木曜時代劇 かぶき者慶次(9)「俺は三成の子」 2015.06.11


(佐乃)兄上!
(新九郎)佐乃!うっ!佐乃!佐乃!
(天徳)皆の者…。
(竹)
前田慶次様は上杉様の領国米沢で今は亡き石田三成様のお子を育てておられましたが新九郎様が三成様のお子である事をついに明かされたのでございます
すまなかった。
忍びが情けを持ったら終わりじゃ。
(慶次)また命が一つ…。
おいしそうなうこぎごはんですね。
又吉さんの好物ではありませんか?はい。
いや本当は旅立つ前に食べてほしかったんですけどね。
(竹)今頃どの辺りを歩いているのか。
(竹)雫さんの形見の黒髪を京の自分の身内の墓に入れてやりたいだなんて…。
又吉さんは身寄りのない雫さんを哀れに思っていましたから。
いやそれよりもやっぱり心底ほれていたんでしょう。
そうですね。
・えい!えい!やあ〜!ようございました。
いつもの新九郎様に戻られて。
よし!来い!きえ〜っ!どうした?佐乃。
きえ〜っ!ならばこちらからいくぞ。
えい!あ…。
どうしたのだ?
(よね)佐乃お嬢様腕が鈍っておいでだ。
どうされたんだべ?まとめ上げた新田開作の嘆願書をすぐにでもお城の御重役に奉るつもりです。
新九郎様が?ああそうだ。
それが認められれば俺も出仕がかなうかもしれん。
そうなったら今よりずっと百姓らの力になってやれる。
土を耕す者の気持ちが分かる新九郎様なら百姓たちも喜んで普請にかかれましょう。
旦那様。
好きにやったらいい。
のう。
はい。
そうなればもう旦那様の隠居を待つ事なく新九郎様はお城へのお務めがかないます。
ああ。
己でやれる事はやろうと思っておる。
何だ?佐乃。
今日は静かだな。
先ほどの稽古といいどこかすぐれんのか?どうかされましたか?いえそのような訳では…。
佐乃様。
いつもの佐乃様ではないような。
やはり新九郎様が石田三成様のお子だと分かった事が?その事は…。
ですがそれだけでは…。
もっと私自身の事なのです。
勝之進様との婚儀の事でございますか?勝之進様は私には過ぎたお方だと思っております。
母上からは是非にもお受けするようにと文が届きました。
奥方様は勝之進様の事を大層お気に召しておられましたから。
はい。
私もほのかに憧れておりました。
ではどうして?この竹には打ち明けて下さいませ。
兄が兄でないと分かってからどうもおかしいのです。
おかしい?それまでは「頼りない兄だ。
我が前田家の嫡男としてそれで務まるのか。
ここは妹としてこの私がしっかり支えねば」とそう思っていたのですが妹でないと分かってからどうも何かがおかしいのです。
兄の顔を正面から見る事もできず…。
佐乃様もしかして…一人の男として新九郎様の事をお気にかけているのでは?一人の男?そうでございます。
一人の女として新九郎様の事が気になる…。
好きだとか。
えっ?
(うぐいすの鳴き声)ホホホホ…。
(うぐいすの鳴き声)竹さん春ですよ。
そんなのんきな事を言ってる場合ではございません。
大変です!どうしたんですか?それが佐乃様が…。
うん?えっ!どういたしましょう!?どういたしましょう…。
いや…ちょっと竹さん。
どういう事ですか?よく考えてみれば少しもおかしな事ではありません。
新九郎様と佐乃様は実の兄妹ではないのですから。
むしろ私はうれしゅうございます。
新九郎様と佐乃様このようなご良縁はないかと。
それにそのような事になったら新九郎様は旦那様の娘婿。
まさにまことの息子になるのでございます。
いや新九郎は今でも私の息子ですよ。
あっもちろんそうでございます。
余計な事を…。
竹さん。
こういう事は周りの人間がとやかく言う事では…。
ねえ。
そうですか。
竹さん全ては流れに任せましょう。
はい。
私とした事がつい…。
それと…この前の一件は?まさかあの和尚様が間者だったとは。
実のある戦いでございました。
では…。
次は徳川様の軍勢と共にこの米沢の地に戻ってくるのでは…。
いやまだ時はあります。
恐らく今頃駿府の大御所様にお伺いを立てている頃。
いずれ江戸とは決着をつけなければいけないでしょう。
(天徳)申し訳ございませぬ。
この不始末の償いにも上杉攻めの折は死ぬ気で先陣に加わり道案内を務めまする。
(和泉局)まだじゃ。
は?駿府の大御所様からのお指図が来てはおらぬ。
(忠常)将軍職はご嫡男の秀忠様にお譲りになったとはいえいまだ実権は大御所様が握っておられる。
そのご承諾を頂かぬ事には上杉攻めはできぬ。
しかし事は急がねば!まあそう慌てずとも動かぬ証しは既にあるのじゃ。
我らはのんびりと大御所様のお指図をお待ちしておればよい。
(天徳)そうではございますが…。
(忠常)何か気がかりな事でも?前田慶次がおります。
あの男が三成の子を育てたのでございますれば…。
前田慶次…。
懐かしい名前よのう。
あのかぶき者か。
若い頃京で会った事がある。
いい男ぶりであった。
だが今では隠居同然。
そんな男が何をしようとどうなるものでもあるまい。
天徳和尚が徳川の間者だったとは!そうとも知らず和尚の甘言に操られ徳川に戦を挑もうとしていたとは…。
まんまとだまされたのだ我らは!こたびは上杉のお家を窮地に追いやるところでございました。
ああ。
大坂の豊臣方と手を組み戦を仕掛けようなどと…。
その兆しが見えた途端徳川方は上杉家を潰しにかかる手はずだったのだ!上杉家の名を再び天下にとどろかすどころかその名を辱める事になってしまった…。
父上。
