(路加)じゃあこれ僕から。
(律)路加君を引き取らせてください。
(真也)いいわよ。
分かったら早く帰りなさい。
ここはいい子が来るところじゃないわ。
(律)
心のどこかで期待していたんだ
ひとかけらでも親としての愛情があるんじゃないか
そんな甘いことを考えていた自分が惨めで滑稽で何か笑えてくる
(律)《何にもないから》
(恭子)《分かった》《じゃあご飯だけでも食べなさい》
(律)《いいから》
(恭子)《駄目よ》《ちゃんと食べなきゃ。
すぐに用意できるから…》
(律)《だからいいって言ってるんだ!》
(真也)《路加のこといつでも連れてっていいわよ》
(調)うん…。
(恭子)おはよう。
(律)おはよう。
けさは塩ジャケとシジミのお味噌汁よ。
お味噌変えたのよね。
口に合うかな?
そこにいるのはいつもと変わらない母だった
まるでゆうべのことなんかなかったみたいにいつもの
(奏)お母さん今日病院だよね。
何時ごろ終わるの?お昼すぎかな。
冷や麦があるからお昼はゆでて食べなさい。
薬味も添えてね。
(奏)はい。
調は?今日も部活?
(調)いや。
顧問の先生が出張だってさ。
だからってゲームやり過ぎないようにね。
(調)うん。
律は?今日は何かあるの?
(律)うん。
バイト。
そう。
土曜日なのに大変ね。
(花山)そうか。
律がそんなことを。
ぶち当たって見事砕けちゃった。
(花山)ごめんな。
何か俺がたきつけたみたいで。
ううん。
というかホントはちょっぴりうれしかったりして。
(花山)えっ?初めてなのよね。
律があんなふうに感情さらけ出したの。
あの子ずっといい子で反抗期らしきものもなかったから。
(花山)ああ。
これぞ母親の醍醐味よね。
息子にうざったがられて「うるせえ。
俺のことはほっといてくれ」って怒鳴られるの。
(花山)よかった。
全然へこんでない。
当たり前でしょ?いやぁ。
まさに母は強しだな。
心配して損したよ。
(バイブレーターの音)あっ。
ごめんね。
(バイブレーターの音)もしもし?
(調)俺俺。
調。
「俺俺」だけじゃ詐欺と間違えちゃうでしょ?どうしたの?
(調)いきなりだけど今夜友達んち泊まるから。
泊まるって今夜?どうしたの?何かあったの?
(調)部活の反省会。
ああ。
それと奏も友達にお呼ばれで今夜は外泊だってさ。
えっ?カナも?
(調)うん。
何つうかそう。
女子会らしいぜ。
(調)んなわけだから母ちゃん。
今夜は好きなことしろよな。
俺のモンハンやってもいいぜ。
じゃあね。
えっ。
ちょっと。
調?
(通話の切れる音)
(調)よし。
(奏)ちょっとどういうこと?お呼ばれなんかしてないんですけど。
(調)バカだなお前。
母ちゃん退院してすぐに働いてんだぞ。
土日まで俺たちの世話してたら大変だろ。
今日一日思う存分母ちゃんにぐだぐだしてもらおうっていう計画さ。
(奏)お母さん一人になってもしー兄ぃみたいにぐだぐだしないと思うけど。
(調)いいんだよ。
とにかく俺たちがいたら休めねえだろ。
(奏)ふーん。
しー兄ぃのくせに考えてんじゃん。
「くせに」って何だよ。
まあそんなわけだからお前は今から泊まれる友達んちを探せ。
(奏)えーっ。
見つかるかな?妙ね。
2人とも外泊なんて。
(花山)俺が思うに恭子ちゃんを休ませてやろうって言い合わせたんじゃないか?えっ?いや。
あいつらはあいつらなりに気ぃ使ってんだよ。
いい子だよな。
2人とも親思いで。
ホントね。
いい子過ぎて涙が出る。
せっかくだから今夜はとことん律と話してみようかな。
ああ。
それがいいよ。
またうざったがられるかもしれないけど。
いや。
そんときはまたぶち当たっていけばいいんだよ。
母は強しだものね。
そういうこと。
(真也)《あなたの代わりに路加を産んだの》《あなたの父親。
しばらくは路加のために私の元にとどまってくれた》
(真也)《でも結局家族の元へ帰ってったわ》《とんだ計算違いよね》・
(三崎)律。
律。
(律)はい。
何ですか?
