MERS:患者が韓国政府を提訴したら勝てるのか

「過失をはっきり証明するのは困難、勝訴の可能性は低い」

 中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)への感染者が増え続けている中、感染者や一連の事態によって被害を受けた人たちが、韓国政府や病院を相手取って損害賠償請求訴訟を起こした場合、勝訴できるだろうか。市民団体「経済正義実践市民連合(経実連)」は今月9日、国を相手取って集団訴訟を起こすことを検討していると発表した。

 国を相手取って起こす訴訟の根拠となるのは国家賠償法だ。同法第2条第1項は「公務員が職務を執行する中で、故意または過失により法令に違反し、他人に損害を与えた場合、国は損害を賠償しなければならない」と定めている。MERSの感染拡大について、保健当局が必要な措置を講じなかったため感染が広がったという点が立証されれば、被害を受けた当事者たちが国を相手取って訴訟を起こすことができる。

 だが、法曹界の専門家たちは「訴訟が行われたとしても、裁判所で損害賠償を命じる判決が下される可能性は高くはない」との見方を示した。疾病管理本部など保健当局が規定に従わなかったためにMERSの感染が広がったという点が立証されなければならないが、賠償責任を問うことができるほどの国の過失を証明することが、現実的には難しいためだ。ソウル市内の地裁の裁判長は「今回の事態で政府の無能や安逸な姿勢が明らかになったが、市民社会がこれを批判することと、実際に裁判所で法的責任を問うことには違いがある。予測が不可能な感染症の特性上、国に過失があったと断定するのは容易ではなく、感染を理由に国家賠償訴訟を起こして勝訴するというのも難しいだろう」と指摘した。一部では「国が初期段階でMERS患者を診察した病院のリストを公開しなかったことを過失と見なせる」という声も出ているが、専門家たちは病院のリストについて「必ず公開しなければならない」情報であり、国が被害を予想しながら故意に公開しなかったと立証するのは困難だ、との見通しを示した。

 病院を相手取って損害賠償を請求した場合、病院がMERSの感染者を規定に従って隔離したか否か、施設や感染予防システムの管理を十分に行っていたかという点が中心的な争点になると考えられる。MERSの感染が十分疑われる状況だったにもかかわらず、患者を放置し、そのため周囲にいた人たちに感染したとすれば、病院の責任を認めることができる。

崔燕真(チェ・ヨンジン)記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連ニュース