主菜の甘鯛の若狭焼きでございます。
(清彦)この甘鯛は若狭から取り寄せたものでございます。
どうぞお召し上がりください。
甘鯛ですか。
ほう…!さすがは京都が誇る老舗佐々山楼の料理。
全国からお集まりになる来賓の方々に振る舞うにふさわしい伝統が築き上げた見事な味だ。
(曽根原)皆さんもそうお思いになりませんか?この程度のものが京を代表する料理と思われるのは心外です。
浅野さん私は料理評論家として矜恃を持って発言しています。
真っ向から反論するならあなたの発言の根拠を示して頂きたい。
京都は古いだけの町ではありません。
長い都の歴史は進取の気性を育み旧弊にとらわれない新しいものを取り入れる歴史でもあったはず。
この料理のどこにそれが見えますか?
(曽根原)しかしですね…。
(美和子)それに…。
この料理は甘鯛の鱗を引いて食べやすくしてありますが本来の若狭焼きの焼き方とは違います。
せっかくの素材のよさを生かしているとは思えません。
曽根原さん料理評論家であるあなたがそれに気づかなかったのですか?今年の「食と文化の交流会」の料理は佐々山楼に任せるべきではない。
それが私の意見です。
あの女よくも…!
(北山修一郎)東京からお越しの島村様でいらっしゃいますね?はいそうです。
これはこれはようこそ京都へお越しくださいました。
神社仏閣名所旧跡美味しいお店に素敵なお土産そして京都の心優しき人々。
はんなりとした京都の全てをどうぞご堪能ください。
本日お客様をご案内させて頂きます京都生まれの京都育ち京都をこよなく愛する男京都美食タクシードライバーの北山修一郎でございます。
シートベルトオーケー。
ミラーオーケー。
イケメンオーケー。
なんちゃって。
では出発致します。
京都には日本の歴史と文化そして何よりも心が凝縮してるんですよね。
そうです日本人の心なんです。
(女性)わあ〜!
(男性)美味しそう!お待たせ致しました。
京都美食タクシーのメインイベントグルメのお時間です。
リクエスト頂いた鮎の塩焼きですよ。
本日は京都美食タクシーをご利用頂きましてまことにありがとうございました。
またのお越しを京都の町共々お待ち申し上げております。
どうぞお気をつけてお帰りくださいませ。
今日はありがとうございました。
ありがとうございます。
お気をつけて。
はい。
ありがとうございます。
この佐々山楼が交流会の料理から外されたという事ですか?ええ。
浅野美和子の意見はこの京都では絶対ですからね。
(木内)彼女はうちを攻撃してばかりじゃないか!なぜだ…?女将さん何か恨みを買うような心当たりありませんか?恨み?そんなのあるわけないでしょう。
芸妓時代にでも何かあったんじゃないですか?この佐々山楼の評判が落ちたのは主人が亡くなり清彦さんあなたが後を継いでからですよ。
店の評判が落ちたのは料理のせいですよ。
ええ?私はあなたに呼ばれてここへ来た人間ですよ。
いちいち口を挟むあなたの指示に従って料理も決めている。
辞めろっていうならいつでも辞めますよ。
そういう意味で言ってるんじゃないですよ。
まあ確かに料理の質が落ちたと言われているのは事実ですけどね。
木内さんだったらあんたが包丁握ればいい。
あんただって料理人の端くれだったんだろう。
私は経理の責任者としてこの佐々山楼を守ってるんです。
(あずさ)これ見てください!交流会から外された事がもう記事になってるんです!
(雅子)ここここです。
ここ見てください。
「3年前に先代が亡くなり立板が代わってから明らかに料理の質が低下した」ですって。
それとここですよ!「先代の後を継いだ息子清彦氏と後妻である女将の間で内紛が絶えない」これもあの女の仕業ですよ。
(雅子)京都新報の谷弘美。
(デスク)谷君君の佐々山楼嫌いちょっと度が過ぎるんじゃないかな?うちの上にもね佐々山楼をひいきにしてる人間がいるんだよ。
なっ頼むからほどほどにしてくれ。
ほどほどにな。
私はこの町のために真実だけを書いています。
今後も改める気はありません。
君ねえ…!ほらこれ3カ月前の。
(デスク)謝罪掲載で済んだからよかったものの危うく訴訟騒ぎになるところだったんだ。
わかってんのか?私の中では裏は取れていました。
謝罪してくれと頼んだ覚えもありません。
うん!京都美食タクシー?
(石井純平)ああ。
ご苦労さまです。
状況は?
(橋本)落下現場は裏の駐車場でガイシャは5階の住人だそうです。
5階ね。
なんかありますか?
(加古川)係長。
ん?荒らされた痕跡はありませんね。
(橋本)自殺じゃないですかね?遺体にも不自然な外傷はなかったですし。
『最後の晩餐』?はい?鰻のグリルオレンジのスライス赤ワインパン…。
レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』のメニューよ。
(橋本)へえそうなんですね。
係長料理大の苦手なのによくご存じですね…。
あっ…あっ…。
これやっぱり自殺ですよ。
最後の晩餐を済ませて自ら命を絶ったって事じゃないですかね?簡単に決めつけないの。
念のため周辺の聞き込み。
暁ちゃん行くよ。
曽根原健二の死聞きましたか?警察はほぼ自殺と見ているようですが私にはそうは思えません。
(弘美)「事件の詳細をもう少し調べてから報告します」わかったわよろしく。
わあ〜!やっぱりこの時期は賀茂なすだよね。
ああ修ちゃんのためにいいのとっといたよ。
ヘヘヘ…いつもいつもすまないね。
じゃあね満願寺とうがらしと大根もいっちゃおうかな。
あっ今夜はなすの煎りだしだね。
わかる?わかるよ。
(2人の笑い声)あれ?あの人って…。
ああ料理評論家の浅野美和子だよ。
知ってるだろ?うん。
僕さ嫌いじゃないんだよねあの人の辛口の批評。
うんああやってちょくちょく旬の食材かなんかの取材に来てるんだよ。
へえ。
仕事熱心だね。
失礼ですが美食タクシーの北山さんですよね?あっ…はい。
美食タクシードライバーの北山修一郎です。
「京都美食タクシーブログ」いつも楽しく拝見してます。
わあ!光栄です。
ありがとうございます。
あの私も浅野先生の評論いつも楽しく拝見しております。
ありがとうございます。
お買い物ですか?はい旬の食材に目がなくて…。
今日ねすごくいい賀茂なす入ってるんですよ。
先生もいかがですか?ええ…。
急にお声をおかけしたりしてすみませんでした。
ああいえ…。
あのお会い出来てよかったです。
私もお会い出来てよかったです。
またそれじゃあ…。
(2人)失礼します。
あの人買い物した事ないんだよね。
えっそうなの?うん。
自分では料理作らないみたいだね。
へえ…でも彼女元料理人だって聞いた事あるけど。
ふーん…。
ああはい。
あっ大根もね。
はい。
(桜井博史)お疲れです!お疲れです。
(桜井)ねえねえねえ!俺乗せたんだよあの曽根原っていう料理評論家!
(犬養瑠依)えっ自殺しちゃった人?
(桜井)そうそう前の晩に園から乗せたんだよね。
やけに上機嫌で鰆食べた話なんかしてたな。
あんなに明るかった人が自殺なんかしちゃうんだね。
鰆?鰆っていえばこの時期一番美味しい出世魚でしょ?自殺しようって人がそんなもの食べるかな?