(三崎)この伝票間違ってるぞ。
これ3卓じゃなくて4卓じゃないのか?えっ?あっ。
すいません。
そうです。
(絹江)ぼうっとしてんだったら帰りな。
邪魔だよ。
仕事の。
すいません。
気を付けます。
(三崎)じゃあ1卓さんだ。
はい。
(割れる音)すいません。
(絹江)今日は片付けたら帰りな。
命令だよ。
・
(ドアの開く音)
自分がふがいなかった
でもこのまま帰っても何も変わらないことだけは分かっていたんだ
(斎木)くそ。
俺としたことが。
仕送りを使いきってしまうとは。
(斎木)今月はまだ半分もあるというのに。
今日はカップ麺なんだ?
(斎木)律。
お前どうして?斎木なら土曜も学校にいると思ってさ。
あの人に会いに行ったんだ。
(斎木)あの人?僕と路加を産んだ人。
それまで何度か顔を合わせていたけど名乗っていなかったから気付かれてないと思ったんだ。
だけどあの人はとっくに分かってた。
でもあの人には関係なかったんだ。
僕がどこの誰であろうと路加に何をしようと。
子供に興味がない。
そんな親がいるなんて思いもしなかった。
色々覚悟はしてたつもりだけど。
実の親がそんな人だったって分かって結構つらくてさ。
(斎木)何をくだらんざれ言をほざいておる。
その程度のことは想定の範囲ではなかったのか?弟を引き取るとなれば親とも顔を合わすのは必定。
聞きたくない話も耳に入るだろう。
そういうことも覚悟した上で決めたのではないのか?生半可な覚悟なら引き取ることなどやめてしまえ。
俺もそんなやつを手伝う気にはならん。
だよね。
うん?ありがとう。
斎木ならそう言ってくれるって思ったよ。
結局僕は自分が傷つくことを怖がってただけなんだ。
頑張ってくるよ。
斎木も炭水化物だけじゃなくて野菜も取らなきゃ駄目だよ。
お…おう。
ああっ!?ああ。
もったいない。
かーっ。
(路加)すぐだよ。
すぐ用意するから待っててね。
はい。
ええ。
これから?いいわよ。
じゃあいつものところで。
(真也)路加。
今日のお出掛けはなしよ。
(路加)えっ?
(真也)ママお仕事が入ったの。
(路加)えっ?でも…。
分かった。
しょうがないよね。
お仕事だもんね。
(真也)これで何か買って食べるのよ。
明日の昼には戻るから。
出掛けるときちゃんと鍵締めてよ。
(路加)お兄ちゃん。
今日は来てくれないかな?あっ。
《赤い電車だよね?》《お兄ちゃんもこれに乗ってるよ》《路加のおうちの駅から特急で4つ目》《特急?》《いい?ここが路加のおうちがある駅》《でここがお兄ちゃんの駅》あった。
お兄ちゃんびっくりするかな?よしと。
心遣いはうれしいけど一人って持て余しちゃうのよね。
よいしょ。
かわいかったなぁ。
《律君》
(律)《あっ。
お母さん》《ねえ。
今日は誰と遊んだの?》《ケンタ君とカズヤ君》《ジャングルジムに登ったの》《えっ?すごいわね》《それから?》《それからぶらんこもしたの》《それから…》あのころは何でも話してくれたのにな。
(チャイム)
(チャイム)律が持ってたのね。
これ律よね?描いたの小さな子供かしら?・・
(時報メロディー)いけない。
買い物行かなきゃ。
よいしょ。
(みつ子)環。
夕飯何食べたい?
