警視庁捜査一課9係 #7 2015.06.10


もしもし?こんなところで寝てたら風邪引きますよ。
もしもし?もしもし?至急!至急!中大泉交番。
岩本PMからPS!
(サイレン)
(加納倫太郎)浅輪君!
(浅輪直樹)ああお疲れさまです。
亡くなったのは田北良平さん28歳。
死後硬直の状態から見て死亡推定時刻は昨夜の11時前後といったところでしょうか。
(矢沢英明)お疲れです。
ああ…遺体はこの台本を持っていました。
『海を渡る侍』。
あの…映画の台本です。
近くに丸映撮影所っていうのがあるじゃないですか。
彼そこで助監督として働いてたみたいです。
(矢沢)ほらここにも名前があります。
って事はあの小説映画化されるって事ですか?そう。
えっ浅輪君も読んだ?読みましたよ。
一気読みですよ。
主演誰だと思う?ええ誰だろう?加賀山譲。
カガジョー?うん。
うちの早苗ちゃんも大好きなんだよね〜。
加賀山譲の常長か…。
悪くないねえ。
係長も読んだみたいだね。
ええ読んでます読んでます。
(青柳靖)映画の話はいいから事件の話しようよ。
(矢沢)はい。
陶器のかけら?浅輪君これ…。
あっ…何かで殴られてそれが割れちゃったみたいな感じですか?殴られたっていうか…まあ目立った外傷ないですけどねえ。
ねえ。
心臓発作って事も考えられますしね。
ああ。
こりゃあ俺らのヤマじゃないかもしんねえな。
(村瀬健吾)だからあなたは浅はかだって言うんですよ青柳さん。
(青柳)出たよ。
ガイシャの鞄の中に入ってた携帯です。
我々はひと足先に到着してこの携帯を分析してました。
(小宮山志保)ここ見てください。
ブラウザーのページ保存のところ。
「警視庁問い合わせ窓口のご案内」…。
彼亡くなる前に警察に何かを相談しようとしていたのかもしれません。
お疲れさまです。
(早瀬川真澄)お待たせしてます。
死因は側頭部打撲による外傷性硬膜外血腫。
はい?頭部を強打した時に頭蓋骨と硬膜の間に出血が生じてそれが時間をかけて脳を圧迫して死に至ったと考えられます。
時間をかけてって大体どれぐらいですか?うーんはっきりした事はわからないけど…。
その間も普通に動き回ってた可能性があります。
って事は頭を打った現場は公園じゃない可能性もあるって事ですか?ええ。
それから肩と腰に打撲痕がありました。
という事は事件事故両方の可能性があるって事…?それを調べるのはそちらの仕事でしょう。
はい。
すみません。
『海を渡る侍』は岩崎章監督の最新作で田北良平さんはそこでサードの助監督として務めていました。
えっサード?ええ。
まあ助監督っていっても1人じゃなくてチーフはスケジュールを担当して衣装をチェックするセカンド小道具をチェックするサードあともろもろアシスタントに回るフォースフィフスっていうこう階級に分かれてるんです。
(青柳)この被害者は小道具チェック担当だったわけだ。
(矢沢)ええ。
(志保)原作は確か去年ベストセラーになったわよね?ああ。
支倉常長っていう武将を主人公にした歴史ものだ。
常長は独眼竜で有名な伊達政宗の家臣で当時海外との貿易を望んでた政宗の使節としてヨーロッパに渡った。
支倉常長。
うん。
でこの支倉常長を演じるのがカガジョーこと加賀山譲。
時代劇初挑戦で話題になってますよね。
ああもう映画の話はいいから事件の話しようよ〜。
で亡くなった田北良平さんの足取りなんですが…。
そう!そういう話。
でこれが丸映撮影所の正面の防犯カメラの映像です。
(矢沢)午後10時29分に外出てきてますよね。
死亡推定時刻が11時前後だからこの30分後に亡くなるわけか。
これすでに頭打ってるかどうかこれだけじゃわかんねえな。
(電話)はい9係。
わかりました。
ありがとうございます。
山形から田北良平さんのお姉さんがいらしたそうよ。
私と村瀬さんそっち行きましょう。
(村瀬)了解。
じゃあ俺たちは撮影所。
(志保)お願いします。
係長我々どうしましょう?公園。
ええ〜また現場行くんですか?どうしてもこのかけらが気になるの。

(石田正芳)どうも。
ご苦労さまです。
お電話した…。
矢沢といいます。
プロデューサーの石田と申します。
僕青柳です。
いやあ参った。
参りました。
来週から海外ロケだったのに正直途方に暮れてます。
おっ海外ロケ?常長の足跡に従ってメキシコスペインイタリアと回る予定でして。
ふーん…あっこれだ。
主役は加賀山譲さんなんですよね?
