では「被災地からの声」今日はこの辺で失礼します。
日常を忘れ見入ってしまう海の生き物たち。
今週日曜日マリンピア松島水族館が88年の歴史を閉じました。
生き物の世話をする飼育員は23人。
最後の日々を独占密着取材しました。
せ〜の。
ジャ〜ンプ!ショーを楽しむお客さんたち。
その裏でアクシデントが起きていました。
人気者のアシカが体調を崩し言う事を聞かなくなっていたのです。
休んでないで…。
ルーシーちゃん。
あら休んじゃいました。
惜しまれつつ歴史を閉じた松島水族館。
なぜ多くの人に愛されてきたのか。
舞台裏で見つけた飼育員と生き物たちの物語です。
日本三景の一つ松島。
88年の歴史に幕を下ろしたマリンピア松島水族館です。
統計が残っている昭和44年以降延べ2,100万人が訪れました。
水族館で私たちを出迎えてくれるのは300種類4,000点の生き物たちです。
さあ今いるのはカメの水槽の前ですけれどもこうしてカメが出迎えてくれますし更にはですね世界的にも珍しいイロワケイルカまたホヤのように身近な三陸の海の生き物まで私たちを楽しませてくれました。
更にはこちらマンボウ。
30年余り前当時の飼育日数世界一の記録を達成したという事を覚えている方もいらっしゃると思います。
この松島水族館の生き物たちと飼育員の皆さん7月にオープンする仙台うみの杜水族館に移る事になっているんです。
つまりお客さんに楽しんでもらう一方で新しい場所に移るための準備も同時に進めなければいけなかったんです。
東北の人たちに世代を超えて愛されてきたアットホームな水族館。
そこには家族を見つめるようなまなざしで生き物たちと向き合ってきた飼育員の皆さんのまっすぐな思いがありました。
ショーが始まる2時間前から席取りをするお客さんたち。
最後の日々名物のアシカショーを目に焼き付けておこうと多くの人が集まりました。
入社以来9年間ずっとアシカの飼育を担当しています。
せ〜の。
ジャ〜ンプ!は〜い。
ありがとうございま〜す。
ルーシーちゃんもこの高さ楽勝でした〜。
泳ぎながらの連続輪投げキャッチ。
3頭が息を合わせるバレーボール。
これまで足を運んでくれたお客さんたちに感謝の気持ちを伝えたいとステージに立っていました。
ところが残り1週間となったこの日。
3頭のうちメスのルーシーが突然指示に従わなくなりました。
食欲もなく朝からほとんど食べていませんでした。
佐藤さんは千葉県出身。
幼稚園の頃に見たイルカショーに魅せられ飼育員を目指しました。
松島に来て夢を実現。
駆け出しの自分に生き物とのつきあい方を教えてくれたのがルーシーでした。
ルーシーはなぜ言う事を聞いてくれなくなったのか。
佐藤さんはこの日口の中に異変を見つけました。
歯茎が腫れその付け根にうみがたまっていたのです。
客席はショーを楽しみに待つ人でいっぱいです。
悩んだ末ステージに出したのは2頭だけ。
ルーシーは休ませる事にしました。
飼育員として直面するお客さんを優先するか動物を優先するかの葛藤。
ルーシーの体調を優先したのにはある先輩の教えがありました。
控え室に一枚の写真が飾られています。
3年前ガンでなくなった飼育員…
(ホイッスルの音)瓜生さんはこの水族館のショーのスタイルを築いた伝説的な飼育員です。
はい。
残った残った残った!残った…。
後輩たちにアシカとの接し方をたたき込んできました。
瓜生さんが常に言っていた言葉が壁に貼られています。
人間の都合でアシカを無理に動かそうとするなという戒めです。
アシカがショーを楽しめなければお客さんを喜ばせる事はできない。
佐藤さんは師匠の教えを胸にルーシーの体調が回復する事を待っていました。
毎朝誰よりも早く出勤し全ての水槽を観察して回る人がいます。
飼育員のトップ…ほぼ全ての生き物に関わってきた経歴38年のベテランです。
生き物たちに心配な事はないか。
自分の目で確かめる基本の作業を毎日続けています。
白黒模様を持つ珍しいイルカ…飼育している水族館は世界で4か所しかない貴重な動物です。
松島にイロワケイルカが来たのは28年前。
以来ずっと神宮さんは飼育に携わってきました。
当時の映像に神宮さんの姿が映っています。
この日行われたのはイルカを仙台の水族館に輸送するための訓練。
飼育員6年目の田中悠介さん。
獣医師の資格も持っています。
輸送の時に使う担架に乗せるなど本番に向けてイルカを慣れさせるのです。