(環)何でもいい。
冷蔵庫にあるもんで。
(圭介)張り合いないこと言うなよ。
たまにはさ外食でもするか?
(みつ子)いいわね。
たまには?
(圭介)うん。
(環)私はいい。
パパとママで行けば?・
(チャイム)
(みつ子)はーい。
(みつ子)いらっしゃい。
(調)圭介叔父さん。
頼む。
何も聞かず俺たちを一晩だけ泊めてくれ。
お願いします。
(圭介)えっ?
(環)つまり友達の家に泊まろうと思ったら誰も泊めてくんなかったってわけ?土曜日だからみんな予定があってさ。
(圭介)しかし偉いじゃないか。
(圭介)姉さんを休ませるために外泊なんて。
とにかくそういうわけだから今日ここに来たことは律兄ぃと母ちゃんには黙ってて。
(圭介)うん。
分かった。
(環)調。
あんたなかなかいい男になったじゃない。
(調)えっ?そうかな?
(環)なんて言うと思った?
(調)えっ?
(環)こういうのはねあらかじめ根回しが必要なの。
後で伯母さんに誰の家に泊まったか聞かれたらどうするつもり?
(調)それはまあ適当に。
(環)どうかしらね?伯母さんの性格なら後で相手の家にお礼の電話かけるんじゃない?あっ。
(圭介)確かにそれは言えるな。
姉さんならついでに手土産の一つでも持っていくかも。
(環)ゆっくりしてもらうつもりがかえってあだになったりして。
俺まずいことしちゃったかな?
(圭介)まあ姉さんのことを思ってしたことだからな。
とにかく伯母さんが余計な気を使わないようにうまくアリバイをつくることね。
後は誰かさんがうっかり口を滑らせないように口止めすること。
(圭介)確かにそれは言えてるな。
誰かさんって?
(みつ子)さあお紅茶入りましたよ。
(奏)ケーキもあるよ。
(みつ子)はーい。
うん?何か私の顔に付いてる?ここにお兄ちゃん住んでるのか。
すいません。
早川律っていう人知ってますか?
(男性)えっ?何?ごめん。
おじちゃん今忙しいんだよ。
他で聞いて。
あっ。
もしもし?どうも。
いつもお世話になってます。
はい。
はい。
(男性)おっ。
何だ?
(路加)あのう。
早川律っていう人知ってますか?
(男性)はっ?誰だ?それ。
(男性)早川律?タレントか?
(男性)知らねえ。
円周率なら知ってっけど。
(男性)ウケる。
(男性)おっ。
何だ?・
(路加)すいません。
早川律っていう人知りませんか?
(女性)ごめんね。
知らないわ。
ねえ僕。
あなたは誰?
(路加)雨宮路加。
早川律っていう人のおうちを捜してるの。
どうして?会いに来たの。
僕のお兄ちゃん幼稚園の先生だから。
そう。
ねえ路加君。
お兄ちゃんに笑ってる顔描いてあげた?