(石田)初時代劇で尻込みするところ口説き落としました。
伊達政宗役は粟野康一さん。
2大スターの共演ですよ。
撮影は順調でしたか?ええおかげさまで。
とか言ってなんか問題があったりなんかして。
は?は?いや田北さんのスマホを調べましたらなんか警察に相談しようとしていた形跡があるんですよね。
プロデューサーのあなたが何かご存じではないかなと思いまして。
(携帯電話)撮影が終わったようだ。
僕はこれで。
(青柳・矢沢)あら?
(志保)弟さん本当に映画がお好きだったんですね。
(田北明里)いつか映画監督になるんだって上京してアルバイトしながら映画の専門学校に…。
弟さんと最後にお話しなさったのは?
(明里)2週間ほど前近所の方が映画の専門誌に良平の名前が載ってるって教えてくれて…。
これです。
(志保)「短編映画コンクール」…。
一次通過者の中に弟の名前があったんですよ。
ここです。
おめでとう良平。
すごいじゃない!
(田北良平)あのね姉ちゃん。
素人や学生が応募するコンクールで仮にもプロなら一次通過は当たり前なんだよ。
それに審査はもっと進んでてもう最終候補の10本まで決まってるんだ。
ってまさか良平…!だから「おめでとう」はその結果が出てからにして。
そうですか。
ありがとうございました。
あれ?係長。
はい?まだかけら探してるんですか?うん…。
大体ね鑑識さんが徹底的に探したんですからもうあるわけないじゃないですか。
それにねジーンズの折り返しに入ってたっつったって数日前に入ったかもしれないですよ。
ちょっと手出して。
え?ああ…。
結構重いでしょ。
うん。
こんなもんがズボンの裾に入ってたら僕なんか気になってしょうがないよ。
だからこれはここで彼が殺される直前か直後にズボンの裾に入った。
うん…。
で彼は…。
ここが公園。
ここが撮影所。
撮影所からこの公園に来てる。
僕たちはこの公園から撮影所のほうに逆戻り。
いい?はい。
行ってみますか。
こんにちは。
(おかみ)いらっしゃい!この男性が亡くなってるのが発見されたんですけども心当たりありません?あら!この人撮影所の人よね?あっやっぱり知ってました?なんかトラブルがあったとかそういう話聞いてません?さあねえ覚えないけど。
そうですか…。
これどうですかね?これ。
瀬戸物。
ええ。
少なくともうちの食器じゃないわね。
フフフ…あっ瀬戸物なら撮影所の辻先生に見てもらったら?辻先生?知らないの?映画美術の大御所。
(石田)譲君お疲れさま!今日もいい芝居だったよ〜。
(加賀山譲)よく言うよ。
スタジオにいなかったくせに。
あっバレちゃいました?フフ…。
(石田)粟野さんお疲れさまです。
監督。
岩崎監督。
(岩崎章)おい園田!
(園田典夫)はい。
(岩崎)園田これスタッフルーム運んどけ。
(園田)かしこまりました。
粟野さん昨日の事まだ怒ってるんでしょうか?当たり前だろ。
一歩間違ってたら死んでたぞ。
シッ!良平の事で警察が来てるんですよ。
ええ?先生。
あの…美術の辻先生ですよね?