(岩倉直仁)そんな事いちいち気にしないんじゃないの?たまたま食べただけでしょ。
いやいや確か「俺もどんどん出世してやるんだ」なんて騒いでたよ。
鰆?鰆鰆…。
皆さん休憩時間随分長くお取りになってますね。
働かなければ成績は伸ばせませんよ。
成績が伸びなければ給料も上がらないんですよ。
(桜井)はい承知しております。
(田所)わかりますか?はいはいはい…働きましょう。
はいはいはいはい…。
北山さん…。
はい。
何をしてらっしゃるんですか?あなただけ特別扱いってわけにはいかないんですよ。
ねえ所長鰆っていえば出世魚ですよね?はあ?
(携帯電話)ああ失礼。
いやあなたの質問…。
お客様かも…。
はいもしもし。
京都美食タクシー北山修一郎でございます。
「明日スタンダードコースを予約したいんですけど」明日ですか?ちょうど空いておりました。
ありがとうございます。
ではまず…。
「お客様のお名前とご住所をお伺い致します」鈴木明美です。
住所は東京都世田谷区浜町4の28の23。
「東京世田谷にお住まいの鈴木明美さんですね」では次にご希望の観光スポットグルメなどをお伺い致します。
観光スポットはどこでも構いませんがグルメは料亭佐々山楼の白妙というコースをお願いします。
佐々山楼の白妙コースですねかしこまりました。
続きましてお客様の食べ物の好き嫌いアレルギーなどをお伺いしたいと思います。
何かございますか?好き嫌いはありませんがアレルギーはあります。
「それでは明日午前9時に京都洛北ホテル正面にお迎えに上がります」よろしくお願いします。
えーと…佐々山楼の白妙コース。
「春過ぎて夏来にけらし白妙の」…。
お客様ですか?はい。
明日空いてたとこにポーンと入りました。
お忙しい事は何よりです。
ヘヘヘヘ…。
えーと…あっ出た出た。
白妙コースは…。
えー胡麻豆腐の先付から椀物が鱧。
うんうん…。
お造りあおり烏賊ね。
へえ…。
で天ぷらにそして看板料理の甘鯛。
おおうまそうだ!へえ…。
えっ?最近ちょっと評判悪くないか?これ。
(あずさ)毎度ありがとうございます。
佐々山楼でございます。
ご予約頂いている京都美食タクシー様ですね。
ご予約の変更ですか?はい承ります。
鈴木明美様でいらっしゃいますか?はい。
お待たせを致しました。
神社仏閣名所旧跡美味しいお店に素敵なお土産そして京都の心優しき人々…。
早くして頂けませんか?はいかしこまりました。
早くしてください。
あっはい!観光スポットは新緑をテーマに選ばせて頂きました。
東福寺と嵐山と松尾大社をご案内させて頂きます。
佐々山楼は大丈夫ですか?はい。
お昼ちょうどに白妙コースを予約してあります。
秋の紅葉も有名なんですけどねこの通天橋から見たこの雲海のような新緑きれいでしょう?そうですね…。
こちらが二年坂といいましてここで転ぶと2年以内に死んでしまうという怖い言い伝えがありますから足元気をつけてください…。
若狭の塗箸ですね。
ご興味おありですか?いいえ。
(雅子・あずさ)いらっしゃいませ。
あなた…!予約してました京都美食タクシーの北山です。
(弘美)今日は私の予約ではなくこの方の京都美食タクシーの予約でしょ。
入れてもらうわよ。
案内して。
あっ…はい…。
どうぞごゆっくり…。
京都新報の?はい谷弘美です。
京都美食タクシーの名前で予約したんですよ。
そんな手を使ってまで…。
何を企んでいるのかしら?気にする事はありませんよ。
いつもどおり最高の料理を出すだけだ。
おい手休めるな。
はい!先付の胡麻豆腐のジュレ掛けでございます。
(ため息)うっうう…!うう…!!どうかしました?お客さんが倒れたとかで…。
倒れた?救急車!お客様失礼致します。
すみません失礼致します。
どうかしたんですか?お客様が…。
失礼します。
お…お客様!どうして?急に苦しみだして…。
(パトカーのサイレン)どうしたんですか?ううん別に…。
すいません。
ああ…!なんで?いやそれは…。
係長この怪しげな男ご存じなんですか?ええまあちょっと…。
夫…。
おっと?
(加古川)暁ちゃん暁ちゃん…。
はい!はいはい。
係長のご主人。
ええっ!?あんなの…あの方が?あの京都美食タクシーの北山修一郎です。
いつも家内がお世話になってます。
いえいえいえ…こちらこそ。
すみません東京から来たばかりで何も知らずに…。
いえいえ…。
ねえどうしてここに?亡くなったの僕のお客さんなんだよ。
えっ?そう…。
鈴木明美さんっていう東京から来たお客さんなんだけど。
えっ?ちょっと待ってください。
これ…。
(橋本)谷弘美って名前ですよ。
京都新報の記者です。
いやそうは聞いてないよ。
確認して。
はい。
すいません通ります。
通してくださいここの人間です。
失礼しました。
係長揃いました。
皆さんは亡くなられたのが京都新報の谷弘美さんだという事おわかりですよね?谷さんと皆さんが揉めていて彼女は1カ月前から出入り禁止になっていたっていう事わかってるんですよ。
(絹代)谷さんはこの佐々山楼に対して悪意を持っていたとしか思えません。
彼女の記事のほとんどは根も葉もない中傷ばかりでしたから。
その谷さんがどうして偽名を使ってまでこの店に訪れたんでしょうか?さあ…。
わたくし共にもわかりません。
亡くなられた時の状況を詳しく教えてください。
何を食べていたんでしょう?料理に毒でも入っていたって言うんですか?参考までにお聞きしています。
コース料理の白妙の4品目を食べた後急に具合が悪くなったようで…。
4品目というと?特製コロッケですが。
(さとみ・修一郎)コロッケ?コロッケが引っかかったようだけどどうして?うん…事前にメニュー調べたんだけどコロッケなんてなかったんだよね。
うーん…ちょっと板長さんに確かめてみる。
それあなたの仕事?ううん。
わかってるならどうぞお引き取りください。
捜査へのご協力ありがとうございました。
あのさあ…僕の大切なお客さんなんだよ。
僕がここを予約して僕がここにお連れしたんだよ。
だから他人じゃないんだよ。
ご遺体は解剖に回したし料理は全て科捜研に回した。
ここからは私たち警察の仕事。
あなたの気持ちはわかってるから私の気持ちも理解して。
(ため息)うん頼むよ。
彼女は殺されたんだ佐々山楼に。
(ため息)ああ〜腹減った。
ただいま。
こんな時間に何?もう売り切れ。
あんたに食べさせるものなんかないよ。
それがかわいい一人息子に言う言葉かね。
かわいいもんか!父さんお帰りなさい。
おう香奈来てたか!会いたかったぞ。
(鈴乃)おおげさだねえ。
先月も来てたじゃない。
神戸なんかお隣みたいなもんだよ。
なあ大学どうだ?変な男とかいないだろうな?女子大だからね。
アルバイトは?ほら出版社のバイト始めるって言ってたろ?順調にグルメライターの修業中。
あっ今日はそのバイト仲間も一緒。
志保と真弓。
(小山志保)こんにちは。
(篠田真弓)こんにちは。
これはこれはようこそ京都へ。
2人とも父さんの「京都美食タクシーブログ」の大ファンなんだよ。
そうなんだ!ハハハ…照れちゃうなあ。
(鈴乃)なんにする?おなか空いてるんでしょ。
ああそっかそっか…。
えっとね今日はね肉じゃが定食に塩鯖つけちゃおうかな。
はいよ〜。
香奈ねえちょっとちょっと…。
(香奈)うん?何?今のアイコンタクト。
肉じゃが定食に塩鯖を頼むのはひどく落ち込んでいるけど無理して明るく振る舞っている時。
わかりやすい父なの。
へえ〜おばあちゃんはそれをわかっていて腕を振るっちゃうわけね。
そう。
お袋の味は父の元気のもとだから。
うん?どうかした?ううんなんでもない。
あっお父さん。
京都美食タクシーって発想素晴らしいですよね。
どうやって思いついたんですか?それ聞いちゃ駄目…。
えっ?よくぞ聞いてくれました!長くなる…。
さかのぼる事45年。
当時私の父は個人タクシーのドライバーをしてました。
私は休日に父のタクシーに乗せてもらい名所旧跡を訪ね歩き美食の数々を堪能し京都の人々と触れ合ってきました。
そしてその日々に至高の喜びを感じていました。
それから10年の月日が流れ私は東京の商社に就職したもののグルメがたたりとうとう料理人を志し1年で会社を辞めてフランスへ渡り6年間料理人修業を行いました。
その証拠が…。
これ。
おお〜。
しかし父の訃報を受けて帰国した際に改めて京都の魅力に気がついたんです。
(香奈)「料理だけでは京都の全てを語る事は出来ない」。
「父とのドライブで感じた喜びは料理だけではなかった」。
そう!そのとおり。
そして私は父と同じタクシードライバーになったのです。
今から24年前の事です。
そうだったんですか…。
波瀾万丈だったんですね。
まだ終わってないし。
そして平安中央タクシーに就職しましたが20年経った時またまた大きな転機が訪れました。
社内で新事業の公募があったんです。
私は父との思い出を胸に京都観光案内に美味しい飲食店を加えて回る独自の貸切観光タクシー京都美食タクシーの運営企画を考案しました。
それが見事採用され以来唯一無二の京都美食タクシードライバーとなったのであります。
はい終わり。
(拍手)何かご質問は?