(路加)うん。
僕お兄ちゃんにあげたの。
おばちゃんどうして知ってるの?それはねおばちゃんが律お兄ちゃんのお母さんだから。
ただい…。
・
(路加)お兄ちゃん!おかえりなさい。
おかえり。
律。
どうして?駅前で律のこと捜してたのよ。
「早川律っていう人知りませんか?」って。
だから誘拐してきちゃった。
調も奏もお呼ばれでいないし。
律はバイトばっかりしててお母さん寂しかったから。
ううーっ。
ねえ?うん。
誘拐ってもうしゃれになんないよ。
おなかすいたでしょ?ご飯にしよっか。
今夜はオムライスね。
オムライス?うん。
律お兄ちゃんが路加君くらいのとき大好きだったの。
路加君好き?好き。
じゃあすぐに作るわね。
律。
手伝ってくれる?うん。
うん。
路加は僕の弟なんだ。
一目見て分かった。
小さいころの律にそっくりだもの。
会いに行ったのね。
うん。
路加君。
律のことお兄ちゃん幼稚園の先生って言ってたわよ。
まだ自分のことどういう関係か言ってないの?母親は子供に興味がなくて路加は育児放棄されてて。
幼稚園にも行ってなくて。
それを知って放っておけなくて。
お弁当を作ってあげたのがきっかけで。
だから路加は僕のことただのおせっかいなお兄ちゃんだと思ってる。
一人で大変だったね。
でもね律が大人になるのはうれしいけど困ったときに何にも相談してくれないのは寂しいな。
言えなかったんだ。
お母さんに向こうの家族のこと話すの悪い気がして。
バカね。
お母さんは何があっても律の味方よ。
ごめん。
隠してて。
はい。
どうぞ。
(路加)うわぁ。
おいしそう。
はい。
ありがとう。
はい。
僕持ってるよスプン。
えっ?ほら。
まあ奇麗。
うん。
僕の宝物なんだ。
そうなの。
じゃあ洗ってくるから貸してね。
うん。
はい。
これねお兄ちゃんが描いたんだ。
うわぁ。
ありがとう。
いいえ。
いただきます。
(恭子・律)いただきます。
この先のことは後で考えよう
そうお母さんは言ってくれた
すっごくおいしい。
ああ。
よかった。
おいしいものを食べればきっといい考えも浮かぶだろうからって
その笑顔は春の日だまりのように温かくて
僕は心から思ったんだ
この人の息子でよかったって
2015/06/11(木) 13:25〜13:55
関西テレビ1
明日もきっと、おいしいご飯 〜銀のスプーン〜 #09[字][デ]
自分が養子だという衝撃の事実を知った律(高杉真宙)は、生みの母・真也(河井青葉)の家を訪ねてみる。そこには自分の弟かもしれない男の子・路加(山口祐輝)がいて…。
詳細情報
番組内容
律(高杉真宙)は路加(山口祐輝)に対してひとかけらの愛情も見せない真也(河井青葉)に苛立ちを覚える。心配する恭子(富田靖子)につい声を荒らげてしまい、自己嫌悪に陥るが、翌朝、恭子はいつもと変わらぬ笑顔で律を迎えて…。
気を取り直してバイトに出かけた律だったが、脳裏には真也の言葉がよぎっていた。
番組内容2
仕事に集中できず、ミスを犯してしまう律。そんな律の様子に気付いた絹江(藤田弓子)は、強引に彼を帰してしまう。が、どこにも行き場のない律は途方に暮れ…。
その頃、路加は、楽しみにしていた真也とのお出かけがなくなり、ひとりで留守番をしていた。律に会いたくなった路加は、ひとりで電車に乗って律の住む街の駅へ。一方、律は気持ちにけじめをつけるために、再び真也の元を訪れる決意をする。
番組内容3
歩道橋ですれ違う二人。が、律は路加の姿には気付かず…。
出演者
早川 律:高杉真宙
早川恭子:富田靖子
花山大輔:山田純大
雨宮真也:河井青葉
鈴井 環:岩田さゆり
茂木和彦:木本武宏
・
早川 調:前田旺志郎
早川 奏:田附未衣愛
雨宮路加:山口祐輝
・
一柳 隆:和田聰宏
鈴井みつ子:芳本美代子
小川絹江:藤田弓子 ほか
スタッフ
【原作】
『銀のスプーン』小沢真理(講談社「Kiss」連載中)
【脚本】
森山あけみ
【演出】
金子与志一
【プロデュース】
松本圭右(東海テレビ)
西 麻美(松竹)
原 克子(松竹)
竹内絵唱(松竹)
【音楽】
市川 淳
【主題歌】
高橋 優「おかえり」(ワーナーミュージック・ジャパン)
【制作著作】
松竹株式会社
【制作】
東海テレビ
ご案内
ケチャップで想いを綴ったオムライスの写真を大募集!!詳しくはHPで!
【公式サイトURL】
http://tokai−tv.com/ashita_gohan/
【公式ツイッターアカウント】
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ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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