(辻辰之助)あなた方は?ああ失礼しました。
警察です。
良平の件ですか?聞きました。
かわいそうに…。
田北さんはどんな方だったんですか?
(ため息)心から映画を愛し仕事に情熱を持っている若者でした。
この業界は下積みがきつくてねえ。
芽が出ないと去っていく者も多いんですが彼は違いましたよ。
なんかトラブルがあったなんて話は聞きませんでしたか?いやあ…彼に限っては全く思いつきませんね。
うん…。
すみません。
ちょっとこれ見てもらえますか?
(辻)陶器のかけらですか。
こちらのもんじゃないんですか?いやこれはうちの小道具じゃありませんねえ。
いやあしかしなかなかきれいな白磁です。
元の形は壺でしょう。
壺?
(辻)はい。
あるいは酒どっくりか…。
かけらが…これ丸みを帯びてるでしょ。
ええ…するとこれはね壺の口の部分ですよ。
皿や杯茶碗などは縁がもっと薄くなります。
食器じゃなくて花瓶などのインテリアとして使われていたものでしょうね。
先生この産地とか年代とかもっと詳しい事わかりませんかね?いやあ残念ながらそれだけでは…。
陶器は特に底を見ないと。
先生美術品の鑑定もなさるとか…。
いや映画美術をやってるうちに詳しくなりましてね。
みんなからは時代考証の鬼だなんて煙たがられてますよ。
時代考証の鬼…。
(青柳)こんにちはー。
(矢沢)こんにちは。
あっ青柳さん!
(青柳)あれ?
(矢沢)おおっ?あの…美術の辻先生というのは…。
あっどうも。
ちょっとお話をお伺いしてもよろしいですか?昨日撮影中に大変な事があったらしいですね。
そうなんですか?ちょ…ちょっと黙って…。
ひとつ間違えたら伊達政宗役の粟野さんが死んでたかもしれないという…。
本当ですか?昨日『海を渡る侍』の撮影中にある事件がありました。
きっかけは監督が台本にないシーンを撮りたいって言い出したからなんですけどね。
(志保)台本にないシーンって?はい。
日本に帰国した常長が藩の仕打ちに憤り藩主である伊達政宗に向かって斬りかかる…。
いやそれ…。
という妄想のシーンなんですけど…。
なんだ妄想かよ。
はい。
で?それで事件どんな事件だったんだよ?ああ…そうそう。
通常刀を使ったアクションシーンっていうのは竹光を使うんですよ。
竹光っていうのは…ちょっと待っててください。
嬉しそう…。
刀の形をしたカシの木なんかで作られてるんですけれども卵白の接着剤を塗って銀箔を貼って撮影用に使われてるらしいんです。
昨日は加賀山譲が使っていた刀真剣つまり本物だったんです。
えっ真剣使われてたのか。
それが実際に立ち回りが始まって伊達政宗役の粟野康一が手に持っていた軍配がスパーンって割れるまで誰も気づかなかったらしいんですよ。
問題のシーンがこちらです。
(岩崎)「よーい…スタート!」「
(カチンコを打つ音)」これはですねワイヤアクションと背景を合成するためにグリーンバックっていう背景で撮影してるんですよ。
はい。
これ真剣です。
なるほど。
ひときわ輝いてるなあ。
「早まるな常長!」ああ〜。
おお〜!
(粟野康一)「ああっ…!」
(岩崎)「カットカット!」映像はここで終わりです。
とりあえず粟野康一さんに怪我はなかったみたいですけどね。
というかこれ本来警察に届けるべき事故だろ。
田北良平さんが警察に相談しようとしてた事ってこの事なんじゃない?ひょっとして彼はこの事件を隠蔽しようとしている人間に殺害されたのかもしれない。
(志保)この刀の出どころは?ああ…実はこれ映画のために加賀山譲が自分で用意したマイ真剣だったんですよ。
(村瀬・志保)ええっ!?そうか。
なんでここに青柳さんたちがいないかと思ったら…。
先回りして加賀山譲に会いに行ったのね?
