イッピン「“にじみ”が決め手!ぬくもりの手ぬぐい〜愛知 有松・鳴海絞り〜」 2015.06.14


(来島)覚悟を決めんか!抜けば死にますよ。
(銃声)初めて光が見えたんです。
女性たちが熱心に足を運ぶ和装ブランドの店。
ポップなデザインの品々が並ぶ中今大人気なのが「手ぬぐい」。
400種類もある豊富な柄から選べる上さまざまな使い方を楽しめるんだそう。
ペットボトルを包んだり柄を生かせばスカーフに。
畳み方の工夫でカトラリー入れにも。
中でも今高い人気を誇るのが愛知県の「有松・鳴海絞り」の手ぬぐい。
プリントされた柄とは異なり「にじみ」のあるぬくもりあふれる風合いが特徴です。
にじみを生み出すのは「絞り染め」。
布を板で挟んだり糸でくくったりして染色する技法です。
有松・鳴海絞りを代表する模様がこちら!豆粒が並んでいるだけのようですがよ〜く見ると大きさもにじみ方もひとつひとつ違っている事が分かります。
さまざまな魅力的な模様を生み出し続ける有松・鳴海絞り。
「にじみ」に秘められた技を探ります。
やってきたのは名古屋市の南東部有松・鳴海地区。
この一帯で作られる絞り染めは江戸時代から全国にその名を知られました。
今も40以上の製造業者が集まり日本一の生産量を誇ります。
豆絞りって書いてあるから。
あの豆絞りの手ぬぐいを作っている工房です。
こんにちは。
いらっしゃいませ!職人歴60年の伝統工芸士です。
おっ。
これ何ですけどね。
これが豆絞り。
はい。
こういう…。
お〜!点々点が1個ずつ大きさが微妙に違うんですね。
そうですねはい。
かわいいですねぇ。
豆絞りは江戸時代歌舞伎役者が衣装に取り入れるなど粋な模様として一世を風靡しました。
今も有松・鳴海絞りを代表する柄として作られています。
え〜?どういう方法?実はね…え!え〜それは手作業って事ですか?そうです。
では折って染めるというその技をとくとご覧いただきましょう。
まずは店の奥にある畳敷きの工房へ。
失礼します。
わぉ!こちらで作られてるんですか?はいそうです。
工程は布を折り畳む事から始まります。
担当は鵜飼さんの姪小百合さんです。
生地は木綿。
長さは1反10メートル。
薄い真鍮の板を使ってびょうぶ状に折り畳んでいきます。
10メートルを一気に折っていきますが途中僅かな乱れも許されないんだそうです。
手作業っていうのは本当に大変ですね。
そうですね。
折っていってもやっぱりその間ちょっと変なふうになっちゃったりするとその1か所だけでB反になってしまうので極力均等にやれるように。
最も心を配るのが高さをきっちりそろえる事。
今ここで少しここにこういう感じでここだけ少し出ちゃってるんですよ。
こういう感じで。
分かります?分かんないですけど。
若干…確かに。
若干出てますよねここだけ。
えそれでもう駄目なんですか?そうこれをきれいに直すためにこれでこういう感じで押さえ…。
わっ本当だ!それでそろえる?ええそろえていくんです。
うわ〜大変な作業だ。
そうですね。
でもどうしてここまできれいに折るのでしょうか。
それは次に待つ染めの工程と深く関わっているんです。
「染め場」と呼ばれる専用の場所。
鵜飼さんこれはどういった道具なんですか?これを横のやつとこれ縦なるほどねぇはい。
豆粒を生み出すのは折った生地と溝を切った板。
生地の折り目と溝を十文字に重ね溝に染料を流し込みます。
すると折り目の頂点だけが染まり豆が出来るという仕組み。
これが「板締め絞り」という伝統技法なんです。
生地は3段に重ねて一組とします。
それをいったん縦にして…。
締め付けていきます。
側面から圧迫して生地と生地をぎゅっと密着させるのです。
30センチぐらいに折ったのをここで締めちゃうんですね。
次にもとに戻し生地を上から圧迫します。
大きな万力で粗く締めてからボルトを使って徐々に締めていくのがポイント。
締めすぎると折り目の頂点がひしゃげ豆の形がいびつになったり逆にゆるいと生地と溝に隙間が生まれ染料が染み出して豆そのものが出来なくなるんです。
求められるのは締めすぎずゆるすぎない絶妙な力加減。
これを手に伝わる感触ひとつで行うのです。
締め終えた生地はそのまま「藍」の染料に浸します。
数分後板を外して染め上がりを確認。
果たして…。
お〜染まってる本当だ!ちゃんと豆が点々点ってなってる!おっわ!水に投げ入れたのは色を定着させるためこうしてきれいな豆粒が生まれました。
しかし名人も失敗を免れません。
あら?ふ〜ん。
原因は生地を側面から圧迫した時均等に力をかけたはずが僅かな狂いが生じた事。
締めがゆるい所には染料が多くきつい所には僅かしか染み込まなかったため豆の大きさが違ってしまったのです。
でもこれふだんは締める時には平均にやってるんですよね。
はいそうですよ。
う〜ん難しいんだ。
はい。
大きさが程よく違うと味わいになりますが著しく違うと商品にもなりません。
折って締めて染める。
その全てがうまくいって初めて誕生する味わいのある豆粒。
熟練の手わざの連けいが生むイッピンです。
板締め絞りはもうひとつ美しい柄を生み出します。
「雪花」とは雪の結晶の事。
まるで花のように舞い落ちる雪の華麗な柄。
100年前に有松で考案され鵜飼さんの工房で受け継がれてきました。
雪花絞りも生地を折り畳む事から始まります。
布を四つ折りにし端で三角形を作りびょうぶ畳みにします。
折り畳んだ生地は三角形の板に挟み両側からきつく締め上げていきます。
染め方は極めてシンプル。
板で挟んだ生地の一部をおよそ1分間染料に浸すだけ。
色を定着させるため水につけ板を外して広げると…。
わすごい!きれい!