(鈴乃)はいはいそこまで。
出来たわよ。
うわあさすがお袋。
うまそう!いただきます!
(鈴乃)どうぞ。
うんうまい!ねえ香奈のお母さんって京都府警のすごいエリートの美人だよね?
(志保)どうしてあのお父さんなの?それは私も謎。
うまい!
(橋本)谷弘美と佐々山楼との軋轢は相当のものだったようです。
彼女の記事が原因で3カ月前に料理人が辞めさせられてます。
これです。
この男が産地の偽装をしたという事?どうなんですかね?石井純平っていうんですけど記事にはこいつの名前は出ていませんしその記事自体裏が取れていなかったって事で京都新報が謝罪して片がついています。
でも彼は辞めさせられたんでしょ?詳しい事情はわかっていませんが辞めたところを見るとなんか疑わしい点はあったんでしょうね。
いずれにしても彼女の記事が原因で失業したんですから相当恨んでいたと思いますよ。
この男から話聞ける?それが行方が掴めないんです。
引き続き捜してみます。
うん。
(加古川)係長!谷弘美の解剖結果出ました。
ご苦労さま。
うん?これはどういう事?ごちそうさまでした。
はい。
う〜ん満足。
あらきれいに…。
はい。
ありがとう。
(香奈)食べたばかりなのにグルメチェック?ちょっとね気になる事があってさ…。
えっ?蕎麦の実?どうしたの?まさか…。
何?仕事中よ。
あのさ谷弘美さんの死因ってなんだったの?教えて。
だからそれは私の仕事。
首突っ込まなくていいから。
「お願い頼む!教えて」解剖の結果がさっき出たばかり。
死因は食物アレルギーによるアナフィラキシーショックの窒息死よ。
食物アレルギー?「ええ。
私もどういう事かって気になってるの」蕎麦の実だ…。
蕎麦アレルギーなんだよ。
コロッケに蕎麦の実が入ってたんだよ!どういう事だよ?父さん?もしもし?もしもし?何をしようっていうの?お義母さんや香奈が心配してたわよ。
コロッケを確かめにきたんだ。
どういう事?わかるように説明して。
谷弘美さんは蕎麦アレルギーだったんだ。
僕はねお客様の健康と安全第一に考えてお客様のアレルギーに関する事は必ず聞く事にしてるんだ。
ええそれは知ってるけど…。
で彼女は蕎麦アレルギーだって答えたんだよ。
好き嫌いはありませんがアレルギーはあります。
重度の蕎麦アレルギーです。
重度の蕎麦アレルギーですね。
かしこまりました。
だから予約入れた時にその事をしっかりと伝えたしコースの中に蕎麦を使った料理がない事も確認したんだよ。
でもね古いクチコミを見ていったら佐々山楼のコロッケについての記述があって1年くらい前まで特製コロッケっていうやつには蕎麦の実を使っているってふうに書いてあったんだよ。
彼女が最後に口にしたのはその蕎麦の実入りのコロッケ…。
だからそのコロッケを確認しにきたんだ。
一緒に来て。
うん。
蕎麦の実が使われてたんですか!?ええ使ってましたよ。
だってちゃんと伝えたじゃないですか!予約入れた時に蕎麦アレルギーだって…。
えっ?はい確かにそう聞きました。
じゃあどうして…。
2度目のお電話でアレルギーの件は取り消されたじゃないですか!2度目の電話?したの?いやいやいや…してない。
ねえそれいつですか?どんな内容でした?夜の7時半ごろです。
白妙コースのメニューの確認があってコロッケの事も聞かれたので今は蕎麦の実を使ったコロッケはお出ししていないと説明したんですが…。
「お客様の大好物だから変更してくれ」。
「アレルギーはこちらの勘違いだったから心配するな」。
そう言われました。
なんだよそれ…。
僕のこの声じゃなかったでしょ?そう言われても…。
昼間電話した京都美食タクシーの者って言われたから…。
ちょっとくぐもった声だとは思いましたけど…。
ああそれは声色変えてるんだ。
気づかないのは無理もないわ。
別の誰かがあなたを騙って電話したのね。
そいつは蕎麦アレルギーの彼女に蕎麦の実を使ったコロッケをわざと食べさせた。
美食タクシーの名を使って殺したんだよ!誰だ?そいつ!落ち着いて。
その人間は特製コロッケに蕎麦の実が使われていた事と谷弘美さんの蕎麦アレルギーを知ってたって事ね。
蕎麦の実が使われている事はここで働く人間なら誰でも知ってるし常連のお客様だってご存じですよ。
でもあの人が蕎麦アレルギーだったなんて知りませんでしたよ。
知ってたら出しませんよ!あの…。
思い出したんですけど…。
2度目の電話の時園囃子のメロディーが聞こえました。
練習しているような音でした。
園囃子?まだ時期的には早いわね。
いやいや…この時期から稽古してるっていうと夕凪鉾のある四条錦町だな。
僕になりすました男は四条錦町から電話したんだ。
ちょっと…待って。
どこ行こうっていうの?四条錦町。
落ち着いて。
行ったってどうにもならないでしょう。
でも…。
皆さんからお話を伺いたいので集まって頂けますか?