(加賀山)だから俺は…。
(加賀山)スタッフから受け取った刀を抜いただけなんだ。
でもご自分の刀なんですよね?ああ。
でも俺は金を出しただけで現物は見てないんだ。
真剣は管理がいろいろ面倒だっていうからスタッフに預けっぱなしだったんだよ。
でも普通はこう手に持ったらわかるんじゃないですか?撮影用と本物は重さも違うだろうし。
重さ?そんな事俺に言うわけ?もしかしてわかんねえの?お前。
(矢沢)いや「お前」って…。
あのね俺は初心者なんだよ。
初時代劇。
刀の重さなんてわかるわけないだろ。
マイ真剣だってなめられちゃいけないと思って買ったんだ。
殿から刀を拝領するシーンがあるっていうから…。
なのにあいつら…。
行こうか。
はい。
ああちょっと待ってくれ。
まだ話は終わってない。
ええ?俺ねここでいじめられてんだよ。
ええ〜!所作がどうとか殺陣がどうとか陰でコソコソ言われてさ揚げ句の果てにこの事件だろ?しかも連中いろんなもの隠すんだぜ。
隠す?飲みかけの紙コップとかスリッパとか。
ほらあと暑いしほら暖房が壊れてる…。
ああ冷房だ。
冷房が壊れて…。
俺のねもう繊細な神経は限界ギリギリなんだよもう。
なんかわかるなあ。
さっきからも気になってるんだけどねこれ浴衣の合わせがね逆なんだよね。
あとね殺陣じゃなくてそれ多分殺陣って読むと思うよ。
うん。
これじゃいじめられるわ。
うん頑張れ。
頑張れお前。
(チャイム)
(館内アナウンス)「辰巳組撮影を開始します」「関係者の皆様は第7ステージに集合してください」申し訳ありませんでした。
当然ご存じだとは思いますが立ち回りに真剣が使われるっていうのはこれは明らかに銃刀法違反ですよ。
もちろん承知しております。
先ほど大泉署に出頭し厳重注意を受けて参りました。
まずどうしてこんな事が起きたのか説明してもらえますか?何しろ急な撮影で現場がバタついてしまって…。
だが映画のためには必要な撮影だったんですよ。
(石田)はい確かに。
ただ予定では刀を使う撮影は全て終わってる予定でしたので海外ロケに向けて加賀山さんの真剣も含め全ての刀をまとめて1箱に梱包してしまいまして。
それを美術倉庫から運んできた助監督が中身を確認せず加賀山さんに渡してしまったとこういうわけで…。
(園田)申し訳ありません!
(村瀬)その助監督っていうのは?
(志保)田北良平さんですか?
(石田)いえセカンドの園田です。
園田典夫。
(村瀬)園田典夫…。
あらっ!
(矢沢早苗)英ちゃん!
(青柳)早苗…!早苗ちゃん!どうしてなの?今日はアニメの打ち合わせ。
ねえそれより聞いて!あのねこの撮影所で今加賀山譲が映画撮ってんだって!ああ…。
どうしよう!生カガジョーに遭遇しちゃうかも〜!ああ〜っ!もっとおしゃれしてくればよかった。
たまにはスカートとかはいちゃえばよかったかな。
ん?係長何見るんですか?家臣の人…あの右端の家臣の人。
あの人の持ってる刀なんか底光りしてない?あっ本当だ。
主役の刀よりさ高そうに見える。
それに構えも他の家臣みんなこう…中段だよね?けど彼だけさ…。
下段に構えて動かない。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
係長あのシーンに出てた家臣役の人たちに会うには剣友会ってとこの道場に行くといいらしいですよ。
剣友会?はい。
なんか大部屋俳優さんたちの事務所みたいなんですけどね。
あっ!ああ…。
ああ…じゃああっちですね。
こっちです。
行きましょう。
(村瀬)助監督の園田典夫さん。
一応昨夜の行動を教えて頂いてよろしいですか?9時に撮影が終わってからスタッフミーティングがあって終わったのは10時近くでした。
もちろん良平も一緒です。
それから11時頃まではこの部屋で事務仕事をしていました。
ああ事務仕事…。
(志保)お一人で?そういえば大部屋女優が1人あいさつに来たな。
ん?ん?ん…?大部屋女優?撮影所所属の俳優の事ですよ。
ああ…。
その方のお名前は?相馬美音子です。
相馬…。
(園田)昨日で撮影が終わりだとかでわざわざ俺にあいさつに…。
話が盛り上がって1時間近くここにいたかな。
力を抜いて。
あっ。
ああ…。
ああっすみません!