(鵜飼)だんだん青くなってきます。
え〜!僅か数分で藍色に変化。
雪花絞りが現れました。
ではなぜ三角形に折った布から華麗な花模様が生まれるんでしょう?ポイントはこの三角形という形。
下半分を染めた6つの正三角形が1つの花を構成していたのです。
では直角二等辺三角形の下半分を染めた場合は?この花模様に!4つの三角形が1つの花となり違う表情が現れました。
では二等辺三角形の左右の端だけを染めると…。
ご覧の模様が生まれます!三角形はこの位置です。
まぁこの辺がおもしろさなんですけどね。
どういった柄を出していくか。
広げた時に自分の思いどおりにいった時がおもしろさというか。
そういうところになるんですけれども。
三角形の形の違いやどの部分を染めるかで千変万化する雪花絞り。
知恵と工夫のイッピンです。
江戸時代から東海道屈指の名産品としてその名をはせた「有松・鳴海絞り」。
浮世絵風景版画の傑作シリーズにも街道沿いの有松絞りの店が描かれるほどでした。
人気の秘密は職人たちが競い合うように絞り染めの技法を編み出し豊富な柄を生み出した事。
最も古い柄のひとつである「三浦絞り」。
江戸時代初期にこの柄を作った人の名にちなみます。
こちらは唐松の葉に似ている事からその名が付いた「唐松絞り」。
そして武士の鎧にも似た「鎧段絞り」。
こうした柄が有松・鳴海では100種類以上生まれました。
有松では今も新たな柄が誕生しています。
また全然違います。
カラフルなんだ。
失礼しま〜す。
わぁかわいい〜。
あら!カラフルな手ぬぐいがありますよ。
ポップでカラフルな手ぬぐい。
有松ならではのにじみはそのままに。
従来の藍一色のイメージを覆す多彩な模様。
全て伝統の板締め絞りの技法で作られています。
その生みの親の工房を訪ねました。
ここは?ここがいつも私たちが作業している作業場になります。
ここで作ってるんですか。
へぇ〜。
まだ20代半ばの若き絞り職人です。
大学生の時「板締め絞り」に魅せられた二人。
卒業後迷わずこの世界に飛び込んだそうです。
二人は大胆な発想力で新たな技法を編み出してきました。
村口さんの技は筆を使って染色する事。
自分たちで考えて…。
筆を使った板締め絞り。
どんな模様が出来るんでしょうか。
これは開いてからのお楽しみっていう感じなので。
あらっ!こんな感じです。
あ〜お花みたいな。
はい。
かわいい!赤が映えた柄になります。
へぇ〜不思議!なるほどね。
でもやっぱりこれっていうのは筆でやるからこそこうやって出るっていう事?そうですね。
筆でやるからこそ黄色がきれいに色が出ますし赤もすごくはっきりときれいな色が出ますね。
本当だきれい!一方伊藤さんは今までになかった布の畳み方を開発しました。
ノートには苦労の末に編み出した畳み方の数々。
伝統的な畳み方では布を四つ折りにしアイロンを使ってきっちり三角形を作っていきます。
でも伊藤さんは違います。
まず布を三つ折り。
え〜おもしろい。
はい。
次に斜めに折り畳んで三角形を作ります。
そしてびょうぶ畳にしていくんですがアイロンは使わずあえてゆるめに重ねるんです。
染め方は従来どおりですが…。
どんなふうになっているんだろう?染めた布を広げると…。
こんな感じで。
お〜かわいい!花模様っぽく。
1個1個がにじみ方がきちんと折っていない分いろんな出方がしてる。
まるいとこもあるし。
そうですね。
場所によって結構いろんな出方がしてくるのでそれはおもしろいです。
伝統を大切にしつつも伝統に縛られない。
若い感性によるイッピンです。
400年の歴史を持つ有松・鳴海絞りの中に「究極」と言われるイッピンがあります。
飾ってありますね。
失礼しま〜す。
いらっしゃいませ。
こんにちは。
こんにちは。
すごい。
こちらに究極の有松絞りの手ぬぐいがあるって聞いたんですけど。
はいございます。
ありますか。
どうぞこちらです。
こちらが手蜘蛛絞りの手ぬぐいですね。
手蜘蛛絞り!いいですか?はい。
不思議!おもしろい!はい。
手蜘蛛絞りは蜘蛛の巣に似ている事からその名があります。
400年前有松で最初に考案された模様のひとつですが極めて高い技術を要するため作り手が少なく「幻の絞り」と言われています。
手蜘蛛絞りの「くくり」。
布を糸でくくったものでこれを染めるのです。
まるで奇怪な生き物の触手のよう。
およそ2ミリの間隔で糸が巻かれています。
染めてほどくと糸の部分が染め残され美しい「蜘蛛の巣」となるのです。
平山さんが手蜘蛛絞りの職人を訪ねてみると…。
こんにちは!