(2人)はい。
(ノック)乗せて。
ありがとう。
みんな谷弘美さんの蕎麦アレルギーを知らなかったそうよ。
まあ知っててもそうは言わないでしょうけどね。
四条錦町に設置されている防犯カメラ全て調べるように命じたわ。
だからこれ以上気にかけないで。
悔しいんだよ…。
僕のさこの京都美食タクシーが殺人事件に利用されて…。
大切なお客様が犠牲になったなんてさ…。
僕はねこの町のよさを京都の素晴らしさをさより多くの人に知ってもらいたくて誇りを持って走らせてきたんだよ。
出して。
えっ?今の季節のおすすめの場所経由で京都府警まで。
かしこまりました。
シートベルトお願いします。
いつ以来かしら?ここに乗るの。
出会った時以来かな。
ありがとうございました。
前の車追って!えっえっ?あのえんじの車よ。
早く出して!はいはい。
ひょっとして刑事さんですか?ええそうよ。
じゃああの前の車に乗ってるのは?凶悪犯よ。
凶悪犯!?あいつですか。
(ドアが開く音)ああっ…。
あっ!ああっ…。
なんなのよ!本当にもう!ちょっと待ってちょっと待って!話す話す…痛い…イタッ!
(男性)ちょっと待って…ちょっと待って!何が「待って」よ!ああっ!なんだよ?お前!黙れ凶悪犯!加勢しますよ刑事さん。
刑事さん?さとみお前刑事なのか?花嫁修業中の家事手伝いって言ったよな?お前…俺を騙してたのか!?騙してたのはあんたでしょ!笑っちゃうでしょ?刑事が結婚詐欺に遭ったなんて…恥ずかしくて誰にも言えない…。
あの…腹減ってません?えっ?この近くにとっても美味しいあんみつ屋さんがあるんですよ。
でもそこっていつもカップルだらけで男一人だとちょっと入りづらいんですよ。
もしよかったらこんな哀れな僕にお付き合い頂けませんか?喜んで。
余計な事思い出さなくていいからちゃんと運転して。
はいはい。
(携帯電話)
(携帯電話)はい北山。
加古川です。
谷弘美絡みじゃなくて転落死した料理評論家曽根原健二のほうなんですけど。
ああ…曽根原健二。
(加古川)「はい。
付近の住民が曽根原が転落する少し前に…」ベランダに2つの影を見たそうなんです。
何者かに突き落とされた可能性があるって事ね。
もうすぐ戻るから。
曽根原健二っていえば佐々山楼を持ち上げる記事ばかり書いていたんだよね。
そうなの?うん。
佐々山楼の事をネットで調べたら気づいたんだ。
佐々山楼に関わっていた人間が2人続けて亡くなったって事か…。
曽根原健二って自殺じゃなかったの?あなたが気にする事じゃないわ。
いや気になる事があるんだよ。
鰆…鰆食べていたんだよ。
鰆?出世魚ね…。
これから自殺しようって人がさそんなもの食べて俺も出世するぞって騒ぐのおかしいと思わない?つまりさこれは自殺じゃないって事だよ。
佐々山楼に関わった人間が2人連続で殺されたんだよ。
これってさ連続殺人ってやつだよ。
これってさ連続殺人ってやつだよ。
そういう事素人が軽々しく口にしないで。
いい?亡くなった2人は確かに佐々山楼に関わっていたわ。
でもその関わり方は全く違う。
うん。
曽根原健二は好意的で谷弘美さんは敵意むき出しだった。
そう。
2つの事件を結びつけるのは強引よ。
う〜んでもさ出世魚がなあ。
それを言うなら最後の晩餐はどう説明するの?最後の晩餐?あっ…なんでもない。
忘れて。
忘れられないよ。
どういう事?曽根原健二は最後の晩餐を済ませて転落死したのよ。
おお〜。
鰻のグリルにオレンジのスライス赤ワインにパン…。
『最後の晩餐』だね。
はいそこまで。
あっ…。
とにかくこれは私たち警察の仕事。
同じ事何回も言わせないで。
はーい。
今の季節のおすすめの場所きれいだった。
ありがとう。
うん。
曽根原健二の転落死佐々山楼の事件との関連も視野に入れて捜査を進めましょう。
はい。
係長これ見てください。
四条錦町の防犯カメラの映像なんですけどこの男…。
佐々山楼をクビになった石井純平?似てますね。
時刻は?
(橋本)19時32分。
ちょうど佐々山楼に2度目の電話があった時間です。
谷弘美の記事のせいでクビになった事を恨んでの犯行ですかね?でもこれだけじゃ逮捕状は取れないわ。
とにかく身柄を押さえて任意で話を聞く事よ。
(橋本・加古川)はい。
じゃあ加古川はあっち行って。
(加古川)はい。
私たちは保存会行こう。
(橋本)はい。
すみません警察ですが…。
昨日の夜7時半ぐらいにこの男見かけませんでしたか?
(男性)さあ知らないですね。
40代後半ぐらいなんですけどね…。
ああすみません警察です。
はい。
昨日の7時半ごろなんですけどこの男見かけませんでしたか?えっと…いや見てないです。
そうですか。
ありがとうございます。
ねえねえ捜査のほうはどうなの?進んでる?あなたまで首突っ込まないでいいの。
お義母さんこれちょっとしょっぱくない?塩分取りすぎちゃうでしょ。
文句があるならたまには自分で作りなさい。
本当出来が悪い嫁なんだから。
ああ…出来の悪い嫁としては小うるさい姑の楽しみ奪うわけにいかないの。
仲がいいんだか悪いんだかこの嫁と姑は…。
そこ突っ込まないの。
(携帯電話)
(携帯電話)朝からうるさいわね。
仕事なのしょうがないでしょ。
(携帯電話)はいもしもし。
(橋本)「橋本です。
気になる人物が一人浮上しました」浅野美和子という料理評論家です。
浅野美和子?つまり浅野美和子は死亡した曽根原健二と谷弘美2人と関わりがあったという事ね。
はい。
曽根原とは同じ料理評論家としてたびたび対立していたし谷弘美とはかなり親しかったようです。
それに浅野美和子自身も佐々山楼を徹底的に攻撃していますしおまけに事務所は四条錦町にあります。
事務所が四条錦町に?わかった。
あなたはそのままそこにいて。
すぐに行く。
うわあっ!首突っ込まないでって言ったでしょ?いやいや…さとみ大変だろうなあと思って…。
大変だけど…あなたの助けはいらないわ。
だよね。
(店内の音楽)ありがとうございます。
浅野美和子さんですね?京都府警捜査一課北山と申します。
曽根原さんはただの同業者谷弘美さんは仕事で知り合った友人です。
お二人が亡くなられた事には大変驚いています。
しかし刑事さんがなぜ私を訪ねてきているのか理解に苦しみます。
あらゆる可能性を視野に入れて捜査を進めていますのでどうかご協力ください。
この人物はご存じですか?佐々山楼を解雇された料理人ですね。
はい。
石井純平さんです。
以前佐々山楼で顔を見かけた事はありますがそれ以上の事は何も知りません。
この四条錦町で目撃されているんですが…。
さあ…私には関係ありません。
この男が何かしたんですか?事件に関与している可能性があるとしか今は申し上げられません。
そうですか。