(相馬美音子)はい。
あなたもこの撮影所の女優さんですか?ええ。
って事はあの『海を渡る侍』あれに出てらっしゃいます?はい。
昨日立ち回りがあったらしいんですけどその時の関係者に会いたいんです。
ああ…伊達家の家臣たちならあちらに。
(かけ声)失礼しまーす!あっ!
(黒沢光司郎)えっ…?あなた昨日本身使ってたでしょ。
(黒沢)確かにこいつは真剣でした。
持った瞬間重さからしてジュラルミンかと思ったんですけど抜いてみると真剣でした。
そこで止めようかと思ったんですけどその時「よーいスタート」の声がかかって…。
それで…。
誰も傷つけないように構えを下段にして相手との間合いも詰めなかったんです。
係長の見立てどおりでしたね。
ここだけの話なんですけどその立ち回りで真剣を使うっていうのはよくあったりするんですか?まさか。
私も長い事時代劇に出てますけど立ち回りで真剣を渡されたのは初めてでした。
じゃあどうして昨日だけ真剣だったんですか?わかりません。
良平も首をひねってました。
田北さんも?
(黒沢)ええ。
ああっ…!ああ…!
(岩崎)カットカット!粟野さん大丈夫ですか?大丈夫ですか?どういう事だ?これは!
(岩崎)すみません!園田どういう事だ!?はいすみません。
僕にも…。
(粟野)おい!プロデューサー呼べ!
(スタッフ)連絡しろ。
こいつも真剣だぞ。
ええっ!?皆さんの中で昨日真剣渡された方他にいませんか?私だけだと思います。
その後彼とは?何も。
撮影が終わって我々は先に帰りましたから。
まさかそのあと死んじまうなんて…。
な?ああ…。
そうですか…。
皆さんお稽古中なのに本当にどうもありがとうございました。
もう一ついいですか?あの…これなんですけどこれなんだと思います?
(黒沢)なんですか?これ。
陶器のかけら…壺だと思うんですけど。
彼がこれを…?ええ。
(携帯電話)はい相馬です。
…え?もう見えてますけど。
…はい。
ゆうべ一緒にいた事に?ちょっと待ってください。
私嘘なんてつけません。
園田さん!もしかして今アリバイ工作を頼まれてました?えっと…園田さんに。
園田さんの話だと昨夜10時前約1時間あなたと会ってたって事なんですが…。
1時間なんて嘘です。
園田さんと会ってたのはほんの2〜3分ぐらいで…。
(村瀬)2〜3分?あいつ…。
その話証言出来る?はい。
でもあの…助監督さん敵に回したら撮影所の仕事ってしにくくないですか?私昨日で本当に最後だったんです。
10年間頑張ってきたけど故郷に帰ろうと思って。
故郷って?福島です。
じゃあゆうべは田北さんにもあいさつに行ったりとかしたんじゃないですか?ええ。
園田さんに会った後良平君にも会いに行きました。
良平君?私たち同い年で仲良かったんですよ。
嘘…いじめられてるんだカガジョー。
かわいそう。
いじめってねえ。
だって内履き隠すなんて子供のいじめじゃない。
ただの自意識過剰じゃない?あっ!もしかして陰で売られてるのかも!え?あ?だってカガジョーのスリッパとかカガジョーの唾液のついた紙コップとかネットオークションで高く売れそうじゃない?スタッフの中に泥棒がいるとか?ちょっとネットオークション調べてみようよ。
「カガジョー」「紙コップ」。
…カガジョー紙コップ。
ほらやっぱり!こんなのもあるの?これ駄目だろ。
あっこれ!