ご出仕されるのでございますか?ヘッ。
いやちょっと城中へ様子を見に行ってくる。
お願い致します。
安田様それと勝之進の事が気がかりでございます。
天徳和尚が徳川の間者だと分かり自分たちがだまされていたとなると…。
(継之丞)これは…!私がお話しした事信じて頂けましたか?父上。
父上さえお許し下されば勝之進には話そうと思っています。
私の秘密を。
うん?こたびの事が何故起こったのかあいつにだけは話したい。
いや話さねばならんと思うのです。
私が石田三成様の子である事が上杉家に災いを招いている事を…。
新九郎それはお前のせいではない。
ですが…。
新九郎。
お前はこの米沢の地で生きる一人の人間として己ができる事をすればそれでよい。
安田殿は私から。
勝之進の事はお前に任せる。
それでよいか?はい。
(一左衛門)ああこれは前田様。
ああ。
このところ城へ出仕される日が多いようで。
はい。
いかがですか?城中の様子は。
相変わらずでございます馬廻組と与板組のいがみ合いは。
うん。
…といつもなら申すのですが何か馬廻組の皆さんはこのところ元気がなく安田様までもが…。
申し訳ないお呼び立てして。
いや実は私も安田殿にはお会いしたかった。
私は利用されておりました天徳和尚に。
それはとりもなおさず徳川に利用されていたという事。
しかも前田殿からは和尚が江戸の間者であると聞かされていたのにもかかわらずその言葉を信じず…。
前田殿が和尚の正体を暴いて下さらなければ今頃は馬廻組の者たちと合戦沙汰になっておったやもしれませぬ。
いや起こしていたでしょう。
そしてあっけなく徳川の策に引っ掛かりこの上杉家を潰していた。
されどこの上杉家は救われたのです。
未然に防げました。
いかにも。
それにこの事の始めは…。
たとえどんな訳があれ同じでございます。
前田殿がこの米沢の地で誰の子を育てていたのかも私には関わりのない事。
私は己の非を認めるだけ。
侍としてその責めを負うだけでございます。
ああ美しい。
あっ安田殿。
今度一度無苦庵に茶などを飲みに来て下さいませぬか?いや我が庭にもこれに劣らぬ見事な紅梅が咲いております。
是非とも近いうちに。
えい!やあ!天徳和尚はどこに行ったのじゃ?前触れもなく消えるとは。
徳川の間者とのうわさじゃ。
もしや和尚の仕業か?我らの中に三成の子がいるなどといううわさを流したのは。
我らも最初はそのお子がこの米沢の地におるのではと喜んでおったがそれを口実に徳川に潰されておったやもしれぬ。
その子はまさに上杉家の疫病神じゃ。
えい!
(勝之進)その者も好きで三成様の子に生まれた訳ではないでしょう。
定めを背負っているにすぎませぬ。
(次右衛門)どうした!勝之進!もう一本!大丈夫か?
(勝之進)もう一本!今日の勝之進は変ではないか?ああ。
あいつにしては冷静さが足りぬ。
勝之進。
勝之進。
話がある。
誰にも言わぬ。
俺もバカではない。
何故和尚が佐乃殿を人質に取ってまでお前をおびき出したのか分かっておる。
勝之進…。
だがそれはお前の定めだ。
ああ。
俺も初めて知った時は驚きどうしていいか分からずにいた。
生きている事が皆の迷惑になる。
俺がいなくなる事が一番いいのかもしれぬと。
新九郎…。
だが嘆いていても何も変わらぬ。
俺がこうやって生かされているのはこれからの世で何かを成すためだと思う事にした。
竹がそう教えてくれた。
新九郎様が生かされたのはこれからの世のためであったとこの竹はそう思っております。
俺の父親は石田三成。
己の定めを生きていく。
そう覚悟した。
新九郎。
俺も覚悟している。
え?佐乃殿にはあの話はなかった事にしてくれと伝えてくれ。
おい勝之進!お帰りなさいませ。
少しよいか?どうかなされたのです?勝之進の事なんだが…。
勝之進様の?気がかりな事があってな。
だが俺には何も話そうとはせぬ。
だからお前からそれとなく聞いてはもらえぬか?私がですか?ああ。
お前になら心の内を明かしてくれるかもしれんと思うてな。
それとよき返事をしてやれ。
まだしておらんのであろう?父上も本人同士の気持ちだと言っておるのだから。
兄上はそれでもよいのですか?え?私がよその方の嫁となっても。
何を言っておるのだ?もういいです。
おい佐乃。
あっ竹。
佐乃はどうして急に怒りだしたのだ?お分かりにならないのですか?ああ。
新九郎様と佐乃様は実の兄と妹ではないのですよ。
まあそうだが。
一人の男と女。
それぐらいは分かっておる。
竹に言えるのはここまででございます。
一人の男と女…。
お代わりいかがですか?うん。
お二人ともどうぞ。
うん。
あれ?新九郎様までご様子がおかしくなってしまって。
いいのですあれで。
安田様が病気届を出されたそうじゃ。
どうされたのであろう?これまで何があろうと決して務めを休まれる事などなかったのに。
ああ。
何か別の訳があるのやもしれぬ。
(一左衛門)勝之進殿。
お父上に何かあったのですか?いえ。
父はまこと病にございます。
そうですか。
(一左衛門)安田様が出仕されぬとは…。
この機に城中では与板組が勢いを増しております。
お年寄衆の皆さんも与板組の方が多いですよね。
はい。
お屋形様もそのお年寄衆の方たちとこれからの上杉家を考えていこうとなさっておられるのです。
ですが馬廻組の安田様が先頭に立ち再び戦に持っていこうと強引にもくろんでいた次第で。
それだけ強いお志をお持ちであった安田様がどうしてここに来て…。

