くらし☆解説「ひまわり8号で変わる災害予測」 2015.06.12


生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは、10時5分です。
「くらしきらり解説」きょうは新しい気象衛星ひまわり8号についてです。
担当は二宮徹解説委員です。
気象衛星のひまわりが台風や雨雲を観測しているのは知っているんですが、新しくなったわけですか。
二宮⇒まだ現在はひまわり7号が運用中なんですが8号が去年10月に打ち上げられて来月7日に7号と8号が交代する予定です。
まもなく変わるんですね。
現在運用中の8号が撮影した地球がこちらです。
きれいですね。
だいぶきれいになったんです。
7号と比べてどれくらいきれいなんですか。
比べてみましょう。
画面左側が現在運用中の7号右側が8号が撮影した地球です。
この動画は時間を短縮していますが東から太陽の光が地球を照らしていく様子がよりはっきりと分かります。
7号はかくかくとした動きで白黒ですけれども8号はカラーです。
試験運用中の8号はこれだけきれいなんですね。
なぜこんなにきれいなんですか。
精度が格段に上がったんです。
まず画像が4倍鮮明になりました。
撮影の間隔が最短で2分半に1回撮影できるようになりました。
7号は30分に1回だったんです。
12倍も向上して動きが滑らかになったわけです。
そして、カラーでの撮影が可能になりました。
これは静止気象衛星では世界で初めてです。
世界初というのはうれしいですがそもそも静止気象衛星とはどういうものなんでしょうか。
静止気象衛星は赤道上空3万6000kmの静止軌道を回っているんですけれど国際宇宙ステーションの高度が400kmくらいですからこの3万6000kmというとはるか上ですね。
月までの距離の10分の1くらいのところでかなりの高さのところを回っています。
静止ということばなんですが自転している地球から見て止まって見えるという意味で衛星が止まっているわけではないんです。
地球の自転にあわせて、24時間一日で地球を一周するということで時速はおよそ1万1000キロで回っています。
だからいつも日本の上空にいて日本を見てくれているわけですね。
赤道上空にいてこの静止軌道にはアメリカやヨーロッパなどほかの国の気象衛星も飛んでいます。
データを共有しているんですが日本のひまわりのデータはアジアやオセアニアなどの35の国と地域で活用されています。
ひまわり8号は世界の気象衛星の中で、いちばん高性能です。
最先端の次世代高性能気象衛星として世界で注目されています。
世界最先端ということですがどんなことに役立つんでしょうか。
こちらは3月に撮影された台風4号なんですけれどもひまわり8号はこちらの映像。
右側の映像ですね。
鮮明で滑らかです。
7号は30分に1回しか撮影できなかったのでかくかくとした動きです。
右側の8号は2分半に1回なので滑らかになりました。
映像が鮮明になったことで台風の目がよりはっきりと分かるようになったことと積乱雲をはっきりととらえることもできるようになりました。
見入ってしまいますが台風の目はこんなふうになっていたんですね。
台風の観測こそ気象衛星が不可欠なんです。
台風は太平洋を北上してきますけれどもほとんどは島での観測に限られていますので気圧や風速などの重要なデータが得にくいということで気象衛星からのデータが頼りなんです。
台風の目や周りの雲の様子が鮮明に見えることで強さや進路を、より正確に予測できるようになると期待されています。
この台風以外にはどんなことに期待できますか。
火山の噴火噴煙も鮮明に写すことができます。
2週間前鹿児島県の口永良部島が噴火したときの映像ですが噴煙が屋久島の方向に流れる様子がはっきりと分かります。
7号は30分に1回しか撮影できないのでよく分かりませんね。
よく分からないんですよ。
今後は火山灰が降る地域火山灰が流れていく地域に注意を呼びかけることにも役立ちそうです。
また黄砂です。
黄色く映っているのが黄砂なんですが中国付近から南に流れています。
7号、これまでは白黒ですし雲と黄砂がほとんど区別できません。
薄くてよく分からなかったんですけれどもこれが黄砂の観測もカラーでできるようになりまして詳しく観測できるようになります。
このほか流氷と雲ですが今まで区別できなかったんです。
8号になりますと流氷は青く表示して雲と流氷を区別するということで監視しやすくなると期待されています。
ずいぶんきめ細かいですし、分かりやすいですし防災だけでなく、環境問題でも役立ちそうですね。
そうしたさまざまな方面での活用が期待できます。
ただ飛躍的に精密に観測できるようになったからこその課題もあるんです。
どういうことですか。
ひまわり8号から送られてくるデータの量は、これまでのなんと50倍なんです。
ずいぶん量が増えるんですね。
その膨大なデータをより早く正確な予測に役立てなければならないんです。
例えばこちらにあるような雲の動きですが今までは30分に1回かくかくとしていましたがそれが滑らかになります。
ひまわりは今の雲をとらえるということで未来を予測してくれる訳ではないんですよね。
雨雲がいつどんな場所でどれくらい発達するかというのを見なければいけません。
予測しなければいけないんですがスーパーコンピューターも使うんですが予報を出すのは予報官、人間です。
こうした膨大なデータを予報に生かす研究はこれからが本番です。
研究が追いつかないとこれだけのせっかくのデータを生かせないですね。
予報をさらに進歩させないといけない、これが大変そうですね。
しかもそれだけではないんです。
情報伝達でもレベルアップが求められます。
74人が死亡した去年8月の広島土砂災害です。
思い出してください。
突然発達した積乱雲によって真夜中に2時間で200ミリ前後という猛烈な雨が降りました。
気象庁などが土砂災害警戒情報を出したのは、大雨になるおよそ1時間前。
広島市が避難勧告を出したのは災害が起きたあとでした。
こうした防災情報も遅かったということでした。
ひまわり8号で予測と情報の両方が早くなるといいですね。
気象庁はひまわり8号を活用した観測や研究を強化する方針です。
民間の気象会社や研究機関などにもデータを提供して早く正確な予測と情報というものに期待したいと思います。
そしてその一方で自治体も避難勧告や避難指示といったものをより早く適切に出すことが求められます。
早く予測できたとしてもそれを住民に伝えて避難に生かさなければ意味がありません。
ひまわり8号はバックアップに使う同型機の9号も含めて850億円かかっています。
宝の持ち腐れにならないようにしたいものです。
観測が進歩してもうまく運用できるかにかかっているんですね。
ひまわり8号の運用開始は7月7日午前11時の予定です。
ことしも大雨のシーズンを迎えてきのうも九州で被害が出ました。
最近は突然の集中豪雨も心配ですし台風の被害も心配です。
世界一の気象どこまで防災に生かせるかというのも世界中が注目しています。
二宮徹解説委員でした。
次回は土屋敏之解説委員とともにお伝えします。
ぜひ、ご覧ください。
2015/06/12(金) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「ひまわり8号で変わる災害予測」[字]

NHK解説委員…二宮徹,【司会】岩渕梢

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出演者
【出演】NHK解説委員…二宮徹,【司会】岩渕梢

ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療

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サンプリングレート : 48kHz

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