(村瀬)園田典夫…。
(村瀬)「ちょっとはっきりさせようか」昨夜スタッフミーティングが終わったあと9時半から11時の間どこで何やってた?だからスタッフルームで仕事してました。
だったらどうして相馬美音子さんにアリバイの偽証を頼むような事したんですか?変に疑われたくなかったんですよ。
(ノック)はいごめんなさーい。
ん?青柳さん?あなたが人殺しまでして隠したいもの見つけてきましたよ。
ちょっと被ってますって。
青柳さん邪魔しないでください本当に。
お前せこいなあ〜。
よいしょっと。
(志保)ネットオークション?
(青柳)関係者しか持っていないはずの台本。
カガジョーのスリッパカガジョーの紙コップとか。
お前オークションに出品して小遣い稼ぎしてたろ?おかしいと思ってID調べさせてもらいましたよ。
そのIDで最近出品されたのがこれ。
現物はお前のロッカーから押収してきました。
白磁の壺だ。
(志保)係長?やった…。
よし!じゃあ行ってくる。
(村瀬)どこ行くんですか?科捜研。
はいどうぞ!あれはね田北良平さんのジーンズの折り返しの中に入ってたかけらなの。
良平の…。
そのかけらがあの壺と一致したわけ。
という事はお前が田北さんを殺した証拠になるわけだよ。
ちょっ…。
(青柳)お前あの壺を撮影所から盗んだんだろ?違います。
盗んだのが被害者にばれて彼を殴った。
違うんです!壺を盗んだのは俺じゃない。
あの夜スタッフルームでオークションのチェックをしていたら何か大きな音が聞こえたんです。
(物音)
(園田の声)なんだろうと思って外に出てみたら階段の下に良平が…。
良平?園田さん。
どうしたんだ?いえなんでもありません。
失礼します。

(青柳)でその壺拾ってすぐオークションに出したの?浅輪君。
はい。
視力いくつ?2.0ですよ。
これ僕何回も言ってますからね。
2.0か…。
あれ?おお…!園田典夫の証言どおりスタッフルームそばの階段下からこの小さな陶器のかけらが発見されました。
このかけらなんですけど田北良平さんのジーンズの折り返しの中に入っていたかけらと成分が同じで彼が頭部に致命傷を負った現場はこの階段と思われます。
(青柳)階段か…。
(電話)はい9係です。
…はい。
係長科捜研からです。
はい。
加納です。
え…?わかりました。
ありがとうございます。
係長。
科捜研はなんて?あの壺…李朝の本物。
本物?作られたのは1700年代。
欠けてなかったら500万下らないって。
500万!?刑事さん。
出発ですか?荷物だけ先にメキシコへ。
国内の撮影が終わったもんですから。
この間見て頂いたかけらの本体見つかりました。
本当ですか?はいこちらです。
ネットオークション?先生この壺をどの場面で使おうって考えられてたんですか?伊達家家老の屋敷です。
科捜研で調べてもらったんですがこの壺作られたのは1700年代なんですよ。
僕もちょっとだけ勉強しました。
1600年代までかすんだ灰白色だった李朝の白磁1700年を境に急激にきれいな乳白色に進化してるんです。
この壺みたいに。
ところが支倉常長が月の浦を出港したのが1613年。
帰ってきて亡くなったのが1622年。
…という事はこの壺とその絵が時代背景合わないんですよ。
映画の美術の大御所時代考証の鬼っていわれたあなたがどうしてこういう小道具をたとえセットの片隅に…置こうとなさるのか。
あなたは映画の美術家というその仕事を利用して美術品の密輸をしてたんじゃないですか?映画の小道具として送れば税関の目もごまかせるそう考えて。
この荷物全部調べさせてもらいますよ。
(辻)「私は映画美術家で本来は撮影用のまがい物を作るのが仕事です」「でも勉強のために本物を集めだして…」いつの間にか古美術の魅力に取り憑かれていました。
当然蓄えは底をつき…そんな時海外のオークションで知り合った男から声をかけられたんです。
映画を利用して盗品を運ぶ仕事をしないかと…。