(勝之進)父上。
お考えは分かっております。
その時は…私も。
上杉様は太閤秀吉様の命で越後から会津に移り120万石の大大名となられ関ヶ原の戦のあとはその石高も30万石に減らされこの米沢の地へ。
それでもやってこれたのも上杉の侍としての自負があったからこそ。
それだからなおさらなんでしょうね。
退く事もできずさりとて別の道を歩む事もできない。
侍とはやっかいなものですよ。
紅梅…。
はい。
庭の一枝を。
どうぞ。
うまい。
恐れ入ります。
梅の木にかすかに浮かび上がるような何かあたたかな色合い。
はい。
私には霞に見えました。
紅梅に霞。
それからもう一つ。
そろそろかと思います。
(うぐいすの鳴き声)春の風情か…。
前田殿はいつもこのような暮らしを?いやまあ戦戦の日々でしたからね。
やるかやられるか明日も知れぬ命。
ハハッ。
ですから余計に人として歩む道を生きたかったんでしょうね。
ヘヘッ。
(うぐいすの鳴き声)「春には春の夏には夏の秋には秋の冬には冬の」…。
いいもんですよ。
私には縁遠い。
こういう暮らしもあったはずなのに…。
気付く事なくここまで来てしまいました。
けれど後悔はしておりません。
上杉家の侍としての誇りを私は持っております。
お家第一にこの命上杉家にささげる覚悟で今日まで生きてまいりました。
察しておりますぞ。
安田殿の思い。
ですが上杉家のために生きてそのお命を。
今はお家が一つになる時。
さもなければ上杉家は…。
このとおりでござる。
前田殿。
今日の茶で私は生き返ったような気がしております。
あ…。