いずれにしろ私には関係ありませんしこれ以上お話しする事はございません。
ご協力ありがとうございました。
(神宮寺幸造)はいよ。
あっすいません。
いただきます。
雑念を捨てて食ってくれよ。
そうしなきゃ味はわからん。
そうですよね。
考えるな感じろですよね。
冷めちまうよ。
はい。
いただきます。
うまい…!やっぱり京都一いや日本一。
さすがは元三ツ星のフレンチシェフ。
おじちゃんいつものちょうだい。
はいよ。
ネギ多めの麺固め少なめスープ熱々だね。
注文多すぎだろさとみ。
あっ…来てたの。
うん。
元気ないけどなんかあったの?あっ首突っ込んじゃいけないんだった…。
わかってるんならおとなしく食べたら?はーい食べてまーす。
(神宮寺)麺とスープ。
ともに一級品であろうがそのバランスが崩れた時出来上がったラーメンは食えたもんじゃない。
2人のバランス俺は嫌いじゃないがね。
マスター…。
またそんな理屈っぽい事言って…。
そんなだから暇なのよ。
納得いくスープが出来ないからお休みなんてやってたら駄目だって言ったでしょ。
あのねさとみマスターはねラーメン1杯に命をかけてるんだよ。
こう見えてもねマスターはねフレンチの…。
(咳払い)まあ脱サラにしては味は上出来だけどね。
汗かいてるよ。
拭いたら?うん。
あれ?まったく…。
あっ…。
ああ落っこっちゃったよ。
この男見た事あるな…。
どこで?谷弘美さんを乗せた時ホテルの表で…。
彼女とアイコンタクト取ってた。
この男が?うん。
誰?石井純平。
谷弘美さんの記事で佐々山楼を解雇された料理人。
あなたの名を騙って佐々山楼に電話したと思われる男。
えっ?つまり弘美さんを殺した男?いやいや待ってよ。
彼女この男とアイコンタクト取ってたよ。
この2人どういう関係なんだろう?調べてみるわ。
うんうん…。
出来たけどどうする?もちろん頂くわ。
腹ごしらえしないとね。
いただきまーす。
う〜ん美味しい!マスター腕上がったんじゃない?石井と谷弘美さんの関係ですか?はい。
あっありがとうございます。
石井は彼女の事恨んでいると思いますけど。
彼女の食材の産地偽装疑惑の記事で?ええ。
私たちはあの記事をもとに念のため調べて石井の関与を疑い本人を問いただしました。
(絹代の声)彼はもちろん否定しましたし偽装などありませんでした。
しかし疑われた事がよほど彼のプライドを傷つけたのか勤務態度は極端に悪化し無断欠勤が続いたので辞めてもらいました。
だから彼女の事恨んでいると思いますよ。
2人の関係は本当にそれだけだったんでしょうか?他にどういう関係があるというんですか?石井は彼女に惚れていたのかもしれません。
どういう事ですか?彼女が何度か取材に来たんですがその時から妙に意識していました。
彼女は石井のそんな感情を利用して情報を聞き出し記事にしていたのかもしれません。
石井は彼女に気に入られようと調子づいてありもしない情報を流したんでしょう。
そんな話私聞いてませんよ。
(神田)あくまで憶測ですから…。
結局石井さんはそれが原因でクビになったわけだし利用されたと知ったら彼女を恨みますね。
この店を裏切ってありもしないデマを流してその結果自分がクビになったんだ。
それは自業自得ですよ。
無断欠勤が続いたのも私たちに対して後ろめたかったからかしら?そういえば私曽根原先生から石井には気をつけなさいって言われたんです。
その時はなんの事だかわからなかったんですがもしかしたらその事だったのかも。
亡くなった曽根原さんが石井さんの事を?ええ。
谷弘美は石井純平を味方につけて佐々山楼を攻撃した。
佐々山楼と親しくしていた曽根原健二は石井が内通者だと知り木内康弘に石井に注意しろと忠告した。
石井は曽根原に裏切り者だと気づかれたと知って自殺に見せかけて殺害した。
料理人の石井なら『最後の晩餐』の料理も簡単に作れるな。
石井は次に自分を利用した谷弘美を佐々山楼で殺害する事にした。
(橋本)彼女に京都美食タクシーで佐々山楼に乗り込ませたのもコロッケの件で佐々山楼に電話を入れたのも石井に間違いありません。
(橋本)これがその証拠です。
(石井)蕎麦の実のコロッケが入らないのは困ります。
お連れするお客様の大好物なんですから変更してください。
蕎麦アレルギー?それはこちらの勘違いでしたので心配ありません。
谷弘美は石井が仕掛けた罠だとも知らずに佐々山楼に乗り込んでコロッケを食べて死んだんです。
うっうう…!
(加古川)つまり曽根原健二と谷弘美を殺害したのは石井純平という事か。
はい連続殺人ですこれは。
石井純平の周辺を徹底的に洗い直し行方を追います。
(一同)はい。
はいいってきまーす。
いってきまーす。
(田所)北山さん。
はーい。
お客様ですよ。
えっはい。
先生…。
どうぞごゆっくり。
またまた不釣り合いな美女ですか。
うらやましい事で…。
今日は美食タクシーの申し込みに伺いました。
先生が私のタクシーに?はい。
料亭佐々山楼で亡くなった京都新報の谷弘美さんは私の友人でした。
はいそういうふうに聞いて…。
あっ…。
京都府警の北山さんっていう刑事さん奥様だそうですね。
えっ…。
同じ名字なのでもしやと思い先ほど所長さんにお聞きしました。
あっはあ…そうだったんですか。
出来れば佐々山楼に向かうまでの谷弘美さんと同じルートをたどってほしいのですが…。
同じルートを?弘美さんがどのような思いでいたのか知りたいんです。
せめてもの供養の意味で。
かしこまりました。
(呼び出し音)
(電子音声)「留守番電話サービスに接続します」「合図の音がしましたら伝言をどうぞ」弘美さんもここを歩いたんですね。
はい。
どんな様子でした?えっ?少しでも弘美さんの事を知りたいだけなんです。
何もなかったらいいです。
心ここにあらずという感じでしたね。
佐々山楼の事ばかり気になさってて…。
そうですか。
谷弘美さんは佐々山楼に何をされに行ったんでしょうかね?取材だと思いますが…。
ああ覆面取材みたいな…。
でも相手はすぐに弘美さんの事に気がついて…。
あれじゃ覆面取材にはならないですよね。
弘美さんの佐々山楼に関する記事を読んでいて気がついた事があるんですよ。
厳しい批判の中に愛情のようなものを感じたんです。
愛情?はい。
佐々山楼に立ち直ってもらいたい思いみたいなものを感じました。
あっそれは先生の批評と同じです。
私も?はい。
若狭の塗箸ですね。
それ弘美さんも手に取られました。
そうですか。
はい。
きれいですものね。
(石井)俺は警察に目をつけられたようだ。
金が必要だ。
用意してくれるか?いくら?一生遊んで暮らせる金だよ。
わかってるのか?俺が捕まったらあんたも終わりだぞ。
(石井)うわあっ!
(女性の悲鳴)発見されたのが21時10分。
死亡推定時刻は21時前後です。
(橋本)転げ落ちた時に相当ぶつけたようですね。
凶器らしきものは見当たらないし死因の特定は解剖待ちだな。
大失態ね。
私たちが石井の身柄を押さえていれば…。
誰がなんのために石井を殺したんでしょう?今言えるのは佐々山楼に絡んで3人もの人間が亡くなったという事だけ。
佐々山楼の関係者をもう一度調べ直しましょう。
はい。
よし。
目撃者捜してきます。
石井純平の足取りと周辺も洗い直して。
(一同)はい。
(加古川)いくぞ!せっかく父さんが作ったこんな美味しい料理があるのに母さん帰ってこられないだろうね。
うん…。
さとみもショックだろうなあ。
自分たちが追ってきた男まで殺されてさまだまだ事件の解決地点は遠いって事だな。
うん…。
でもさこういう大変な時こそ美味しいものを食べて元気になってもらいたいんだよなあ。
どうかさとみが無事に事件の解決地点に到達出来ますように。
フフ…。
なんだよ?父さんと結婚した母さんの気持ちわかるなあ。
そりゃあイケメンだからだよ。
ハハハ…。
だね。
おやすみなさい。
おやすみ。
《何がどうなってるんだ?》《曽根原健二と谷弘美を殺したと思われる石井純平が誰になぜ殺されたんだ?》昨日の21時ごろですか?はい。
皆さんどちらにいらっしゃいましたか?ちょうど忙しい頃だしみんなてんてこ舞いで働いてましたけど。
(橋本)皆さんが確実にこちらにいらっしゃったと証明出来ますか?ご覧のように広い店ですし人の事までは気にしてないけど…。
誰もがそっと抜け出し再び戻ってくる事が可能だったという事ですね。
お待ちください。
この店の誰かが石井を殺したとでもおっしゃりたいんですか?参考までにお聞きしているんですが…。
石井さんがこのお店にとって不利になる情報を谷弘美さんに流していたとしたら皆さんにとっては許しがたい存在ですよね。
裏切り者とも言えますね。
まあ確かにそういう言い方はしましたがだからといってその程度の事で殺すはずがないでしょう。
(神田)刑事さん。
石井が殺されたのは嵐ノ森神社ですよね。
ここから嵐ノ森神社まで夜は朱雀院通が渋滞している事もありどんなに急いでも1時間はかかります。
ええ。
女将さんゆうべ観光協会の会長さんをみんなで送り出したのは何時でしたか?20時半よ。
お世話になりました。
ありがとうございました。
(絹代の声)20時半にここにいる全員でお送りしたわ。
つまり21時に嵐ノ森神社に行ける人間はいないという事よ。
全員ではありません。
確か…。
清彦さんはいなかった。
清彦さんは事務室にいたのよね?私が会長さんをお見送りして戻った時事務室で電話してましたよね?はい。
お客様の予約の電話を受けていました。
全員にアリバイがあるという事です。
係長。
お話お済みでしたらどうぞお引き取りくださいませ。
20時半に私がここに戻ってきた時清彦さんあなたはいませんでしたね?というより20時前より2時間ほどあなたを見かけていません。
どちらに行かれてたの?
(絹代)痛々しいわね。
いつ出来た傷かしら?心配しなくて大丈夫。
私あなたの母親よ。
我が子が不利になるような余計な事は口にしないわ。
ただしあなたも子供として母親に素直に従ってくれればの話だけど。
あなた後妻の私が気に入らないようだけど…。
あなただってこの家の実の子じゃないのよ。
よそ者同士仲よくやりましょう。
いいわね?
(加古川)慌てた様子の女性?それ何時ごろですか?ゆうべは残業があったので夜の9時過ぎだったと思います。
その女性の顔覚えてますか?似てると思いませんか?浅野美和子…。
ええ。
重そうな紙袋を手にしていたようです。
紙袋?解剖の結果石井の頭部の傷は転落時の致命傷だけでなく石のようなもので殴られて出来た傷もありましたよね?紙袋の中身は凶器の石…。
はい。
持ち去ったとも考えられます。
石井純平に関して新たな情報です。
ここ数日の足取りを追ったんですけど2日前に意外な人物と会っていました。
料理評論家の浅野美和子です。
四条錦町の喫茶店の店員が2人を覚えていました。
親しげに話していて浅野美和子が石井に金のようなものが入った封筒を渡したようです。
また浅野美和子か…。
またって?あっ!浅野美和子じゃないですか!嵐ノ森神社の近くで目撃された女性だ。
じゃあ浅野美和子が石井を殺したんですか?どういう関係なんですか?この2人。
2人が喫茶店で会っていたのは谷弘美が殺害された次の日。
我々が浅野美和子を訪ねた直前です。
それ以上の事は何も知りません。
私たちに嘘をついてまで隠さなければならない関係だったという事よ。
浅野美和子の身柄を押さえて話聞きましょう。
簡単に自供する相手じゃない。
もう少し裏を取ってからよ。
浅野美和子さんがあなたのタクシーに?うん。
谷弘美さんの供養をしたいから同じルートを回ってほしいって言われた。
ふ〜ん。
その時何か気になった事はない?首突っ込ませてるよ。
放っといて食べなさい。
特に気になった事ないけどなんでそんな事聞くの?参考までによ…。
どんな参考?そういう事突っ込まなくていいの。
決まり文句なんだから。
もしかして石井純平の事件と何か関係が…?そうなの?彼女と石井純平の間に金銭のやり取りがあったようだし石井殺害現場近くで凶器の石らしきものを手にしてた彼女が目撃されてたわ。
それって思いっきり怪しくない?あなたはいいの。
さあこっちはそこまで話したんだからそっちも話して。
話してっていったって特に気になった事ないんだよな…。
本当にないの?ごめん。
ほらあなたたちも早く食べちゃって。
せっかくのお袋の味冷めちゃうよ。
箸だ!お箸?若狭の塗箸。
弘美さんも美和子先生もなぜか若狭の塗箸を気にしてた。
谷弘美さんは福井県若狭の出身だから故郷若狭の名産品を手にするのはわかるけど…。
浅野美和子先生も若狭出身?いやそれはわからないんだよ。
美和子先生は経歴を一切公開してないからね。
2人の関係気になるわね。
その辺から調べてみようかしら。
お義母さんごちそうさま。
今日のは美味しかったわよ!塩加減もバッチリ!
(鈴乃)まあ何がバッチリよ。
僕も気になるなあ。
あのタイミングで同じように塗箸を気にしたってどういう事なんだろう?香奈。
若狭までお願いしまーす。
…って言わなくても行くつもりでしょ?何…降りなさい。
乗車拒否?まずいんじゃない?さとみに似てきたなあお前…。
しょうがない…。
幼い頃ご両親を亡くした弘美さんはここで育ったらしいよ。
どうも大変お待たせ致しました。
すみません。
これが当時弘美ちゃんが作っていた学園新聞なんですよ。
どうぞ。
へえ〜。
よかったら…。
わあ〜しっかりしてますね。
これ小学校3年生が一人で?はい。
幼い頃から記者になる素養があったんでしょうね。
周りのみんなに気配り出来る優しい子だったんですよ。
まさか亡くなるなんて…。
「おせち料理コンテスト」だって。
どうしたの?ここ名前…。
「はせべきよひこ」…。
うんもしかして…。
この記事を見た方がこの優勝者の子をとっても気に入ってくれて養子に迎え入れてくれたんですよ。
それって佐々山楼ですか?申し訳ありません…。
そういう事はちょっとお答え出来ないんですよ。
間違いないよこの子が佐々山清彦さんよ。
うん…。
一つだけ教えてくれませんか?
(園長)はい。
この子は弘美さんと仲よかったですか?ええとっても。
みんなどうですか?ちゃんと出来てるかな?
(園長)よしよし。
父さん。
はいよ。
いただきます。
ねえ27年前に清彦さんが佐々山楼に引き取られ弘美さんと離れ離れになったとしてもお互いの事忘れてなかったはずだよね?うん。
じゃあどうして弘美さんは佐々山楼を攻撃するような記事ばかり書いてたんだろう?厳しい記事の中にもね愛情があるんだよ。
幼なじみが後を継いでから質が低下した佐々山楼になんとか立ち直ってもらいたいって思いみたいなものがあるんだよ。
それは美和子先生も同じだ。
えっ?じゃあ美和子先生も佐々山楼に特別な思いがあったっていうの?うん…。
27年前と言ったな?はい。
料理人浅野美和子が包丁を置いたのも27年前だ。
えっ?その8年前に彼女には天才と呼ばれた一流の料理人の恋人はいたが結婚間近で亡くしている。
それから数年後彼女はその悲しみから立ち直りその恋人の遺志を継ぐかのように彼から伝授された料理の数々でその名を馳せた。
しかし27年前突然彼女は料理人を辞め評論家の道に進んだ。
その理由を知る者はいない。
じゃあ美和子先生は27年間料理に封印をしているって事ですか?ねえマスターなんで詳しいの?脱サラにしては腕がいいって母さんから聞いてるんだけど。
まあその話はひとまず置いておこう。
彼女が作るその恋人から伝授された甘鯛を使った料理は天下一品だったらしい。
甘鯛…。
甘鯛といえば佐々山楼のメイン料理だ。
美和子先生が得意だった甘鯛が佐々山楼の…って偶然か?私清彦さんが佐々山楼に引き取られた時期と美和子先生が料理人を辞めた時期が同じ27年前っていう事も引っかかる。
うん…。
(神宮寺)誰にだって人に言えない過去の一つや二つはあるもんだ。
もしかして美和子先生は…。
あなたの推測ありうるわね。
香奈まで巻き込んで首突っ込んだ上に私たち警察の先を越した事は腹立たしいけど貴重な情報をありがとう。
ねえ石井純平を殺したのってやっぱり美和子先生なのかな?目撃証言がある以上今は最有力容疑者よ。
死因はなんだったの?致命傷は神社の階段から転げ落ちた時の脳挫傷だったわ。
(石井)うわあっ!あっ…。
石で殴られたせいじゃなかったって事?おそらくね。
でも美和子先生が石井を殺す動機ってなんなんだ?これから調べるわ。
それからもう一つ気になってる事があるんだよな。
曽根原を殺したの本当に石井なのかな?違うと言いたいの?あの…最後の晩餐の写真もう一回見せてくれる?ちょっと引っかかっている事があるんだよ。
確かにこれは『最後の晩餐』の料理なんだけどねこれを石井が作ったとすると引っかかる事があるんだよ。
何が引っかかるの?このオレンジのスライス。
オレンジ?うん。
石井が佐々山楼にいた頃の料理の写真がサイトにいくつか掲載されてるんだけどこのオレンジスライスと石井のとは全然違うんだよ。
これはかなり特徴があるから誰かのオリジナルだと思うんだな。
別の誰かが調理をしたという事?うん。
つまり曽根原健二を殺害したのは石井純平以外の誰か…。
僕なりに調べてみるよ。
首を突っ込むなと言いたいとこだけど料理絡みとなると…。
僕の出番だね〜。
状況は報告してよ。
了解。
いってきます。
うん。
お願いします。
このオレンジのスライスの仕方見た事あります?うちの切り方はこんな感じです。
ありがとうございます。
写真撮っていいですか?はいどうぞ。
うちではこんな切り方をしています。
《このオレンジスライスには特徴がある》《どこかで誰かがこのスライスをしているはずだ》《フレンチイタリアン…誰なんだ?調理をしたのは…》《曽根原を殺したのは…》浅野美和子特に変わった動きはありません。
目を離さないで。
見覚えがあるんですか?誰ですか?確かコピーがあったと思うんで見てきますね。
お願いします。
北山係長。
はい。
さとみ!ちょっと何してるの!?一刻も早くこれを見せたかったんだ。
オレンジスライスやったのこいつだよ。
この人が調理をしたという事は…。
曽根原健二を自殺に見せかけて殺したって事だよ。
でその罪を石井純平に背負わせておいて殺したのもこいつだよ。
石井殺害現場で目撃された浅野美和子についてはどう説明するの?そ…それはわからない。
それにこの人に犯行は不可能よ。
なんで?石井純平死亡時のアリバイがある。
アリバイ…。
(絹代の声)21時に嵐ノ森神社に行ける人間はいないという事よ。
確かにこれ無理だな…。
そう。
アリバイが崩せない以上この人は除外するしかないの。
よし。
今の「よし」は何?駄目よここまでで十分。
これは料理絡みじゃないんだからあなたの力は必要なし。
僕の仕事はタクシードライバーだよ。
この町の道は誰よりもわかっているつもりだよ。
安全運転でね。
もちろん!《石井純平がなぜ殺されたんだ?》《このアリバイさえ崩せば…》《佐々山楼を20時半に出発する》《この時間この朱雀院通はいつも渋滞している》《ならば裏道》《そして石井純平殺害現場に死亡推定時刻の21時までに到着する》《駄目だ不可能だ》《タクシードライバーの僕でさえどんなに急いでも佐々山楼からここまでは1時間はかかる》《このアリバイさえ崩せば…》
(桜井)そんな10分で行ってくれって言われてもさ無理に決まってるだろ!でも遅れたら大事な商談逃してクビになるって言うからさこっちも知恵絞ったよ。
どうしたの?簡単だよ。
地下鉄使ってもらったんだよ。
ああ。
地下鉄なら10分かからないね。
うん。
何?修ちゃん何怒ってるの?行けるかも…。
なんなんですか?あれは…。
おお…夜でも30分あれば大丈夫だ。
全タクシーの走行記録?そんなもの見てどうしようっていうんですか?いや…まあ全タクシーといいましてもね今月の19日の21時前後に地下鉄洛陣駅の付近を走行中の…。
北山さん。
あなたは仕事をほったらかして何をしてるんですか?あっ…いやいやこれはですね統計を取って今後のために私の営業に役立てて…。
嘘ですよね?はい嘘です。
すみませんでした!正義のためなんです!僕のタクシーを利用して罪を犯した奴を許せないんです!そういう事なら最初から言ってください。
えっ?行きましょう。
すみませんね手伝って頂いちゃって…。
無駄話はやめましょう気が散ります。
はい。
あっこの車地下鉄洛陣駅近くを21時ごろ通過してますね。
あっ…所長この車両の…。
わかってます。
車外ドライブレコーダーですね。
はい…。
あっ止めてください!ああ…。
(携帯電話)もしもし?「さとみ僕」「アリバイが崩れたよ」どうやら解決地点に着いたようだ。
お迎えに上がりました。
本日お客様をご案内させて頂きます京都美食タクシードライバー北山修一郎でございます。
なんの真似ですか?これはご招待です。
どうぞお乗りください。
あちらへどうぞ。
お待たせ致しました。
何を始めようっていうんですか?3年前先代が亡くなってからこの佐々山楼の様子はおかしくなりましたね。
清彦さん後を継いだあなたのプレッシャーは相当なものだったんでしょう。
佐々山楼を守りたいという思いは空回りし自分と意見が合わないベテランの立板まで辞めさせてしまった。
その結果評判は落ち客足は遠のいた。
浅野美和子さんあなたはその佐々山楼を酷評しましたね。
しかしそれは立ち直ってほしいという思いからです。
あなたと同じ思いでいたのが谷弘美さんです。
清彦さん谷弘美さんはあなたにとって大切な幼なじみでしたね。
はい。
弘美さんはあなたのために記者として佐々山楼を酷評してきたんです。
それはわかっていました。
弘美には何度も目を覚ませと言われ続けてきましたから…。
けど僕はその言葉に耳を傾けようとしなかった。
弘美さんはあなたを立ち直らせるために協力者を捜した。
それが石井純平だった。
しかし彼は弘美さんを手に入れたいがため協力者になっていただけだった。
そんな中で石井はある人物の不正に気づいた。
仕入れ業者との癒着による産地偽装です。
石井はその情報を弘美さんににおわせる一方でその人物に近づき甘い汁を吸おうとした。
石井がおとなしくここを辞めていったのはその人物を脅し続けるつもりでいたからでしょうね。
あなたはそれを知らずに石井を信じて佐々山楼の内情を探るための費用として石井にお金を渡しましたね。
はい。
一方曽根原健二もその人物の不正に気づき脅して金を受け取っていた。
その人物は脅しに耐えきれなくなり曽根原を自殺に見せかけて殺害した。
曽根原が死んだ事で弘美さんはさらに佐々山楼への疑惑を深めその人物の不正に気づき始めた。
石井はその人物に命じられ自分に見向きもしない弘美さんを蕎麦アレルギーを使って殺したんです。
警察に目をつけられた石井はその人物から金を脅し取り行方をくらまそうとした。
その人物は石井の口を塞ぐしかないと思った。
そして石井との待ち合わせ場所を清彦さんに告げ神社に向かわせた。
嵐ノ森神社へ向かいましたね?はい。
弘美の死に石井が関わってると思ったから真相を突き止めようと…。
せめて弘美の敵を討とうと思って…。
それも全てその人物の計算のうちです。
あなたと石井がトラブルを起こす事を計算して待ち合わせ場所へ向かわせたんですから。
そしてその計算どおりにあなたは石井と揉めた。
石井。
なんでお前が…。
お前が…お前が弘美を殺したのか!?だったらなんだ?お坊ちゃんが突っ張ってんじゃねえよ。
ああ。
弘美殺したのはこの俺だよ!
(石井)あの女お前みたいな奴のどこがいいんだろうね!
(清彦)ああっ!おい…。
おい!美和子さんあなたはその現場を目撃しましたね?弘美さんを殺したのが清彦さんだと思い込みその行動を監視し後をつけていたからです。
しかし死んでなかったんです石井は。
しばらくして目を覚ましたんでしょう。
そうですよね?木内康弘さん。
あなたは一部始終を見ていましたね?その人物とはあなたの事ですよ。
ああ…ちくしょう。
ああ…。
はあ…痛えなあ。
(石井)うわあっ!ばかな!私は20時半にここにいた。
どうやって21時に嵐ノ森神社に行けるんだ?木内さん私はね京都を愛してるんですよ。
その京都の町が私に教えてくれたんですよ。
この町はあなたを許さなかったんですね。
犯人はあなたです。
嵐ノ森神社の近くにある地下鉄洛陣駅です。
8時55分。
ここから出てきたのほらあなたですよね?ほら!あなたが写ってます。
あなた清彦さんを神社に向かわせた一方自分も向かった。
都河駅から洛陣駅まで地下鉄を使ってね。
曽根原さんを殺したのもあなただ。
違う。
これどうぞ。
はい。
今ここでオレンジスライス作ってもらえます?曽根原さんの最後の晩餐に残ってたオレンジスライスあなたが昔料理人だった頃作っていたオレンジスライスと全く同じです。
この切り方をするのはあなたしかいません。
私は悪くない。
私を脅した連中が悪いんだ!身勝手もほどほどにしろ!産地偽装だと?食を…食べ物を料理を冒涜するな!あんたね佐々山楼ばかりか京料理まで貶めたんだぞ!私は許さないよ。
(ため息)清彦さん。
あなたに食べてもらいたい料理があります。
美和子先生もお付き合いください。
お待たせ致しました。
どうぞ。
甘鯛の煮つけでございます。
美和子先生あなたこの料理に特別な思いがあるんじゃないですか?27年前まであなたが大切にしてきた料理です。
清彦さんにもこの料理に特別な思いはありませんか?あなたはなぜ甘鯛の料理にこだわってきたんでしょうね?それはねこの味を潜在的に覚えていたからなんですよ。
どうぞお召し上がりください。
この味は…。
覚えているんですね。
はい。
やめて。
もうやめてください。
あなたはもう十分に償ったんですよ。
清彦さんをずっと見守ってきたじゃないですか。
35年前あなたは天才と呼ばれたある料理人と大恋愛をして子供を宿した。
ところが料理人はその直後に突然の病で亡くなってしまった。
それでもあなたは愛する人の子供を産み育てようとした。
でも貧しかった。
生活能力がないため周囲の人々の手によって母子は引き裂かれその子は若狭の児童養護施設に預けられました。
あなたはいつかは我が子を自分の手で育てる事を夢見て立ち直り料理人となったんですね。
そしてやっと我が子の居場所を教えてもらって引き取りに行ったんですよね。
はい。
でももう遅かったんです。
その子はもう養子縁組が決まっていた。
でもあなたは自分の手で育てるよりも養子に出したほうがその子が幸せを掴めると思ったんですよね?はい。
だから会いに行った時もおしまいまで母親だとは名乗らなかった。
はい。
名乗れなかった。
名乗る資格はなかったんです。
ただあなたの得意料理甘鯛の煮つけを我が子に食べさせた。
はい。
最後に一度だけ食べてもらいました。
あなたの子供はあなたの料理を美味しそうに食べたんでしょうね。
若狭の塗箸を使って。
そしてあなたは一つのけじめとして包丁を置き料理評論家の道を進んだ。
それは評論家としていずれは佐々山楼を継いでいくであろう我が子清彦さんを見守るためですよね?あなたは我が子を育ててくれている佐々山楼を陰ながら応援していたんですね。
あなたは清彦さんに目を覚まして立ち直ってもらいたい一心から鬼となり佐々山楼を酷評したんですね。
それが母と名乗れない母親として我が子のために出来る唯一の行動だったんですよね。
ごめんなさい。
甘鯛の煮つけ。
子供の時に食べたあの煮つけの味がどうしても忘れられなかった。
美味しい。
おばさんこれとっても美味しい!こんなに美味しいもの食べたの初めて!ありがとうお母さん。
お母さん。
ありがとう。
清彦…。
ありがとう。
(香奈)清彦さんと美和子先生やり直せるよね?うん親子としてね。
そのとおり!お二人の前途を祝して乾杯!さとみさんあなた飲み過ぎよ。
お義母さんこれしょっぱい!だったら食べなきゃいいでしょ。
私はいいけどお義母さんは食べちゃ駄目!血圧高いでしょ?まあね。
へへ…。
あなた何がおかしいの?あれほど言ったのにまた事件に首突っ込んだでしょ!でも今回許してくれたじゃない。
それにさ僕のおかげでかなり助かったと思うんだけど。
なんですって!…うーん確かにそうかも。
ありがとねダーリン。
あらら。
気持ちよくなっちゃった。
あらハハハ…。
鰹が抜群なんですよね?そうですね。
(女性)わあ…すごい。
まだまだご案内したいすばらしい場所が京都にはいっぱいありますからね。
さあ次に行きますよ!2015/06/13(土) 21:00〜23:06
ABCテレビ1
土曜ワイド劇場「京都美食タクシー 殺人レシピ」[デ][字]
元料理人ドライバーと女刑事夫婦!!高級料亭の秘密が呼ぶ連続殺人!?若狭の箸に塗り込められた過去
詳細情報
◇番組内容
中村梅雀主演の新作が登場!元シェフでタクシードライバーの主人公・北山修一郎が、老舗料亭がからんだ連続殺人の真相に挑む!
◇出演者
中村梅雀、賀来千香子、石野真子、朝加真由美、岡本玲、石垣佑磨、大路恵美、池田政典、草村礼子、勝野洋
◇スタッフ
【脚本】深沢正樹
【音楽】森悠也
【監督】濱龍也
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.tv-asahi.co.jp/dwide/
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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