良平さんはその事を?真剣の事で疑いを持ったようです。
騒ぎの後私のところに話を聞きにきました。
辻先生。
ちょっとお話が…。
どうした?今日剣友会の人たちに渡した刀の中に真剣が交じってました。
箱には確かに撮影用の刀と書いてあったのに。
真剣?それが本物の骨董品って感じで。
もしかして他にも本物が交じってるんじゃないでしょうか?それが本当なら問題だな。
よし。
俺が確認しておこう。
お疲れ。
お疲れ様です。
「でも彼はその日のうちに疑問を解決しようと美術倉庫に入りあの壺を持ち出した」「警察に相談するために」「知りませんでした」知らないはずがないでしょう?警察に訴えられると困るからあなたは彼を階段から突き落とした。
知ってたら何がなんでも壺取り返しますよ!あの美しい李朝の壺を…。
(神田川宗次朗)辻は国際的な美術品密輸グループの一員だった。
拝見します。
ボスはチャイニーズマフィア。
主に盗品を扱って海外のオークションで売りさばいていたらしい。
インターポールから感謝されたよ。
加納君お手柄だったな。
事件はまだ終わってません。
9係が追っているのは殺人事件です。
事件はまだ解決してません。
捜査がありますので失礼します。
係長は田北良平さんを殺したのは辻ではないとおっしゃるんですか?うん。
確かに辻だったら壺を放っておくはずないっすよ。
どんな理由つけても園田から取り返すよな。
じゃあ一体誰が?
(青柳)動機を持っているのはこの事が明るみに出たら困る人間って事だろ?犯人は映画制作が中止になったら困る人物だ。
(志保)もう一度情報を整理してみない?犯人は田北良平さんが美術品の密輸の事を警察に相談しようとしてた事を知ってた人。
つまり彼があの壺を持ってる事を知ってた人よ。
浅輪君。
まさか…。
まさか…。
相馬美音子さん田北良平さんが亡くなった件についてお話を伺えますか?私に何を?あの…これ彼のジーンズの裾の折り返しに入ってました。
この前これお見せした時壺のかけらだって聞いてあなたこうおっしゃいましたよね?彼がこれを?確かにこれは彼が美術倉庫から持ち出した壺の一部でした。
でもあの時係長はこのかけらと彼が関係してるなんてひと言も言ってないんです。
それ知ってるのは彼殺した犯人だけ。
殺す?私が良平君を?田北良平さんを撮影所の階段から突き落としたのはあなたですよね?でも彼はすぐに立ち上がって…だから私も大丈夫だって。
でもそれが原因で彼亡くなりました。
嘘でしょう?そんな…そんな…。
あの日は撮影所に行く最後の日だったんです。
女優に憧れて高校を卒業して上京後ずっと大部屋女優をやってきたけどやっと諦めがつきました。
それでスタッフにあいさつ周りしてたんだ。
でも良平君にだけは会う勇気がなくて。
どうして?なんだお前先に降りるのかって言われそうで。
「彼が監督になったら私を主演にする私が先にスターになったら彼を監督にする」私たちそんな約束をして励まし合ってきたんです。
(美音子の声)良平君を捜しに行った時には10時を過ぎてました。
良平君!それ何?
(美音子)これ映画の小道具じゃない。
あなたまさか…。
違う。
これは犯罪の証拠なんだ。
…は?誰かが海外ロケを利用して本物の美術品を海外へ持ちだそうとしてるんだよ。
まさか。
この壺も撮影には使ってないのに荷物に入ってた。
(田北)見て。
きれいだろ?これ絶対本物だよ。
これどうするの?警察に持っていって鑑定してもらう。
急がないとみんなメキシコに行ってしまう。
(美音子)待って!ちょっと待ってよ。
お願いだから警察なんてやめて。
美音子は腹立たないのか?俺たちの映画が犯罪に利用されてるんだぞ。
だってそんな事したらこの映画流れちゃう。
映画ならまた次があるよ。
次なんてない。
私には次なんてない。
え…?私女優やめて田舎に帰るの。
(田北)嘘だろ。
だってお前…。
だからこの映画はこの映画だけは…。
美音子!