(笑い声)おう新九郎。
やるぞ。
勝之進は?それが父上の安田様に続き勝之進までが休みを願い出たそうじゃ。
え?俺も覚悟している。
すがすがしいお顔で帰られましたね。
ああ。
何か吹っ切られたような…。

(継之丞)こたびの一件上杉家中を巻き込むような大事を起こし危うく上杉家を滅亡の危機に陥れるところであった。
死をもってこの償いをせねばならぬ。
ならば私も!それはならぬ!お前は生きて上杉の家臣として安田家の嫡男として立派に務め上げよ。
何故でございます?私はもう生き方は変えられぬ。
だがお前はまだ若い。
よいな?父の最後の命だ。
父上…。
これに家督を嫡男であるお前に譲ると書いてある。
何かあれば前田殿を頼れ。
前田殿がよきに計らってくれるであろう。
勝之進お前のような息子を持てて本当によかった。
父としてこれほどうれしい事はない。
(継之丞)介錯をせよ。
勝之進!安田殿!父上!勝之進殿。
新九郎。
勝之進殿を廊下へ。
代わりに介錯つかまつります。
前田殿か?はい。
後の事…頼む。
相分かった。
私も一度は…貴殿のように…かぶきたかった。
・ごめん!安田殿が病死と…。
もしや切腹なのでは?皆が切腹ではないかと。
もしそうであれば安田家はお家断絶。
勝之進殿にも家督を譲れぬ事に。
安田殿は病死です。
私が最期を見届けました。
ですが…。
お年寄衆には私が話します。
お屋形様にも私が。
ほれ。
おい。
うんと食ってうんと生きろ。
おい。
おい食え。
(天徳)駿府の大御所様からはまだ何もご返事はありませんか?ああ。
何かお考えがあるのやもしれぬ。
・急ぎ申し上げます。
何かあったのか?
(天徳)なにねずみが一匹死んだだけでございます。
父のふるさと越後への思いを単なる郷愁だとし己はそんな父とは違う志を掲げておった。
いま一度天下をも狙える上杉家にしてみせるなどと…。
父より大バカ者よ。
父が死んでその事に気付くとは…。
父上。
おう。
父上に言われた事がありました。
今一番大事なのは何かと。
お前今何が一番大事か分かるか?命…命だ。
あの時はまことの意味が分からなかった。
ですが今はよく分かります。
旦那様何を書かれているのです?「大ふへんもの」?いやいやこれは「大不便者」と読みます。
昔戦の折に旗差し物にこの文字を書いておった。
戦の?全ては私のせいで起こった事。
最後にこの命を生かしその責めを負うつもりです。
ああそうだ。
竹さん。
女房殿に伝えてもらえますか?もう一度会いましょうと言った約束守れそうにもありません。
申し訳ありませんでした。
分かりましたか?そんな事おっしゃらないで下さいませ。
ハッハッハッハ!・旦那様。
参りましてございます。
女房殿!
(竹)奥方様!どうして?
(美津)決まっております。
勝之進殿と祝言を挙げる佐乃の嫁入り支度のためにございます。
(うぐいすの鳴き声)ヘッ!ではどうあっても戦を?生き残る道は2つ。
前田慶次こそ邪魔者。
兄上は女心を何も分かってはおられませぬ。
旦那様!2015/06/11(木) 14:10〜14:55
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 かぶき者慶次(9)「俺は三成の子」[解][字][再]

慶次(藤竜也)の活躍によって徳川の間者・天徳和尚(伊武雅刀)のわなから上杉家は難を逃れる中、新九郎(中村蒼)が石田三成の遺児で慶次の実の子でないことが分かる。

詳細情報
番組内容
慶次(藤竜也)の活躍によって徳川の間者・天徳和尚(伊武雅刀)のわなから上杉家は難を逃れる。そんな上杉家の中で、その企てに加担した安田継之丞(神尾佑)は悩む。慶次に励まされるが、上杉の侍として息子の勝之進(工藤阿須加)の行く末を慶次に託し自らは死を選ぶ。一方、前田家でも、新九郎(中村蒼)が石田三成の遺児で慶次の実の子でないことが分かり、妹の佐乃(西内まりや)との関係にも微妙な変化がおこる。
出演者
【出演】藤竜也,中村蒼,西内まりや,工藤阿須加,田畑智子,笛木優子,角田信朗,前田美波里,江波杏子,斉藤暁,神尾佑,山崎一,壇蜜,伊武雅刀,火野正平
原作・脚本
【作】小松江里子,【原案】火坂雅志

ジャンル :
ドラマ – 時代劇
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:21029(0x5225)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: