたが、ホワイトハウスの楽観とは裏腹に今後の展開は依然、予断を許さない状況だ。自由貿易の拡大で増加が予想される失業者支援が目的の関連法案には民主、共和両党の多くの議員が反対しており、調整が難航する可能性もある。

 米議会は来年の大統領選に向け、今年秋以降、実質的に機能しなくなる懸念が強い。TPPで参加国と大筋合意に達しても、協定案をつくって議会に諮るには三カ月程度が必要とみられ、秋までに米議会の承認を得るには残された時間は少ない。

 また、オバマ政権はTPPの早期妥結を目指して日本を含む各国政府に譲歩を強く求めてきたが、下院でTPAの関連法案が否決されたことで自国の議会を説得できなかったことが露呈。各国からの求心力も弱まり、交渉全体が停滞する可能性もある。

 

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