(美音子)離してよ!
(田北)やめろ!良平君。
良平…。
馬鹿野郎!いてえじゃねえか!よかった…。
でも彼ちゃんと立ち上がったんです。
だから私もそんなひどい怪我だなんて…。
本人もそう思ってたはずです。
その後正門を出て公園に向かって約30分後に…。
そんな…。
浅輪君。
彼の遺体のそばに…。
この本がありました。
(美音子)「伊達家侍女A」これが私の役です。
10年間頑張ってきたけど結局名前のある役はつきませんでした。
でも私この映画で初めて台詞をもらったんです。
奥方の隣で月の浦を出る船を見送り「まるで夢のようですね」ってたったひと言…。
台詞がついて一番喜んでくれたのが良平君でした。
彼撮影所の門を出る時壺持ってませんでした。
え…?階段から転げ落ちた後彼壺拾わなかったんです。
もしかしてあなたの…あなたの最後の映画のために告発を諦めたのかもしれませんね。

(田北の声)いくぞ。
よーいはい!まるで夢のようですね。
(田北)うん…ちょっと違うんだよな。
あのさ「まるで」と「夢のよう」を少し空けてそれで気持ち込めて言ってみて。
いくよ。
よーいはい。
まるで…夢のようですね。
うん。
いいと思う。
良平君…。
フフフフ…ジャンジャジャ〜ン!『月刊映画人』最新号買ってきちゃった。
ジャンジャジャ〜ン!
(志保)え?遅い。
もうみんなで見てる。
早瀬川先生が買ってきてくれたんですよ。
(青柳)最優秀賞田北良平か…。
生きてたら映画撮らせてもらえたんだよな。
約束どおり彼女を主役にしてね。
おいみんな!今本屋寄ってきたら田北良平なんと…!なんと。
あっ…。
遅いなあ。
遅い。
その本返してこい。
(村瀬)くそ…。
(志保)第三者による連続殺人と考えたほうがいいんですかね?この事件ってさおかしくない?殺人なんて絶対やってません。
(村瀬)係長に無駄に頭を下げさしちまったな。
捜査は振り出しですか。
間に合ってよかった真犯人目星つきました。
2015/06/10(水) 21:00〜21:54
ABCテレビ1
警視庁捜査一課9係 #7[字]

映画助監督の青年が変死。衣服から発見された陶器のかけらが事件解決の鍵に!撮影中起こった真剣騒ぎ、その裏に隠された意外な事件…そしてあぶり出される悲劇の真相とは!

詳細情報
◇番組内容
シリーズ10年目に突入!加納係長(渡瀬恒彦)率いる超個性的な7人の捜査官、ふたたび始動−先の読めない展開、重厚かつ濃密な人間ドラマ!いよいよ磨きのかかった“本格刑事群像ドラマエンターテインメント”へ!
◇出演者
渡瀬恒彦、井ノ原快彦、羽田美智子、吹越満、田口浩正、津田寛治、原沙知絵、畑野ひろ子、里見浩太朗
【ゲスト】橋爪遼、大谷英子、賀集利樹、赤塚真人
◇脚本
岡崎由紀子
◇監督
細川光信
◇音楽
吉川清之
◇主題歌
V6『Timeless』(avex trax)
◇スタッフ
【ゼネラルプロデューサー】松本基弘(テレビ朝日)
【プロデューサー】峰島あゆみ(テレビ朝日)、金丸哲也(東映)、中尾亜由子(東映)
◇おしらせ
☆番組HP
 http://www.tv-asahi.co.jp/9gakari_10/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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