(本間)よっこらしょ!こんにちは。
いらっしゃいませ。
本間さんですか?どうぞ。
こんにちは。
なんと94歳!わか〜!おじゃまします。
よう言うだねぇ。
失礼します。
まぁ寒いのにありがとな。
よぉ〜来てちょうたな。
フフフ。
入ってちょ。
日当たりのいい部屋が本間さんの仕事場です。
ここに座ってホントだ。
やっとるんだもんじゃな。
位置はここ。
くくりを始めて何年ぐらいたつんですか?ばあちゃんたちの時代は7つぐらいから始めましたわね。
ほいで今94だからまぁ80年ちょっとやっていますね今まで。
へぇ〜すごい!手蜘蛛絞りではまず布をかぎ針にかけます。
そしてひだを作りすぼめた傘のようにします。
続いては巻き上げ。
糸巻きをかぎ針にくぐらせひだの下から上へとしっかりくくっていきます。
早いですね。
あっという間に1個出来ちゃうんだ。
職人ワザだわ。
94歳とは思えぬ猛スピード。
実はこれ有松でも本間さんにしか出来ないスゴ技です。
こちらは本間さんの一番弟子。
高橋瞳さん。
手蜘蛛絞り歴15年の高橋さんはこのスピード。
糸を巻く速さの違いを10秒間で比べます。
本間さんは高橋さんの2倍近い速さでした。
ひだを取るにしても速いし頭を取るにも速い。
どうして本間さんはここまで速くくくれるのでしょうか?ハイスピードカメラで撮影し検証します。
まずは右手の使い方に注目。
親指と人さし指で挟んだ糸巻きをかぎ針をくぐらせすぐに残りの指でキャッチ。
これをなんと1秒間に2回のスピードで行っていました。
そして左手にも驚異の動きが!高速で動く右手に合わせ親指を巧みに使って糸を正確無比に2ミリずつ上へとずらしていたんです。
では実際のスピードでもう一度。
これ染めました。
はい。
くくりを藍で染めたものです。
広げましょう。
わっ!こういうふうに出てきます。
感動した。
おばあちゃん感動した!へい。
これが87年もの間有松で磨き上げた腕が生み出した手蜘蛛絞りです。
そういう事も思わないかんが。
いかにすてきな模様を作って人々を喜ばせるか。
江戸時代からずっと追求してきたのが有松・鳴海の職人たちです。
変わらぬ思いを胸にきょうもその手で絞りを生み出します。
2015/06/14(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「“にじみ”が決め手!ぬくもりの手ぬぐい〜愛知 有松・鳴海絞り〜」[字]

大人気の「有松・鳴海絞り」の手ぬぐい。“にじみ”が粋な「豆絞り」、ポップでカラフルな新製品、幻の「手蜘蛛絞り」を生む名人の超絶技巧など、絞り染めの魅力を堪能する

詳細情報
番組内容
江戸時代から東海道屈指の名産品として知られた、愛知の「有松・鳴海絞り」。今、その手ぬぐいが大人気だ。絞り染めが生む柄は豊富で個性的。“柄の数だけ職人がいる”と言われるほど、職人たちが競いあって、高度な技法を開発してきた。“にじみ”が粋な「豆絞り」を作る“板締め絞り”。ポップでカラフルな柄で新風をもたらす若手職人のワザ。そして幻の「手蜘蛛(てぐも)絞り」を生む名人の超絶技巧とは?平山あやが探る。
出演者
【リポーター】平山あや,【語り】平野義和

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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