この時神宮さんが心配している1頭のイルカがいました。
初めての発情期を迎えていた4歳のメスサクラです。
はい。
いきま〜す。
お願いしま〜す。
検査のために採血が行われました。
神宮さんが心配していたのは最近目にしたサクラの行動に気がかりな事があったからです。
ボールを抱え疲れたように休むイロワケイルカ。
病気になる前によく観察されてきた行動です。
同じ行動をサクラがしているのを朝の見回りで目撃したのです。
血液検査の結果が届きました。
うんそれもあるよね。
しかし神宮さんは納得できない様子です。
数値を見て安心していた田中さんにとって予想していなかった指摘でした。
ありがとうございます。
なぜ神宮さんはサクラの行動をそれほど重視するのか。
神宮さんたちはイロワケイルカ16頭の繁殖に成功した一方で11頭の死に立ち会ってきました。
死の直前「背泳ぎが増えた」「逆立ちでボールをつついた」などふだん見られない行動があった事が記されています。
もっと観察を強化すべきだったという反省。
サクラの行動を心配する背景には苦い体験の蓄積があったのです。
翌日の夕方イルカの水槽の前に田中さんがいました。
生き物と向き合うのはまず自分の目で観察する事から。
松島水族館の伝統はこうして受け継がれてきたのです。
松島水族館最後の朝。
アシカの飼育員佐藤さんです。
この3日間ルーシーはほとんどステージに出さず休ませてきました。
(手拍子)いよいよ最後のステージです。
ルーシーが舞台に出ていきました。
皆さんよろしくお願いしま〜す!最初のおじぎを忘れたルーシー。
じゃあそれでは早速ね始めていきましょう。
体調がまだ万全でないせいか佐藤さんの指示から外れがちです。
ちょっとねルーシーちゃんいませんのでノイちゃんとアスカちゃんでいきます。
腰の運動。
それでも佐藤さんは不安な様子は見せません。
(佐藤)22345678。
はいルーシーちゃん応援してくれてます。
次はその場で回りま〜す!みんな笛が鳴るまでしっかり!ありがとうございま〜す!ルーシーの様子を見ながら自らやる気になるのを待ちます。
はいいいですね。
さあそれではしっかりと体もほぐれたと思います。
この上にボールも一緒に載せて…。
ルーシーの最大の見せ場中抜き。
師匠の瓜生さんが教え込んだ大技です。
さあ載るでしょうか。
よいしょ!はい載りました!それではここから大技いきます。
はいいきますよ。
頑張ってね!よいしょ!はい決まりました!ありがとうございます!見事に成功させました。
それではルーシーちゃんの次は今度アスカちゃんに頑張ってもらいましょう!
(観客)ありがとう!
(拍手)また皆さんと会える日を楽しみにしています。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
松島水族館88年の歴史が閉じました。
2日後。
アシカたちが先頭を切って引っ越しです。
佐藤さんもこの日から仙台の水族館に移ります。
ベテラン飼育員の神宮さんです。
新しい水族館を軌道に乗せる事を人生の集大成にしたいと考えています。
私たちに生き物のすばらしさを教えてくれた飼育員たち。
これからも生き物たちとまっすぐに向き合います。
2015/06/11(木) 15:35〜16:00
NHK総合1・神戸
クローズアップ東北「生き物と まっすぐに〜松島水族館の飼育員たち〜」[字]
宮城県のマリンピア松島水族館。多くの人々を魅了してきたその舞台裏では、飼育員やスタッフが動物への愛情を注ぎながら、懸命に命を守ってきた。その日々に密着した。
詳細情報
番組内容
5月10日に閉館した宮城県のマリンピア松島水族館。88年にわたり多くの人たちを魅了してきた水族館の舞台裏では、飼育員やスタッフたちが動物への愛情を注ぎながら、地道な努力を続けて命を守ろうとする日々があった。東日本大震災のときにも、そうした日頃の積み重ねがあらわれたという。そして閉館に向けた毎日の裏側では、今年の夏に開園する新しい水族館への準備も進められてきた。閉館の舞台裏に独占密着した。
出演者
【キャスター】塚原泰介
ジャンル :
ニュース/報道 – ローカル・地域
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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