左端から中田華寿子、佐々木紀彦氏(ニューズピックス編集長)、出口治明、岩瀬大輔

左端から中田華寿子、佐々木紀彦氏(ニューズピックス編集長)、出口治明、岩瀬大輔

ライフネット生命は開業7周年を迎えました。それを記念して、2015年5月26日に記念イベントを開催。ニューズピックス取締役の佐々木紀彦さんをモデレーターに迎え、「新しい時代の働き方におけるリスクとチャンス」について語り合っていただきました。

後編は、大企業への就職がスタンダードだった時代から、今は働き方がずいぶんと自由になり、多様化しています。しかし、自由にはリスクが付きもの。特に新しい分野への挑戦には、なかなか勇気が必要です。

そのリスクに向きあうために、これからのビジネスパーソンには必要もの、身に付けるべきスキルは何か。出口治明(代表取締役会長兼CEO)、岩瀬大輔(代表取締役社長兼COO)、中田華寿子(常務取締役)に、佐々木さんが聞きます。

■リスクをコストに変えるために「勉強」する

佐々木:私がいるニューズピックスもベンチャーですが、世代を問わず、多様な働き方を選ぶ人が増えています。その自由さを最大限に生かしていくためには、どういったことを心がけていくべきでしょうか。

出口:当たり前のことなんですけど、一般論で言ったら、勉強はいつでもできますよね。それは本を読むだけじゃなく、いろんなことを体験して、学ぶということも含みます。

僕はよく言うんですが、スキー場に行ったら、そこでの時間の過ごし方は、スキーやスノーボードで滑るか、その様子を眺めるかのどちらかしかありません。「そのどっちが楽しいと思いますか?」と聞いたら、みんな「滑るほうが楽しい」と答えます。

勉強もこれと同じで、何かについて知っているほど、選択肢は増えますよね。この例でいえば、スキーやスノーボードの滑り方を勉強するだけで、「滑るか、眺めるか」の選択肢を選べるようになる。でも、勉強しなければ、ぼーっと見ていることしかできません。

勉強するとか、新しいことに挑戦するのはしんどいことですけど、その分だけいろんな物事を自分で選べるようになります。選択肢が増えれば増えるほど、人生は楽しいと思うんですよ。僕はそういう意味で、一生勉強やなと思っています。

佐々木:出口さんが言う「勉強」とは?

出口:それは「人・本・旅」です。スポーツでも上達しようと思ったら、人に教えてもらうか、本を読むか、実際に体験できるところに行くしかないでしょう。

佐々木:しかし、多くの人にとって未知の分野への挑戦はリスクが伴うだけに怖いものです。出口さんはどう考えていますか。

出口:リスクって、正体がわからないからリスクなんです。よく「清水の舞台から飛び降りるつもりで頑張れ」といいますが、なんで清水の舞台から飛ぶことが怖いか。それは底が見えていないからです。

しかし年をとってくると、「なんや、清水の舞台が例えば、3メートルしかないやないか」とわかってきますよね。3メートルだったら、「ロープを垂らしたら降りられるな」とか、これが1メートルであれば、「思い切って飛び降りても大丈夫やな」とか、リスクが計算できるようになります。そのとき、“リスク”は“コスト”になるんです。

それでいうと、僕は50歳くらいが人生の真ん中で、いちばん起業に向いている時期だと思うんです。「人生は80歳までやないか」と言われそうですが、だいたい20歳までは両親に養ってもらっていますよね。大人は自分で自分を支えられることだと定義すると、大人である期間は60年ですから、50歳くらいがちょうど半分の30年目、マラソンの折り返し地点になるんです。

岩瀬:100歳まで会社にいるつもりなのかと思ってびっくりしましたよ(笑)。

出口:そういうことじゃないですけど(笑)、要するに折り返し地点まで来られた経験があれば、いろんなリスクが計算できるようになる。風景もはっきり見えてきて、清水の舞台も底まで見えてくるようになるんです。

佐々木:でも50歳では背負っているものも多いのでは?

出口:もう子どもが高校生で、これから大学の費用が……という方が多いでしょうけど、反対にそのくらい成長していれば、将来かかる費用がだいたい見通せますよね。むしろ赤ちゃんのときのほうが、これからどう成長するかわからないですから、コストが計算しにくい。そういう意味では、50歳くらいのほうが、30代で家庭を持っている方に比べてリスクは少ないんです。

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